オーク調教師の朝は早い
―――――オーク調教師の朝は早い
オーク調教師の朝はまずは奴隷部屋の確認から行く。
多くの部下はべつにわざわざ私が見に行く必要はないというが、これをやめるつもりはない。
これはごくまれに新生児オークの見落としやこうして見回っておかないと見回りの他魔物がつまみ食いと称して、奴隷や新生児を食べてしまうからだ。
現に今日も1匹オークの赤子が隠されていた。
奴隷が自分を産み落としていたのを隠していたようだ。
「返してっ!!私の子を返してっ!!
私の子を、私の子を悪魔の子にしないでぇぇぇぇぇぇ!!!!」
オークの子を回収そのまま、奴隷は元気そうなのでとりあえず教育用として実習部屋に連れて行く。
奴隷をそこに縛って放置した後、さっそく子供オークの集まる部屋へと行く
「おらっ!おまえら、朝だぞ!
ご飯の時間だ!!」
ごはん!その言葉で今まで周りで雑魚寝していた大小さまざまな子オークたちが一気に集まってくる。
そのまま、流れるように食堂に誘導し全員に均等になるように食料を配る
「それじゃぁ、これを略奪してくれた他魔王軍の方々や調理してくださった魔料理人に感謝して、いただきます。」
「「「「「「ふご!ふごご~~~!!!!」」」」」」
食事のあいさつはきちんと。
こうすることで、自分たちはなぜ食事をとれるのか、そしてちゃんと待ってから食べることで最低限の軍としての統率を学んでいく。
なお、しゃべれるものはちゃんと喋れとは言ってるのだが、どうやらこのオークたちはほとんどしゃべれるものがいないようだ。
もしくはまだ朝だから眠くて頭が回ってないか。
――――がつがつがつ、ばりばりもぐもぐ!
オークというのは本当によく食べる。
そもそも1年にも満たない期間で赤子から大クマサイズほどに成長するのだ。
もしこれがバイキング形式なら、きっとあっという間に魔王軍の食糧庫は空になっていただろう。
だからと言っては何だが、オークのご飯というのは基本何でも入ってる
普通ならごみやどろ、汚物といわれるそれも平然と入っているため私としては口をつけるつもりにすらならない。
けど、これでいいのだ。
こうすることで外に出た時に食事のウマさにより侵略への意欲が上がるだろうし、生まれてからずっとうまいものを食ってる人族へ自然とヘイトが向かうようになるのだ。
・昼前
この時間になると、オークたちへの教育が始まる
基本、魔王への忠誠、戦いへの意欲。そして……
「はい!これが人間!!こっちがエルフ!
こっちが♀でこっちが♂!はい問題、お前らが積極的に襲うべきなのは?」
「ふごふご!こっちの肉がぎっちりの旨そうなやつ!!
やわらかいやつ、べちゃべちゃしてまずそう!放置する!」
「あほぉ!そっちは男だ!
しかも♀を殺すとは何事だ!♀はもっと大事な使い方があると教えたばかりだろう!!」
「ぶぅ~~……」
自分たちの襲うべき相手、そして繁殖相手の同定方法である。
オークの利点はその繁殖力と成長スピード、そこそこの魔法耐性にバカみたいな耐久力である。
飯は食うのとオスしかいないという欠点はあるが、それ以外のコストパフォーマンスは抜群。
特にあらゆる人族系のメスの胎をつかって繁殖できるところなんて特に素晴らしいと言わざる得ない。
相手への威圧と侮辱、兵力強化の1スライム3グリフィンの素晴らしい利点だ!
が、その利点を生かすためにはこのオーク達にちゃんと敵人族のメスはただ襲うだけではなく、性的に襲う必要があることを覚えさせなければならない。
しかしながら、若いオークは基本食い気であり性行や繁殖に対して興味を持たせるのは大変だ。
別に賢いとか賢くないかと聞かれれば、たった1年で最低限の軍の規律を理解して言葉もしゃべれる、当たりが引ければ呪いや魔法まで使えるようになるというのはおそらく人間のそれよりははるかに賢いといえるのではなかろうか?
