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さよなら。愛しき人よ。

「そんな簡単に『別れて欲しい』なんて言われても、困ります!私は、セイラさんが好きなんです。何者だろうと、私に言っていたことが、嘘ばかりだろうと関係ない。セイラさんが好きなんです!」


 ソフィーの話を聞いていると、だんだん涙が込み上げてくる。


「どうしても。ですか?」

「たとえ世界と神々を敵にしても、私は、セイラさんを愛します。その事に変わりはありません」

「『魔界の王子』なんですよ?それでも、貴女はセイラを愛すると言うのですか?」


「そのつもりです」

「そうですか。ならば、強行手段に移すまで」


 そう言うと、ソフィーは立ち上がり、私の前に立つ。

「何をするつもりなんですか?」

「貴女の記憶の中から、セイラと過ごした記憶を抹消するのです」


「えっ!?そんな!?」

 そんなこと、絶対に嫌!


「待ってください!なんで、セイラさんとの思い出を、あなたに消されなければならないんですか!?」

「世界を守るためなんです。貴女にはお辛いでしょうが、受け入れて頂きたいのです」

「嫌だ……。そんなの絶対に嫌だ……」

 ソフィーの前だけど、気持ちを抑えられなかった。


「セイラさんとの思い出全てを消すのなら、最後にセイラさんに会わせてください。少しだけでいい。最後にセイラさんと話しがしたいんです」


 ソフィーはしばらく考え。

「わかりました。そのかわり、少しだけですよ」


 ***********************


 ソフィーの後をついていった先。

 そこは、お城のテラスだった。

「ここでお待ちください。セイラを連れてきますので」


 空に輝く星。

 初めてセイラさんに会ったクリスマスイブの夜も、星は輝いていた。

 再び、星の国に来たときも。

 この思い出が、全部消されちゃうんだ。


「お待たせ」

 聞き慣れた声に振り向くと。

 そこにいたのは、黒いローブを着た、いつもと違う……。

「セイラさん?」


「そう。これが、本当の僕の姿。驚くよね」

「ちょっとだけ。驚いたけど……」

 向かい合って座る。


「ソフィーから、聞いたでしょ?」

「色々聞きました。私たちが、別れなければいけないことも」

「嫌だよね。僕も嫌だ」

「私たちが別れなければ、ソフィーさんは、思い出を全て消すって」


「別れたとしても、ソフィーは、消すつもりだよ」

「どう言うことですか?」


「ありすちゃんの心の中に僕がいて、僕の心の中にありすちゃんがいる。そうなれば、お互いがお互いの世界の片隅に、生きていることになるんだ」


「わからないです」

「お互いの世界に存在してはいけない。天界の乱れを直すためには、思い出よりも絆を消すんだ」


「嫌だよ……。そんなの」

「ありすちゃんが暮らす世界を、消したくないんだ。僕がいない世界でも、ありすちゃんなら、大丈夫だから」


「セイラさん!私は、セイラさんが好きなんです!大好きなんです!なのに、セイラさんは……」

 涙で、顔がぐしゃぐしゃ。

 そんな私を、セイラさんは優しく、抱きしめてくれた。


 そして、耳元で。

「さよなら。僕の、愛しき人よ」

天界より参りました。

ソフィーです。


セイラと亜李朱さんの二人の思い出、ならびに記憶を消させて頂きました。

世界の破滅を食い止めるため、仕方のないことだと思ってください。

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