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偽りの仮面

 九条彩音に救われたことでホッと安堵の吐息を零す勇気であった。

 だけど、どうしてここに彼女がいるのかが謎である。

「姉さんはどうやってここに来たんだ?」

「どうやっても何も簡単だよ。私は一応は妖魔退治の専門家。ゆっくんほどじゃないにしても術式の心得くらいあるんだから」

「そうなのか」

 どことなく、勇気は腑に落ちない点がある。

 それは、雰囲気。見た目はれっきとした義姉なのだけれど、見ていると違和感を感じてしまう。

「ゆっくん、どうしたの? 行こう」

「ああ」

 恩人の義姉に対して邪な考えを抱くのは失礼であろう。

 自分にそう訴えた理由を確固つけて姉に行く手を任せて自らも歩みを進めた。

「それで、義姉さんは脱出方法を知ってる?」

「私もわからないのよ。術式でゆっくんの元には出向いたはいいのだけど脱出の術式は阻害されてしまって」

「そうなんだ」

 ひたひたと歩く義姉の足元を見ていると義姉のふくらはぎに赤いものがついていた。

「ちょっと、彩音義姉ちゃん足を怪我したの!?」

 義姉のふくらはぎへその手を伸ばし触れようとしたらものすごい速さで義姉は嫌がるように距離をとった。

「姉ちゃん?」

「だ、大丈夫よ! これくらい」

 義姉はポケットからハンカチを取り出してそれをふくらはぎに巻きつけた。

「そんなに強く縛って痛くないの?」

 まるで顔色変えずに平然と縛り付ける彼女へ怪訝に問うと彼女は顔を強張らせて――

「だ、大丈夫って言ったでしょ。お姉ちゃんはこういう怪我くらいなれてるのよ」

「そ、そう」

 慣れていても怪我には変わらず大事なような気もする。

 本人が心配をするなという主張は通してやりたいと感じ勇気はそれ以上は何も語らない。

 廊下を歩きつづけて、一つの部屋に行き着いた。

 見覚えのある教室。

 そこは普段から勇気たちが授業を行うために使っている教室である。

 勇気は教室の中で一人の男性を見つけた。

「え」

 血みどろになって倒れた一ノ瀬卓也である。

 いったい誰にやられたのだろうかはわからないが腹部には大きな穴が開きもう、助かる見込みはないわかってしまうような重症だ。

「いったい誰がこんなこと……」

「綾蔵さんじゃない? もしかしたら、助けに来てくれたのかもよ」

「綾蔵さんが?」

 彼女の実力ならば一ノ瀬卓也を圧倒できるだろう。

「まさか、一ノ瀬卓也がここにいて仕留められているとは思わなかった。じゃあ、この空間は一体だれがやったんだ? 一ノ瀬卓也じゃないとしたら……」

 彼の言葉が思い起こされた。

『――僕は君を監視するように最近言い渡されたばかりだ』

 誰かに命じられて動いていた。

『大悪魔』という存在。

「大悪魔か。だけど、今頃になってどうして自ら動いてけしかけてきたんだ?」

 彼の死体を漁っていると足元に何かが落ちた。

「え」

 それは良く見ると自分が落としたと思っていた携帯電話だ。

 なぜ、彼が手にしているのか。

 彼の手先をよく見てみると、映像がぶれるようなノイズのような錯覚を見た。

 目元をこすってもう一度彼の死体を確認するが気のせいであったのか何も起こってはいない。

「ゆっくん、さすがに気味が悪いから行きましょう。もしも、ほかに犯人がいるなら罠の可能性もあるでしょ」

「あ、うん」

 だが、勇気はふと気になってしまう。

 もう一度彼の死体のほうを振り返る。

「ゆっくん?」

 勇気は自らの携帯を拾い上げてその中身を見た。

 割れた画面に何か文章が打ち込まれていた。

『私に騙されないで』

 ただ、その一文が記入されていた。

 勇気はすべてを悟った。

 そして、聖剣を空間より顕現させる。

「ゆ、ゆっくん急に聖剣なんて取り出してどうしたの?」

「さっきからずっと違和感を感じていたんだ。なんか違うって。いつもの義姉から感じる抱擁がなかった。暖かさがなかった。優しい気持ちが感じなかった。義姉は心の底からそれを願い俺に接してくれている人だ。だけど、その義姉であるお前からはそんなの微塵も感じない」

「えっと、何を言ってるのかわからないよ。お姉ちゃんを困らせないでゆっくん」

「義姉のふりをするのはいい加減にしろ!」

 勇気は聖剣を掲げて斬り掛かるように振り返る。

 同時に金属同士が重なり合う音が響いた。

 義姉の仮面をつけた男の顔が煙に紛れて姿を現す。

 男の手には一振りの暗黒の刀が握られている。

「いやぁー、まさか君のお姉さんは最後にそのような仕掛けを残しているとは思わなかったよ。それと――」

 男、一ノ瀬は剣を大きく振りかぶって勇気を弾き飛ばす。

「君たちの姉弟愛には恐れいったよ。正直気持ち悪いくらいにね! ギャハハハハハ!」

「一ノ瀬ぇえええええええ!」

 勇気の輝く刀身が一ノ瀬卓也へと鬼気迫っていく上振りの攻撃。

「今の僕は少し違うよ。なにせ、君のお姉さんの血や力を味わったんだからね!」

 一ノ瀬卓也の手にした黒い刀が聖剣弾き、流れるようにして勇気の腹部を貫いた――

「がふっ!」

「これで終幕だ、聖剣使い九条勇気!」

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