……まぁ、その知能の成長も1年ぐらいで頭打ちになる事がほとんどなため、相対的にはバカばっかりになるのだが。
だから、オーク調教ではできるだけ生まれてからすぐに教育を開始。
食欲で釣って学習意欲を高めつつ、それだけにならないようにするのが調整するのがプロの腕の見せ所である。
「じゃぁ、お腹減ってもメスは食べちゃいけないのかぶ~?」
「……そんなことはないが、あくまでそれは最終手段だ」
「わぁい!それじゃぁおで!ちゃんとお腹減らしてから襲うぞ!」
「先生も言ってた!はんぐりー精神が大事!お腹減ってからみんな襲えばみんな食べることができる!!」
……もちろん、一筋縄ではないかないが。
・午後
「ごらぁ!だれだ!!実習部屋に男エルフを入れたバカは!!」
「えぇ!そんな馬鹿な!
だってアイツ、自分はオーク大好き繁殖大好きな淫乱雌エルフだって言ってましたよ!!」
「お・ま・え・か!この馬鹿オーガ!
明らかに他のメスを庇うための方便じゃねぇかぼけ!
もしオークの間に衆道なんてはやったらどう責任を取るつもりだ!!わかったらその男をさっさと牢屋へと戻せ!
あ~も~、自分から志願したくせに泡はいて倒れるとかこの雄エルフもどんだけ軟弱……いや、この部屋に入って3時間経過しても気絶するだけで済んだならエルフにしてはだいぶ丈夫であった方か。」
そして、今日も実習室はガバガバである。
まぁ、そもそもこんなところで雑用させられている魔物という時点で賢くないのは仕方ない事であるが、それにしたって何回もやってるのだから人族種の雌雄の区別位ついてほしいものである。
午後からはオークたちの実際にとらえた人族の奴隷を使った実習である。
基本、ここに来るほどの年齢となれば自発的に行ってくれるのが大半ではあるがそれでも学ぶことは多い。
人族種は自分たちが思っているよりもずっともろい事。
どうすれば相手を生かしたままこちらが楽しめるか。
そして、楽しんだ後ちゃんとそれを最低限大事にすること、折角強兵できると思ったのに我が子ごと食べ殺してしまうというのは魔族倫理的にも許されないことだ。
もちろんここでは失敗が多いせいで、インモラルというよりはグロテスクな光景が頻発するのは仕方ない事。
そう考えればさっきの雄エルフがいろんな意味で原型をとどめていたのはいろんな意味で行幸だったのか、はたまたはオークたちのお気に入りになってしまったのか……
「とりあえず、先生怒らないからさっき間違えて雄のエルフを襲ってたやつ手をあげなさい。」
「「「「「「……………。」」」」」」
「……おい!なんでだれも手を上げない!!」
「だって~。」「ブーッ!」「ぞんなのじらん!!」「あのおずがいんらんだからかってにどろどろになっただけ」「ぜんぜいおごる うぞもづく ごわい」
なるほど、どうやらこういうときだけは団結して嘘やごまかしをする程度には頭が回るようになったらしい。
なんと頼もしくて腹立たしいことだ、ならば……
「よし!それじゃぁ、正直に言ってくれた奴は今日の晩御飯2倍
もし、他の奴が嘘ついてる知っていて、実際誰がやったかを先生に教えてくれた場合も同様に晩御飯を2倍!
ただし自己申告する前に密告された場合は今日の晩御飯話だ、で、どうだ?」
「ブーッ!!ごいづとごいづがやっだ!」「おばえぇぇぇぇぇぇ!!!」「そうだ!それとごいづとごいづがやっでだぞ!!」「ぷぎぃー!ぷぎぃー!!」「じゃばどばどべぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
阿鼻叫喚の大騒ぎ☆
まぁ、実際のところ実況証拠やあの雄エルフの記憶を魔法でいじればわかることだが……
ここでこういう裏切りや嘘、談合のもろさ、オークにおける衆道の悪さをこの際びしっと学ばせるの大事だ。
そういうことにしておこう。
・夜
「それじゃぁ、今日の夜間警戒訓練はお前とお前な。
代わりに奴隷どもは好きにしていいが明日の授業中寝ない程度にしろよ~」
「「ブーッ!!ブーッ!!」」
「……はい、これが今晩の夜食だ。
何と今回はビスケットだ、3時間ごとに追加で2枚、運がいいだろう?」
「「プギーッ!!プギーッ!!」」
「それじゃぁ、警備以外の奴はさっさと寝ていいぞ!
