鑑定結果と死
途中で視点が変わります
「にゃ~」
ノヴァは訓練準備観覧室で報告書をしたため終わり研究所に送信する。椅子の上でひとつ伸びをすると何気なくコア通信機に表示されたバレンの情報を閲覧する。
「鑑定結果では驚くくらい有能にゃのににゃ~」
溜息をつきながら下にスクロールしていく。
Name:バレン
Race:特殊技能付き自立型稼働魔導人形
Job:付与術師
Lv:1
HP:50000
MP:80000
Str(筋力度):3203
Vit(防御度):3014
Int(知性度):4891
Mnd(精神度):5208
Dex(器用度):5307
Agi(敏捷度):5052
Skill:
剣術Ⅴ符術Ⅴ体術Ⅲ格闘術Ⅱ
光魔法Ⅲ闇魔法Ⅱ火魔法Ⅱ水魔法Ⅱ風魔法Ⅱ土魔法Ⅱ雷魔法Ⅱ氷魔法Ⅱ召喚魔法Ⅰ
状態異常耐性Ⅴ無詠唱Ⅳ並列思考Ⅳ隠蔽Ⅲ気配察知Ⅱ危機察知Ⅱ隠密Ⅱ連携Ⅱ
Gift:
付与術Ⅴ自動回復Ⅳ不老Ⅴ
Item:
改造三流の魔眼
訓練着
スキル、ギフトのレベルはⅠ~Ⅴに分かれそれぞれ
Ⅰ.まだまだこれから
Ⅱ.そこそこできる
Ⅲ.得意といえる
Ⅳ.達人と呼べる
Ⅴ.超人と呼べる
このようになっている。
Raceは対象の種族を表しJobはその人に向いていることを表すものでJobが村人で国の宰相になっている人もいる。もちろん神殿で神官にジョブチェンジを依頼することも可能だ。
「十四将様と勝負できるにゃよ」
全ての十四将のステータスは一部ではあるが国中で広められていて知りたければ誰でも情報が入手できる。十四将より強者を集めるために公開されているそれにバレンのステータスは引けを取らない。普通は多くても5つぐらいのスキルが21もあり、ギフトも1つあればいいほうなのに3つもある。自動人形は総じてレベル1で固定されていることだけが標準だ。
「でも所詮はデータってことかにゃ~」
さっきの実力テストの結果を思い出して渋面を作るノヴァ。戦い方を忘れてしまったような絶望した顔を思い出す。
「帰るにゃ」
今日は飲みに行く気分でもない。久し振りに早めに寝ようと席を立つ。
「にゃ?」
しまったはずのコア通信機が勝手に手元に現れる。空中でキャッチしたノヴァは見たことがない表記に驚く。
<<板型コア通信機No.199222>>
<緊急報告>
自動人形バレンに対しジェネラルオークの敵性行動を確認。
脅威度7と認定。第三位命令権所有者ノレルヴァ・ニースに至急命令が要請されました。
▶敵の排除を許可
▶戦略的撤退を命令
▶上位命令権所有者に命令権を譲渡
▶その他
「……にゃにゃにゃにゃ!? にゃんだって!!」
ノヴァが数秒で事態を把握して総毛立った。
「にゃんでアイツ戦ってるにゃよ!」
<<板型コア通信機No.199222>>
検索結果不明。
ダンジョン内のため実況可能です。
実況しますか?
