女子会 part2
「気をつけるもなにも、セイラさんは、浮気なんて絶対しないよ!職種的に、女性のお客さんが多いけど」
カプチーノを飲み干す。
「わかんないよー?男は皆、浮気すると思った方がいい!」
いやいや。ないでしょ、それは。
「それは、穂乃花ちゃんの今までの彼氏が、そうだっただけでしょ?」
「うっ。急に、頭がぁ!」
穂乃花ちゃんの、頭をおさえるポーズ。
「まぁ、確かに、元彼もその前も、そのまた前の彼氏も……。浮気が原因で別れたよ?」
ふっふっふっふ。
目が、笑ってないよ!?穂乃花ちゃん!
不気味な笑い声で、笑わないで!
「それにしても、春休みですねぇ。お二人は、実家に帰ります?」
彩希ちゃんが、話を切り替えてくれた。
「私は、帰ろうかな。こっちに居ても、やることないし」
穂乃花ちゃん。いつの間に、元に戻ったの!?
お、落ち着け。私!
「亜李朱っちは?」
「こっちに居るよ。家庭教師もあるし、実家に帰っても、両親はどうせ仕事だから」
「亜李朱さんのご両親は、何をされているんですか?」
「父が外科医で、母が麻酔科医。二人とも、大学病院に勤務してる」
「お医者さんなんですね。大変そう」
「でもさ、亜李朱っちは、教育学部だよね?なんで、医学部にしなかったの?」
初めて聞かれた。
なんて答えれば良いんだろう。
「えっと、塾講師になりたくて。それで、教育学部にしたの」
「塾講師、ですか」
「高校受験の時に、塾に通ってたんだけどね。仲良くなった先生がいて、いつか私もなりたいなって思ったの」
「亜李朱っちの夢、初めて聞いた!」
「聞かれたことないし、話す機会もなかったからね」
「亜李朱さんが、塾講師……。きっと、良い先生になりますよ」
「だよね!亜李朱っちが塾講師になったら、私も通いたい!」
「それは、私に会うために?」
「バレたか」
「やっぱり……」
平日の昼下がり。カフェのテラスで、三人とも笑いあう。
「春休みかぁ。亜李朱っちは、彼氏さんとデートでしょ?」
考えてなかった。
春休み、どうしよう。
セイラさんは、お店がある……。
「デートは、多分無理かな。お店あるだろうから」
「諦めてるの?」
「うん」
「たまには、デートも良いと思いますよ?彼氏さんだって、お休みの日があるはずですし」
「でも……。疲れてるだろうから。休日は、家でゆっくり休んでて欲しいな」
「そんなこと言ってると、いつか愛想尽かされるよ?」
えっ!?
「そんなこと、ないよ。きっと」
「わかりませんよ?穂乃花さんが言ってたじゃないですか。『男は皆、浮気する』って」
「だから、セイラさんは浮気なんてしないよ」
「私たちが言えたことじゃないけどさ、亜李朱っち見てると、幸せそうなオーラ、出てるよ?だからさ、二人には、別れて欲しくない。幸せになって欲しい!」
穂乃花ちゃん……。
「私も、穂乃花さんと同じです!イケメンで、カッコいい彼氏さんじゃないですか。亜李朱さんが、選ばれたお方なんです。お二人には、別れて欲しくないです」
彩希ちゃんまで……。
そこまで言ってくれるなんて、良い友達だよ。
なんだか、背中を押された気がする。
「誘ってみようかな。セイラさんとデートなんて、普段はできないからね」
「頑張ってね。亜李朱っち!」
「応援してます!頼りないでしょうけれど」
「穂乃花ちゃん、彩希ちゃん。ありがとう!久住亜李朱、頑張ります!」