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黒鬼の王  作者: 鬼の居ぬ間に
入学前の一仕事
2/6

買い物

「お、重い。」

美姫とマンションで再会し、一悶着あったあと結局明日買い物で荷物持ちを行うことで決着がついた(押し切られたともいう)。そして現在、買い物をしている途中なのだが、美姫はこれ幸いとばかりにテレビやら調理器具やらと重い物ばかり買っていく。地味に辛い。

「そろそろ、お昼ね。何か食べたいな」

そういって美姫が露骨に上目遣いでこちらをみてくる。

「・・・もしかして奢れといっているのか?」

通常ならこの美少女のお願いに二つ返事で了承したかもしれない。だが、

「いやだ。昨日のお詫びには奢ることは入っていないだろ」

もし了承したりしたら、こいつは絶対に値段の高いところにつれていくはずだと昨日あったばかりだが容易に想像することができた。美姫はそれが気に入らなかったのか

「・・・けち。守銭奴。変態。のぞき魔。・・・」

と俺をけなし始めた。後半になるにつれ言葉は酷く、声は次第に大きくなっていく。そして

「私を汚したくせに!!・・・グスン」

と誤解しかしないことを大声で叫び、涙目になり始めた。周りの人が俺を冷やかなまなざしで見てくる。

「何言ってんだおまえ!?わかった。奢る。奢ればいいんだろ。ただし高いところはダメだからな!」

結局奢ることになり、こんなことなら最初から了承しとけばよかったと後悔しながらも美姫の顔をみると

「うん!ありがと。」

ついさっきまでの涙目がうそのような花が咲くような素敵な笑顔をうかべていた。


心底女性は恐ろしいと感じた。


―ファミレス―

「ふぅ、美味しかった。」

美姫は体に似合わず大飯食らいだった。優に俺の三倍を超える量を完食したのだ。

その後もデザートも大量に頼みそれも完食した。甘い物は別腹というけれど限界があると思う。他人のお金だからなのか全く容赦がない。

「お前、太るぞ。」

これまでの意趣返しのつもりで軽くそう言ったのだが

「何か言ったかな?よく聞こえなかったなぁ〜?・・・もういちどいってよ?ね?」

返ってきたのはきれいなお顔に青筋を浮かべた笑顔だった。


やっぱり、女性は怖い再びそう痛感するのだった。


―帰り道―

「今日はありがとね」

長かった買い物も終わりマンションへの帰り道を歩いていると美姫が前を向いてそういった。

正直、礼を言われるとは思っていなかったので少し茫然とし黙ってしまった。

「まさか礼を言われるとはな」

どうにか言葉を返すが、本音が出てしまった。

「私だってお礼ぐらいいうわよ!!」

流石に不本意だったのだろう顔を赤くしながらかみついてきた。

「悪かったわね。私の苗字を聞いても態度が変わらなかったから。ついつい甘えちゃったのよ」

「苗字?たしかあんたの苗字は〈皇城〉(こうじょう)だったよな?なんでそれを知ったら態度がかわるんだ?」

「まさか・・あんた知らないの!?呆れた。・・・じゃあ≪五峰家≫(ごほうけ)は知ってる?」

「それは知ってるぞ。確か日本の古来から続く優秀な法魔士の五つ家系のことだろ?」

「そう。・・そして私の家、皇城家、はそのうちの一つなのよ。」

「へぇ。そうなんだ。」

「へぇって、何かこう、もっと反応ないの?」

「そう言われてもな。俺にとってお前は唯のドS女だし」

「なによそれ!私はこうみえてもね。≪五峰家≫の中でも天才っていわれる程凄いんだからね!!」

「じゃあ何でそのいいところの天才お嬢さんがこんな庶民が住むようなところに部屋を借りてらっしゃるんですかね~」

「そ、それは!・・・色々事情があるのよ、察しなさい」

セリフの後半は弱弱しくしかったものの聞き取れない程ではなかった。つっこまれたくないのことなのだろう。表情にも陰りがみえる。

「まぁ、なんだ。もう一度言うけど、俺にとってお前は唯の陰湿暴力ドS女ってことだ。」

「さっきより酷くなってるじゃない!だいたいあんたがスカートを覗くのが悪いんでしょ!!」

「それは、不可抗力だって何度もいってるだろ!」

その後は互いに言い合いを続けながら、帰り道を歩いて行った。その様子は中のいい友人同士にみえ、二人の背中を夕日が照らしている。


ようやくマンションにつき、真はやっと荷物持ちから解放された。

「ふぅ〜疲れた。」

持たされていた美姫が買ったものを部屋の前に置き、自分の荷物を持ちながら自分の部屋のドアのぶに手を伸ばす。そこで今までまともな挨拶をしていなかったと気づき

「いや、まぁ、なんだこれからよろしくな、皇城」

今更だなぁ~と思いながらも言葉をくちにする。

「美姫でいいわ。あまり苗字で呼ばれるのは好きじゃないの。」

「了解。だったら俺のことも真でいい。俺だけ名前呼びってのも変だからな」

「わかったわ。」

「改めて、よろしくな美姫」

「こちらこそよろしく真」

そういって二人とも自分の部屋のドアを開け中に入っていった。


(こういう日もなかなか悪くはないもんだな)

真はそう思いながら、買ってきたものの整理をするのだった。


入学式まであと五日。


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