騒動の種
俺達が現在いる、ここ『八咫島』は「特別能力地区」通称「特区」と呼ばれる鬼力や魔力などの研究、鬼士や法魔士またそれに準ずる人の育成などの目的のために設けられた地区の一つである。八咫島は中央の区画を周りの八つの区画が囲むように区分けされている。
今俺はそのうちの南東に位置する区画、第六エリア、に来ていた。第六エリアは商店を中心とした施設が立ち並ぶ区画で、教科書や制服などの学校の備品関係も主にここで取り扱っている。ちなみに前回、美姫の荷物持ちとして行ったところもこの第六エリアである。
待ち合わせの場所まで通りを歩いていると、近くの電気屋のテレビからニュースが流れてくる。
『次は先週、東京都で起こった爆破事件についてです。』
『警察は現場に爆発物はなく呪力の反応があったことから、異能を使った犯罪である可能性も視野に入れて調査を進めています。』
『お次は・・・・』
そんな情報をBGM替わりにしながら歩くこと数分、目的地の喫茶店についた。
「お!来たか。こっちだ」
喫茶店に入ると、奥に座っていた三十代後半ぐらいの男性がこえをかけてくる。
その男性はくたびれたスーツを着ており、ぼさぼさの髪型と無精ひげから、ベテランの刑事の様に見える。男性の名前は坂崎涼介。異能犯罪科の刑事をしている。
「今日は何の用ですか。坂崎さん。俺は入学前の準備で忙しんですけど」
「まぁ、そういうな。そこまで時間はとらねえからよ。」
坂崎は笑みを浮かべながらそういって、カバンからファイルを取り出し、真に渡した。
「今回は調査の依頼をしにきた。詳細はこのファイルの中に入ってる。」
「ちなみに断ることは?」
「できるがやめといたいほうがいい。お前も関係があることだしな。」
「関係がある?俺と?」
「ああ。確かお前も朧学園の新入生だろ。入手した情報によると今回のターゲットの狙いがその学校に入学を予定している名家のお嬢さま方だとわかってな。具体的に誰が狙われているか絞り込みができていない、こちらもできるだけ急いでいるが人手が足りてないのが現状だ。だから養子とはいえ名家の一員に名を連ねているお前にも関係があるかもしれないんだよ。」
「だったら、俺に調査依頼をもってくるのはおかしくないか?本来なら護衛される側だろ?」
「何言ってんだ。お前を護衛できるような人物がうちにいたら、とっくに解決してるよ。」
「それもそうか、・・わかった受けよう。調査優先対象は?」
「優先対象の名前は・・・」
「板羽洋一ですか?お父さん。」
美姫はスマートフォンを片手に電話をしており、電話からは大人の男性の声が聞こえてくる。
『そうだ。手にした情報によると奴らの狙いは美姫、お前を含めた良家の息子、娘達の誘拐だ。まだ目立った動きはしていないが確実に入学式までに動きを見せるだろう。できれば被害が出る前に板羽達を捕まえてくれ。』
「ん、了解」
『それと、今回の件に〈東宮家〉のクズどもが関わっている可能性がある。十分に気を付けておけ。』
「それ本当なの?厄介ね。・・わかったわ注意しておく。何かあったら連絡するね。知らせてくれてありがと。」
『なに、愛する娘のためだ。体調に気をつけるのだぞ』
「わかってる。じゃあね。」
そういって美姫は電話をきり、そして深い溜息をついた。
(入学式まで今日を合わせてあと四日。全く、学校もまだ始まっていないのに、これじゃあ先がおもいやられるわね)
ーとある一室ー
「準備はどうなっていますか?」
「はい、あらかた整っております。あと半日程で行動に移れるでしょう。」
「そうですか、予定よりも早く、計画を遂行できそうですね。」
「はい、〈東宮家〉さまさまでございますね。」
「あそこからの要望は〈皇城家〉のご令嬢でしたね。暴れられると面倒です。最優先で捕えるように。」
「わかっております。必ず捕えてみせましょう。」
「そうですか、期待しています。」