ノルウェイのハーレム
完璧なラブコメなど存在しない 完璧な絶望が存在しないようにね
僕は村上春樹の本以外は読まない。他の本は読むに値しない、それ以上でもそれ以下でもない。
そして、話し方もノルウェイの森のキャラクターに似せるように訓練した。それは大きな犠牲を伴うものだったし(中学の時に多くの友達を失った。)そして見返りは無かった。
それを慰めるように僕はオナ・‥…、じゃなかった、マスターベーションをして機械的にストレスを解消していた。やれやれ。どうして他の人間は春樹の良さが分からないのだろう。
高校でも春樹の小説の主人公の行動をするにつれクラスメイトとは距離が開いていった。そして、五月には僕は一人ぼっちになっていた。
僕は生物の授業中「1Q84」を読んでいた。クラスメイトはショウジョウバエの遺伝についての授業を受けている。中年の禿げかけた教師はショウジョウバエについて話していたが真剣に聞いている者はいない。
「おい佐藤、お前は生物の授業中になんで村上春樹を読んでいるんだ。」
クラスメイトの視線が僕を向く。
やれやれ、今は主人公が六本木に男漁りに行くシーンでいいところなんだが。
「そうですね。僕はショウジョウバエの遺伝に関心はないし、それ以上でもそれ以下でもないということです。」
「お前ふざけてるのか」
「あなたがふざけてると思うなら、そうなのだろうし。それをどうこう言う権利はありません。」
クラスメイトは喧嘩を止めずに眺めている傍観者のように僕と生物教師のやり取りを見ていた。
「廊下に立ってろ」
「それは、廊下に立っていろということですか?ふっ悪くないな。」
「悪くないだと。」
「廊下にたつ。悪くない。」
廊下に立っている間僕は「ハードボイルドワンダーランド」を開き「1Q84」は後ろのポケットにしまった。この本に出ている主人公に今の自分は似ている。
今ここで廊下に立っている僕は「日本で一番タフな高校生」に思うからだ。僕はマルボロ……。の箱に詰めたココアシガレット(未成年はタバコを吸えない)にジッポライターで火をつけ、煙を深く吸い込みゆっくりとクジラが高く潮を吹きだすように煙を噴き出すふりをした。
今の僕は一番タフな高校生に違いない。タバコ、文学、あと足りないのは女と音楽くらいだった。これらは近いうちに調達しようとしよう。
ワンピース好きな緑。ルックスはいいのだが、春樹の登場人物のような闇に欠ける。僕は頭を悩ませる。