「やるにゃ!! それと同時にエーレン隊長に連絡するにゃ!!」
ノヴァは意識的に避けていた音声命令を続行する。一人で通信機を話していると下等なモンスターに指をさされるのが嫌だったがそうも言ってられない。
<<板型コア通信機No.199222>>
ダンジョンコアに許可申請。
しばらくお待ちください……受諾されました。
映像を繋ぎます。
同時に生産部整備課第9部隊エーレン・モニカ隊長に応援を要請します。
相手は主に戦闘部署に派遣される武力派オーク。その中でもジェネラルオークは残虐で一度頭に血が上ると止まらない。自動人形が一方的に嬲られていると思い込んでいたノヴァはその目を丸くする。
「にゃ? にゃんで??」
そこには真っ赤に染まったジェネラルオークと時折その顔面を殴る自動人形の姿が映し出されていた。
「にゃめさせるにゃ!!」
<<板型コア通信機No.199222>>
▶その他 を選択しました。
行動の停止を要求します。
映像に写る自動人形がオークを投げる。その巨体が床を跳ね返って赤い血がドクドクと流れる。ジェネラルオークは虫の息でかなり危険な状態だ。
「この部屋に直接緊急転移するにゃ!」
<<板型コア通信機No.199222>>
緊急空間転移は月に1回しか出来ません。
本当によろしいですか。
「研究課に後で申告するにゃ!」
<<板型コア通信機No.199222>>
受諾しました。3秒後に転移します。
空間が歪み訓練部屋からノヴァは消えた。
**********
俺は赤く染まった両手を呆然と眺めていた。まだ夢心地で、正直どうなっているのかわかっているが理解はしてない。しばらくして空間が歪んでぽんっとネコが現れた。
「……!!」
ネコは一目散にオークのところに駆け寄るといたるところについた傷を修復している。とても素早い対応で薬をかけて治癒していく。俺もその様子を脇で眺めていた。そうするとネコが床に置いていた板からメロディーが流れてくる。なんだか聞いたことのある曲だな、と場違いな感想が浮かんだ。
「通信許可!」
ネコがそう言うと板から音声が流れて来た。どうやら電話にもなるらしい。万能な道具だ。
『ノヴァ、何があった?』
「自動人形が無許可で戦闘をおこにゃい。相手が負傷しましたにゃ」
『相手の所属と状況は?』
「ポーションで応急処置はしたにゃけど血が足りてないにょか目が覚めにゃいにゃ。今から救護隊を呼ぶにゃ。相手はジェネラルオーク。名前はレキス・パッピ」
『どこだ?』
「第33訓練室にゃ」
『わかった。すぐに隊に連絡してみるよ。その部屋で待機しておいてくれ』
「わかりましたにゃ」
その後、救護隊がすぐに来てジェネラルオークを連れて転移していった。ネコは心配そうに彼が運ばれている様子を見ていた。けれども彼らがいなくなった途端にギラギラした目をこちらに向けて来た。きっと俺の責任を追及するつもりだと身構える。
「……悪かったにゃ」
いきなりの謝罪に戸惑う。ネコはそのギラギラとしたサファイアのような瞳に真意を尋ねるように瞳を合わせる。
「あたいが一人で帰れにゃんていわにゃきゃお前は奴に絡まれることがなかったはずにゃ」
俺はネコの聡明さに感服した。いろいろな知識を与えてくれている時から博識だと思っていたが一瞬で状況を看破するその双眼は拍手に値する。
「にゃに驚いてるにゃ。あたいが馬鹿だとでも思ったかにゃ」
ふんすと息を吐いて尻尾をくねらせるネコ。これからはノヴァと呼ぼう。
「にゃけどにゃにがあったのか全部わかるような心読みの術は持ち合わせてにゃいにゃ。話せるかにゃ?」
俺は頷いて出来るだけ客観的に事実を述べて言った。
「……にゃるほどにゃ。奴隷が一人食べられたかにゃ……」
後半を悲しそうにつぶやいた。ノヴァはたぶんいいやつだ。言葉に棘があったけど俺が最初に混乱して取り乱したときも一瞬で直してくれた。非があるとわかった上で重症のジェネラルオークを精一杯治療した。奴隷のことで心を痛めた。そんな人間らしい様子に眩しくもないのになんだか俺は目を細めた。
そうするとノヴァはまた初めてであったときの様にペタペタと体中を確認して「体は大丈夫そうにゃ」と呟いた。絶対に手を拭くんだよな潔癖症か?、とノヴァに聞いてみたくなった。