……まぁ、夜更かしするような奴なんかいないだろうが」
どうやら今日の夜食は好評だったようだ。
夜になると基本、オークたちは最低限の夜間警備という概念を学ばせる以外は大体は寝させる。
繁殖が好きでずっと続けたがる優良な奴もいるが基本はすぐ寝てくれる。
繁殖好きな奴はせっかくの優良個体なのだ、きちんと寝て体力を保ってもらばねば困るし興味ない奴でもさっさと寝て次の日に備えてもらわねばならぬ。
一応夜間警備の訓練として起きてる奴に限り、奴隷を好きにしていいという特権を与えることで警戒中の睡眠を防止はしているが……この場合、奴隷に興味がなくてやっぱり寝てしまうか、奴隷に興味を持ちすぎて警戒がおろそかになってる気がする。
とりあえず、夜食を持たせ、時間ごとに夜食を使い魔に届けさせることにより深夜起きてたらうまいものが食えるかもと起きさせることに成功はしているが、これは後々変えなければならない気がする。
でだ。こちらも最後に簡単に報告書や成長記録。
赤子オークがきちんと生存しており、2足歩行できたを奴らの調教メニューに組み込む。
減った奴隷の追加、更新、出兵できるオークリストを作り、最後に趣味の軽い読書をして今日の日課は終わり。
臭くなった体臭をきちんとシャワーで洗い落とし寝ることにする。
・で
――――この仕事、つらくはないですか?
「まぁ好きではじめた仕事ですから」
最近は魔法の才を持つオークが生まれないと愚痴をこぼした
ちゃんと、奴隷の入念なチェックをしているのだが
「やっぱり一番うれしいのは敵人族からの怨嗟の声ね。
この仕事やっててよかったなと」
「毎オーク毎オーク性格と適正が違う。
使い魔では出来ない」
そして納品日。
彼は出兵すべきオークを品定めして、人間界へと向かった。
基本的な性質は決まっているが、最近は戦場に合わせ 多種多様なオークを必要とされるのが辛いところ。
「やっぱ北の戦場はキツイね、愚痴ってもしかたないんだけどさ」
「でも自分が選んだ道だからね。
後悔はしてないよ」
「このオークはダメだ。
ほら、すぐに凍えてしまう」
彼の目にかかれば、見るだけで出来不出来が分かってしまう。
戦闘大界魔界、ここにあり。
今、一番の問題は後継者不足であるという 。
仕込みに満足できないとその日の出兵をやめてしまうという 。
300年前は何重ものオーク実習部屋が並んでいた魔界近辺であったが今では調教師はは彼一人になってしまった 。
問題はオークの赤子を抱き上げて素質を確かめることに、5年はかかると匠は語る 。
「自分が強いと思うことはもちろんだけど、
使ってくれる人はもっとつよいと思わせなければいけないね」
「もちろん出来上がった物は一つ一つ私自身でテストを施してます」
ここ数年は、安価なスライムに押されていると言う。
「いや、ボクは続けますよ。待ってる人がいますから───」
魔界のオークの灯火は弱い。
だが、まだ輝いている。
「時々ね、わざわざ呪祖までくれる人もいるんですよ
この恨み末代までたたってやるぞって。ちょっと嬉しいですね」
「人間界からわざわざ復讐のためにやってくる人が何人もいる。
体が続く限り続けようと思っとります」
「やっぱねえ、直接調教だからこそのってあるんです。
魔術がいくら進化したってコレだけは真似できないんですよ。」
いろんな意味でぎりぎりの描写が多いから近々消えるかもしれんねこれ。
なお、オークの需要が下がったのは別にオークが弱いからとかではなく
現地で十分繁殖できているからの模様