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黒鬼の王  作者: 鬼の居ぬ間に
入学前の一仕事
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入学式前


ガチャ

朝五時、まだ大抵の人が寝ているこの時間帯に部屋を出る人が一人いた。

ガチャ

訂正、二人いた。千夜真とその隣人、皇城美姫だ。二人ともジャージ姿だ。どうやらこれからトレーニングをするようだ。


「あ、また被った。ねぇ、本当にワザとじゃないのよね。これで三回目よ?」

「しょうがないだろ。俺達のトレーニングする時間帯が同じなんだし。いっとくけど被るからって時間帯ずらす気はないからな。」

「わかってるわよ。・・・ねぇ、どうせなら一緒にやらない?」

「そうだな、・・・・そっちのほうが手合せもできていいか。」


二人は合意し一緒にマンションを出ていくのだった





「はぁ、はぁ、はぁ」

「おい。大丈夫か?」


一通りのトレーニングが終わったあと、美姫は中腰になり荒い息をはいていた。


「だから、無理についてこなくいいっていったのに。」

「はぁ、はぁ、・・・真、うるさいわよ!」


真は準備していた水筒を片手に、荒い息をはいている美姫に近づく。


「飲むか?」

「はぁ、はぁ、・・・・いただくわ、ありがと」


そう言って美姫は真から水筒を受け取り、飲み始めた。すると何かに気付いたのかいきなり水筒から口を離し水筒の飲み口をじっと眺めた。


「かか、かかか、間接キッ・・・!!」


そして、いきなり顔を真っ赤に染める。


「どうかしたか?」

「どうかしたかですって!!・・あ、あんたこの水筒、私が飲む前に飲んだ!?」

「?当たり前だろ。なんでそんなこと聞くんだ?」

「そそそ、それは!!・・う〜!!!」


美姫は真を唸りながら睨みつける。真は何で睨まれているのかわからにのか、首をかしげていた。


「もう、いい!!・・さっさと手合せしましょう!」

「?・・わかった。」




広場で二人向かい合っていた。互いの手には何も握られていない。どうやら素手同士での手合せのようだ。一方は汗すらかいていないが、もう一方は荒い息をはいており余裕がない。


「はぁ、はぁ、なんでそんなに強いのよ!!」

「そう言われてもな、強くなったとしかいえない。」

「ムキ―!!」


美姫は真の言葉に怒り、フシャーと猫のように髪を逆立てる。

その後は時間の許す限り手合せを行った。




美姫は地面に座り込んでいる。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「ほら、手」


真は美姫に向けて手を差し出した。

「・・ありがと。」

恥ずかしかったのか、顔が赤い。

「いっとくけど、格闘術以外も含めたら私の方が強いんだからね!!」

そう言って、美姫はマンションに走って行った。真もその後を追いかけるようにマンションに向かった。




美姫視点

(悔しい、格闘術には自信があったのに)

朧学園の青い制服を着ながら、ついさっきの手合せについて思い出す。

(まさか、一発もまともに当たらないなんて。これじゃあ、師匠からなんて言われるか)

(はぁ、・・・・それにしてもあの手暖かったな)

「って、何考えてんのよ私!」

顔を再度赤くし、思い浮かんできたことを吹き飛ばすように顔を横にブンブン振る。それに合わせて、長い黒髪が揺れる。けれど、顔は暫く赤いままであった。




真視点

(いつ以来だろうな、回避じゃなくて防御をしたの)

朧学園の赤い制服を着ながら、つい先程の手合せについて思いをはせていた。

(見たところ、普段は素手じゃなくて、長物の武器を扱っているような間合いの取り方だった。それなのに、あの体術。本領を発揮したらどれだけ強いのやら)

「おっと、そろそろ出ないといけないな。」

これからの経験したことのない生活に楽しみと不安を抱きながら、ドアノブに手をかえるのだった。




法魔士、鬼士養成施設朧学園

八咫島にある三つの学園の内の一つ。北の区画、第一エリア、のほとんどは朧学園の敷地である。法魔士科、鬼士科、普通科、呪具工学科の四つの学科がある。




朧学園校門前。

真が到着したとき校門前には、たくさんの人がいた。これから入学式だと考えても以上な程。

(なんでこんな、前に進むのが苦しい程人が集まっているんだ?)

そう思い、よく集まっている人を見てみると、ほとんどの人が、まるで有名人を一目見ようといった感じで、ある一点を見ている、あるいは見ようと背伸びしていた。

(何を見てるんだ?)

不思議に思い、視線の先を辿って、進んでいった。進むごとに人は多くなる。


『綺麗。』

『お前、声掛けて来いよ。』

『あれが・・』


といった声が前の方から聞こえてくる。そしてようやく見える位置に辿り着いた。そこには、女性が一人いた。美姫だ。彼女がこの騒ぎの原因のようだ。

向こうもこちらに気付き、じっと見てくる。その視線は、この状況をどうにかしろ!!、といった感情が込められているようにみえる。いや込められている。その視線に対しての真の返事は無言で視線を逸らすことだった。そのまま真はその場を立ち去り、入学式場に向かっていった。その背に美姫の批難する視線が向けられているのをヒシヒシと感じながら。



真は入学式場である朧学園のドームの入り口に立っていた。中には同じ色の制服を着ている者同士で固まって座っている。制服の色は青、赤、白、茶色の四種類。学科によって制服の色が異なっており、それぞれ青は法魔士科、赤は鬼士科、白は呪具工学科、茶色は普通科の制服で、一目で判断が付くようになっている。


(鬼士科の場所はあそこか・・)


真は鬼士科に割り当てられた場所に行き、適当に空いてる席に座った。


(まだ、時間はある。寝て待つか)


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