「おそらくにゃけど奴が所属してた隊に一緒に来てもらうことににゃるにゃ」
しばらくするとノヴァが連絡していた上司が来たが結局隊に行くことは無かった。それどころか俺が襲われたことに上司は憤慨して抗議すると言っていた。薄紫色の二足歩行のオオカミが上司だったが顔に似合わず優しい言葉をかけて来た。今度喧嘩する時はノヴァが治療出来る範囲で、とお茶目に言ってきたので深く頷いておいた。
**********
空は薄暗く太陽がその姿を現さない。町の外縁部にほど近いとは言え周りには街灯が立ち並び、照明が町を仄かに照らしている。周りの外装が似たりよったりした建物には戦闘痕がついて半壊した民家や負傷した人間のうめき声が聞き取れる。
『おいっまさか』
羽交い締めした金髪の男は拘束から逃れようと身をよじる。対する俺は満身創痍で腹にぶっすりと突き刺さった刀をどこか他人事のように感じている。只の剣ではない。再生が間に合わず血と魔力がすすわれている。
『っジャミング』
俺を中心とした転移が妨害されて不発に終わる。それを冷静に判断した俺は予め用意されていた最終判断を下す。
『っおい。やめろっ。ここの奴ら全員巻き込むつもりかっ!!』
体に流れる魔力を強制的に高めながら暴走させていく。男は魔法で俺を気絶させようとするが俺の意識は保ったままだ。魔力暴走による自爆。その選択肢はこうなった時点で定められていた。
『ユウっ』
『来るなっ!!』
周りには遠巻きに衛兵が集まって来ていて結界が突貫工事にも関わらずかなりの精度で構成される。流石人間界第2の魔法都市テモイテスモス。称賛に値する。被害は1キロに抑えられる。
『やめてくれっ』
俺は沈黙でそれに答える。辺りがチカチカと点滅しているように見える。そろそろ時間のようだ。
『俺はあなたを殺したくないっ』
その言葉が俺の消えたはずのココロを揺さぶった。
『……』
『!!』
俺の掠れた呟きは彼に届いた。彼の悲痛な顔についた緑目に決意の色が見えた。視界が白で染まる直前に俺は確かに……。
**********
荒い息づかいが部屋に響く。俺はすぐさま首に手を添える。昨日オークに圧迫されて出来た傷はもはやない。それでもしっかり繋がっているか不安で首全体を入念に探る。
夢……。
あまりに現実的で非現実的な夢だった。懐かしさや曖昧さの無い夢を初めて見た。
これも記憶……?
魔法都市テモイテスモス、金髪緑眼のユウと呼ばれた俺を殺した青年。
……わからない。
夢でわかったのは俺が死んで、今は生きているということ。この世界には復活の秘術でもあるのか。死ぬことに現実感などあったものではないが夢ではおそらく死んでいたと思う。
場違いに現れた食事を完食できないままノヴァに先導されて今日も訓練部屋に向かう。
「今日も昨日と同じ武器系統の実力テストするにゃ」
そういってまた同じ長剣を受けとる。
「また?」
夢で見た内容を頭の片隅に追いやってノヴァに問いかける。ノヴァは長く伸びたひげを二本の指で掴んで伸ばしている。
「にゃ。昨日のことを踏まえてやり直すことにしたにゃ」
昨日と同じ土塊を目の前にどう変えるのか疑問に思っているとノヴァがこほんと咳をする。
「命令。目の前の敵を剣術スキルのみ使用し行動不能にするにゃ」
昨日はちゃんとやれと言われただけで戦闘開始の合図も具体的な指示もなかった。それを変更したことは的外れだと思うが俺は自然と「了解」と返した。
期せずして得た戦闘の経験でどうすれば俺が戦えるのかわかった。感情を殺し無心になる。それだけですーと周りが遠くなっていく。まるで世界が変わったかのように。
敵が動いた。
敵の突きを下がるのではなく踏み込みながら剣でそらす。俺が薙いだ剣は避けられたが追撃をかける。昨日とは比べ物にならないほど激しい剣の打ち合いが繰り広げられる。敵の隙をついて徐々に斬りつけていく。考えなくても自分がどう動けばいいか分かる。いや違う。体そのものがどう動けばいいのか把握している?
「終了にゃ」
相手を倒すことは出来なかったがいい勝負ができた。しかし俺は物足りない気分だった。
自分で戦ってないからか?
