追跡調査
訓練後に綾蔵雪奈は弟子にしようとしている聖剣の契約者、安生勇気と別れて家に帰宅した。
帰宅後に綾蔵雪奈は日課の朝のシャワーを浴びる。
艶やかな肌に流れて滴る水滴。仄かに上気する頬。
シャワーを浴び終え、着替えをすます。
手早く、カロリーメイトと栄養ドリンクで朝飯をすますとすぐに家を出た。
綾蔵雪奈の居住としている家はおんぼろアパートの一回で明らかに何か出そうな雰囲気がある。
勇気やこの街を管轄して観察する組織の彩音の住まうマンションとは雲泥の差がある。
それなのにあのマンションから綾蔵雪奈の住まうアパートまではさほど距離はない。
10分ほどの距離感だ。
そもそも、この『結社』が管理する町、聖橋町は多くの妖魔に対策をする実力を持つ将来有望な存在やそれに傾倒した関係者などの人々が暮らす場所。
その中でも外部からの引っ越してきたものや一般市民つまりはまだ妖魔に関係した親戚筋の外部の人間を配慮した空間と『結社』や妖魔筋に詳しい人物たちを集めて住まう区画とわけて密集地ができていた。
街の中で二つの区分率が存在してもいる。
距離もさほど離れていないのはもしもの場合に対処できるようにでもあるし、町事態はさほど大きくはないということが関係している。
表向きはここの町に親戚がいるために引っ越してきたという綾蔵雪奈の割り当てられたアパートはもちろん、この一般区画のほう側。
雪菜はおんぼろアパートの家から抜け出して歩きながら高級住宅街、安生家の前を通って進んで歩いていく。
向かう先は自らが来ている制服に関係した学園ではなく別の場所だった。
たどり着いたのは『聖橋駅』である。
いろんなデパートビルが密集する駅近くにある繁華街を彼女は歩きながら一軒の店の中に入った。
店先はジャンクショップのような店構えである。
いろいろなケーブルや電子機器のパーツを取り扱っているような店の中を突き進んでいき、奥にいる店長を見つけた。
その店長の目の前に彼女は今朝方、襲撃を受けた時に奪い取った名刺を叩きつけるようにして会計のテーブルの上に出した。
「案外、簡単に見つかるものだな。君らのような汚物の存在は隠れるのも下手だということか」
目の前の店長は見た目はやせ細った外見に長身で薄目な30代の中年男性という感じであったが雪奈には彼の正体が何者かを理解していた。
続けて、前口上から本題を突き付けた。
「ちょっと、面を貸して裏へ来てくれないか」
「…………」
店長は素早く動いて奥のほうへ走っていく。
雪奈は逃がさぬようにとすべての戸棚や台座を蹴り飛ばして逃げていく店長の後を追いかけた。
店長が裏口から出ていったのを目視した。
懐から拳銃を取り出し、発砲する。
頑強な扉に銃弾が当たったが目標には一発も当たらず逃した。
雪菜は悔し交じりに下唇を噛み締めながら裏の倉庫を見回したらあちこちに染みのついた段ボール箱があった。
ひどい匂いがした。
足元には散乱した防腐剤。
そして、よく見れば赤い海のようなものが出来上がっている。
ネズミや蠅が集っていて今までよくも苦情が出なかったなぁと感心するレベル。
掲示板のようなものを見つけてそこに目を凝らしてみればいくつもの写真があった。
その中には殺された妖魔『インキュバス』狭間修のモノもあった。
さらに『HOT』と英文で書かれて安生勇気の写真も飾られていた。
内容は『聖剣の所持者』の可能性ありの文字。
どうやら、彼らが目標とする餌のリストのようだった。
さらには外部からの依頼で情報も集めたりその人物の殺害までを請け負っているような受諾書類の数々。
そして、段ボール箱の中身はもちろん妖魔の餌の肉というなの死体の一部があった。
一体だれのものなのかは想像したくもない。
老若男女問わずの死体の数々。
冷蔵庫もあるがそれには収まりきらないからかわざわざ段ボール箱を使用したようだった。
「ここは妖魔の商談の場であったわけだな」
だとしたとしてもここ以外にもいくつか他にもあると考えた。
「あれ?」
不思議に感じることが一つ浮上した。
掲示板で殺害つまりは捕食対象を決めているのにこの段ボール箱の餌は何なのか。
「これは捕食ではない?」
よく思い出してみてみればインキュバスの男も食われた痕跡は実はなかった。
ただ、残忍な殺され方をしたというだけであったのだ。
今朝も襲われたときも彼らは食べるというよりも殺すことを目的に動いていたように見えた。
では、何ゆえに殺しを行うのか。
『聖剣』の保持者である勇気は危険性を考慮して殺そうとする妖魔の動機はわかる。
だが、インキュバスの彼やこのリストに載っているほかの連中は?
内容がすべてが消されているのもあって定かじゃなかった。
「捕食リストではなく殺害リスト? でも、なぜそのようなものを行う? 妖魔同士で協同して行う?」
妖魔で協力体制をもつ習性をもつものはだんだんと絞られていく。
だが、それもあくまで捕食のためのみであって殺害に協力することはない。
理解不能な事柄に頭を悩ませたとき、店の中に新たな気配を感じた。
「チッ、遅かったか。誰か先に来たようだな」
「昨日、クジャクが申していた妖魔狩り士でしょうか?」
「可能性はあるな」
段ボールの山の中に潜んで隠れて窺うと二人のスーツ姿の中年男性がいた。
その片方の一人はどこかで見覚えがあった。
昨晩のこと。安生勇気と『結社』の九条彩音の住まう家の写真だ。
(彼らのお父さん?)
そうなれば、おのずと彼らの素性が見えてくる。
『結社』の人間が妖魔の調査に来たのだろうということだ。
彼らは一度その場から離れてどこかへ去っていった。
しばらくすればまた戻ってくることだろう。
雪奈は掲示板に近づき一枚の紙を抜き、急いで裏口から出ていく。
一枚の紙を握りしめる。
急ぎ、繁華街の表通りに出てくると周囲に聞き込んでやせ細った男性が通らなかったかを聞いたが全員が首を振った。
中には美貌に魅了されてナンパをしてくる男もいたが睨んででおっぱらい捜索を続行する。
今の自分には余裕はない。
この殺害リストから自分の復讐する相手に早くたどり着かねばならない。
自分がこの町に来たのはそれが狙いなのだ。
殺害リストに何か情報が載っていないかと慌てて読み込んだ。
雑な字で読みずらいが一文字だけ読めた単語があった。
「え」
『楯宮学園』と勇気や雪奈が昨日から通い始めた学園の名前がそこには書かれていたのであった。




