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拉致1

 学校は狭間修という学園生の事件を機会に緊急的処置として本日は追悼式終了後で終了となった。

 時刻はまだ11時で普段よりもずいぶんと速い下校時間が始まり、クラス内ではやはり他人の死や知人であったというだけだからか、悲しさは一瞬のことで皆がもう通常運航で「帰りにどこよっていく?」なんて話をしていた。

 学校からは速やかに家への帰宅を促しているがそれを聞くほど生徒一人一人は優秀なわけでもない。

 楯宮学園は進学校ではあるが実のところ、生徒一人の成績なんか平均的である偏差値を有しているだけ。

 学校の言い分なんか聞くほどの生徒はごく一握りである。


「はぁ、今日は雪奈ちゃん休みか。転入二日目で休みってやっぱり家のことで忙しいのかねぇ」


 勇気の前の座席に座るクラス内カースト上位の男子生徒の一ノ瀬が転入生の雪菜がいないことを心底がっかりとした発言をした。

 結局、学校へ来なかった彼女の座席を勇気は振り返ってみてみた。

 追悼式の際も勇気の後ろに彼女の存在はなかった。

 朝に訓練した時は何事もなく感じていたのが気のせいであったのだろうか。

 あの時に彼女が負傷した可能性もなくはなく、心配をしてしまう。

 彼女に向け心配を口にしたところで彼女は「なんだ君という人間は私を気にかけるほどの器が大きかったとは意外だな」とか言われそうであった。

「ああ、せっかく早く終わったからカラオケにでも誘おうと思ったのになぁ」

 愚痴るように一ノ瀬は言葉を零し、数人のクラスメイトに呼ばれてそちらへ向かっていった。

 すると、彼が一瞬だけ勇気を見る。

 そのまま、こちらへ近づいてきた。

「なぁ、勇気。たまには俺らと遊ばねぇか」

 今までずっと遊びなどに関しては誘いをしてこなかった彼らからの意外なお誘いに驚愕する。

 なんの心変わりかと訝しんで疑心の目を向けてしまう。

「そう、怖い顔すんなよ」

「どういうつもりだ?」

 さすがに下心を感じてしまうので質問をする。

 頬を掻きながら彼は「なんもねぇよ」と答えたが彼の目が後ろの席を見ているのでよく認識した。

 どうやら、彼女の補佐に任命された自分のことを探ろうということらしい。

 つまり、どういう経緯で雪奈が勇気へ好意を向けているのか。

 まさに下心ありまくりな動機である。


「丁重に断らせてもらう。この後は用事があるんだ」

「用事ってなんだ?」

「話す気はない」

「んだよ、相変わらず冷たいな」

「そっちこそ、転入生にアタックをしたければ直接行けよ」


 皮肉な言い回しをして勇気はカバンをもって教室から出ていった。

 最後にクラスメイト達の冷たげな視線が勇気に突き刺さるがそれは普段通りのことであまり気にはしない。

 彼らから逃れるための理由としては『用事』なんてことを言ったが事実それはあるようでないようなものである。

 勇気は廊下を突き進み、一つの部屋の前に来るとカギを取り出し開けて入る。

 窓辺からの差し込む日光でだいぶ部屋は明るく照らされ、内装も目に見えてわかった。

 長机と椅子の対談席と勇気がパソコン業務をするための事務席、壁際に資料棚があるというだけのいわゆる、民間会社の事務所の職場を模わせるかのような様相である。

 勇気はいつものようにパソコンが一台だけおいてある事務席に腰を下ろして座る。

 パソコンを起動して、とあるホームページを開いた。

 それは自らで作成した部活動をするためようの自ら作ったホームページ。

『安生の質屋』という昭和の風情丸出しでネーミングセンスの欠片もないサイト名である。

 いわゆる、なんでも承りますという『何でも屋』基「探偵屋』である。

 一昨日のサッカー部のボランティア活動もこの業務の一環でもあった。

 さらにこの部の告知は別にここだけではなく、生徒の悩み相談を引き受けるという名目で設置した一つの箱を部室の外に設置している。

 そう、いわゆる目安箱的なものを作っていた。

 一昨日の案件はそこの中に入っていたわけで別にホームページから来たわけではない。

 実際にはホームページのアクセス数はかなり少なく3桁にも届いてはいない。

 どちらかといえば勇気は目安箱のほうで稼いでいる。

 これでも学園では劣等生でも運動神経だけは良いことで名が通っているので部活動の助っ人関連の依頼が主であった。


「今日も依頼はなしか」


 パソコンをシャットダウンして外の目安箱の確認へ向かう。

 壁に設置されるようにした机の上にポツンとある箱を手に取って振ったが空っぽである。

 月に稼ぎも2万行くか行かないか。良いときで5万であればその程度。


「バイトさえできればな」


 と考えたがバイトを拒否する義姉と義父がいるのでそれはできない。

 なぜ、バイトを抑止しているのかは今ならわかる。

 それは自分が『聖剣』の契約者であり妖魔に狙われやすい体質であったからだ。

 この町がいくら守られているとはいえ、妖魔が侵入している恐れもあってはバイトなんて止めるだろう。

 バイトは多くの人と接触する機会が増えてしまう。

 そのような事態は極力避けたいはずである。


「はぁー、あそこに行くかなぁ」


 と気持ちを切り替えてとある行きつけの場所へ行こうとしたときである。

 箱の底に何かが張り付いていた。


「なんだ?」


 箱の底についているものを引っぺがしてみた。

 それは一枚の写真であった。

 そこには一人の女性が下着姿で猿轡をかまされて椅子に座らされている状態の写真。

 見るからに拉致されて監禁されている最中というような絵。

 写真に写るのその女性は勇気が愛し、憧れてやまない女性だ。

 写真の裏には予告文章である『お前が普段利用している場所で15時まで待つ』と書かれていた。


「姉さん……っ!」


 一心不乱に勇気はその場から離れるように駆け出した。

  

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