他人に体を預けてしまったような気分だ。
すべてのスキルを試すと昨日より時間がかからなかった気がした。
「にゃ。まだ昼過ぎぐらいにゃしね」
咄嗟に左手首を見たのは腕時計がないからだ。よってそのまま魔法系スキルも試してみることになった。先日自室で試した魔法の命中率と威力を調べるために出現した的に当てていく。訓練室では全ての魔法を無詠唱で使えるようだ.ちなみに的は全部人型だ。
戦争の相手はほとんど人型なのかも……? ちょっと待て。
俺は閃いた考えに思いを走らせる。そうしながら氷魔法でできたつららを的確に的に当てていく。
もしかして……。
闇魔法で目の部分を覆い隠してすべての基本8属性は網羅し、ノヴァが出てくる。
「なんだにゃ。まだ終わりじゃにゃいにゃよ?」
板を操作してノヴァは的を回収していく。俺の何か聞きたそうな顔に気付いたらしい。丁度いい。
「この国って人間は暮らしているのか?」
「にゃにさ。藪から棒に。暮らしてるにゃよ」
安心した。
「奴隷にゃ家畜がほとんどにゃけど」
俺を返せ。
「じゃあ戦争の相手国は?」
すがるような視線をノヴァに送るが相手の答えは無常だった。
「ほとんどが人間にゃけどそれがどうかしたにゃ?」
決定。ここが魔王軍だった。
ああ。そうさ。異世界で戦争といえばモンスターと戦うのを妄想してたよ。まず最初に戦うのがスライムでその後どんどん強くなって人らしい人と言えば盗賊ぐらいが関の山だと思ってたよ。実際現実確実に避けるイベントだよ。けど魔王軍って確実に人間の騎士とか冒険者とかそういうの相手取るじゃん。俺人殺し? いやいやいや。そんな度胸ねえよ。戦争だから仕方ない? 同族殺しは最大の禁忌だろ。いやもはや今は同族でもねー。
「召喚魔法はレベルⅠぐらいにゃと最下級モンスターを一体持つのが基準にゃん。けどおまえの場合にゃその契約したモンスターのにゃまえも覚えてにゃいにゃろ? にゃからまたモンスターを召喚しにゃおすにゃ。にゃけどここでは普通に召喚陣を使って申請にゃしででモンスターを召喚しちゃいけにゃいことににゃってる。召喚陣以外に方法はいろいろあるにゃけど今回はこれを使うにゃ」
そういってノヴァはずいっと板を見せてくる。内心衝撃の事実に荒れていたのだが板に顔を近づける。読めん、と俺の表情を呼んだのかノヴァは不満げに鼻を鳴らして板を操作し始める。
すると空中にゴルフボールくらいの表面がボコボコとした黒いガラスの球体が生まれた。俺がそっと触れようとすると落ちて来たのでキャッチする。
「魔泉卵Ver。4☆にゃ。やるにゃ」
どうだ喜べとでもいうようにノヴァは踏ん反り返る。俺はどう反応したらいいかわからずその黒い球を手の上で転がす。手の上のツボが刺激されて健康によさそうだ。そんな俺の様子にノヴァはニヤッと笑って御教鞭垂れ始める。昨日とは対応が雲泥の対応の差だ。
「魔泉卵Ver。4☆は最近2年前に開発されたここアゴラティスにしかにゃい魔道具にゃ。それが改良に改良を重ねてVer。4☆は先月発売された新作にゃ。自分の分身である使い魔を生み出すことが出来るだけでにゃく最下級モンスターでも意思の疎通が可能。レベルの低い従魔師や召喚師だけでなく世間からの注目の的にゃ。特定のモンスターを一定数生み出す魔泉とは違って1体のみモンスターしか生み出せにゃいけども場合によっては強力な個体も生み出せるにゃ。レッサーレッドドラゴンが自分の上位に値するレッドドラゴンを生み出すことを出来たって話にゃ。さらに育成によって成長させることも可能にゃのに消費するポイントは魔泉の十分の一以下! 破格にゃよ!」
なるほど。消費ポイントをケチったわけか。
ノヴァが部屋の模様替えで使用したポイントが馬鹿にならなくて眉間にしわを寄せていたのを知っている俺としては最後だけが本音だとわかった。こんな物くれるんだったら文字を練習するための教材か腕時計、替えの服が欲しいものだ。ポイントは給料と同じでそれによってアゴラティスのダンジョンで生きる魑魅魍魎は物の売り買いをしているらしい。
「外から捕獲して契約するのは?」
「無理にゃ。勝手に領内のモンスターを捕まえて契約したら逮捕されるにゃよ。それに召喚陣で呼ぶモンスターは所有権がにゃくてこちらの意図に合意した奴にゃよ。そんなやつまともなモンスターいないにゃ。それに売買されているモンスターは高いからにゃ。経費が下りないにゃ」
魔王国なのに世知辛い話だ。ちなみにノヴァがいうモンスターの中には自分達猫人族は入っていない。魔族という分類に入るらしい。よくいるゴブリンはモンスターらしい。でもゴブリンのなかには自分たちは魔族だという奴もいる。モンスター<魔族だという考えがあって意見が割れているとのこと。とりあえず自我の無い奴らは全部モンスターってことになるのだそうだ。
俺は魔法道具なのでどちらにも属さない。道具なのにモンスターを扱うって変な気もする。
「そういえばどうやってモンスターが生まるか知ってるかにゃ?」
こういう俺の考えを問う質問をノヴァがしてくるのは珍しい。
「生殖?」
「それもあるにゃ。けど初めはそうじゃないにゃ」
「?」
「にゃむ。この世界の存在はすべて神々が色を付けてくださったことで生まれたにゃ」
……宗教の話だろうか?
「今は神々が世界に色を付けてくださることがにゃくにゃって次世代に種を残そうと生殖が始まったにゃけど今も昔のにゃごりがあるにゃ。それが根源の無垢なる塊。お前の手の中にあるものにゃ」
これが? と俺は親指と人差し指で魔泉卵を掴みまじまじと見つめる。
「世界のあちこちに根源の無垢なる塊は整合性にゃく発生するにゃ。それが世界の色を得て段々と染まり命が生まれるにゃ。それがモンスターの生まれ方の2つ目にゃ」
この黒い球はその根源の塊を特殊な石を加工して封じ込めたものらしい。命を生み出す奇跡が俺の手の平の上にある。そう思うとブルッと体が震えた。
「神聖な根源の無垢なる塊に手を加えることをよく思わない連中もいるにゃけどそうしにゃければ自然と根源の塊から命が生まれる確率は減るにゃ。にゃから魔泉のように特定の色を混ぜてモンスターを生み出すことを魔王様は許されてるにゃよ」
そんな未知な物体俺の手に余るんだがと思い、ノヴァに困った顔を向ける。
「にゃから魔泉卵はベストゲーリア発明賞の選定候補に挙がるくらいすごい発明ってことにゃ」
世界的に有名な科学誌にのるようなものだろうか。それとも誰か有名な科学者が残した遺産で送られる平和への貢献を称えるやつか?
「使い方は?」
発明品の有難さはよくわかったから話を進めよう。
「にゃ。身につけるのもいいにゃけど食べることが推奨されてるにゃね。飲み込めにゃ」
そんな有難いもの食べていいのかと思い戸惑ったが、魔泉卵を持っていた手が勝手に俺の口にそれを突っ込んだ。
「っんっん!!」
頭は躊躇したのに体はそれを拒否して一気に飲み込む。ごほごほとせき込んで吐き出そうとするが全く効果はない。
「にゃむ。3日もすればモンスターが生まれるそうにゃ。食事は抜きにゃね」
板を操作しているノヴァを涙目で見上げる。
俺の数少ない楽しみが……。
毎回あの一日二食の食事をどれだけ楽しみにしているのか知らないのだろうか。
「にゃ~、これで今日は終わりにゃ。生まれてくるのが楽しみにゃね!」
すごくご機嫌の所悪いが聞きたいことが。
「どうやって生まれる?」
「生まれてからのお楽しみにゃ」
その日から四苦八苦して吐き出そうとするのが俺の日課になった。