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黒鬼の王  作者: 鬼の居ぬ間に
入学前の一仕事
1/6

隣人

 ―どこかの施設―

「く、来るな!化け物!!な、なん、何でこんな、こんな筈じゃ・・ガァ!!」

 薄暗い通路に男性も断末魔が響きわたり、通路の壁に血が飛び散る。

 ついさっきまで生きていた男性の傍には、五歳ぐらいの少年が佇んでおり、手には、漆黒の刀が握られており、刀身には血がべっとりと付いていた。少年の顔は無表情で、目の前の男を殺したことについて何も感じてない様に見える。

 その後、少年は返り血を浴びたまま、その施設を後にした。


 少年が去った施設の開けた場所にはいくつもの死体が散乱しており、その中央には子供の亡骸が山積みにされていた。そこには生きている者は誰一人として存在しなかった。のちにこの施設は発見され、大量の死体を木に、飛び散った血が葉っぱのようにみえたことから「血の森事件」と呼称され話題になった。それを引き起こした人物についてなにもわかってはいない。ただ施設で行われていた非人道な実験は公に明かされることはなかった。


 ----

 ―「特区」八咫島―

「迷った。ここどこだよ」

 午後二時ごろ、どこかの人気のない通りで、黒髪黒目の青年・・千夜真(せんやまこと)・・が途方に暮れていた。朧学園鬼士科の合格発表を受け「八咫島」に到着しあとこれから住むことになるマンションに向かっていたのだが、その道中で迷ってしまった。

(ついでに地理を把握しておこうと思ったのが失敗だったな)

 探索を切り上げ、来た道を戻ろうとしたが、どこからか話し声がきこえてきた。

「ねぇ、ねぇ君、僕たちとお茶しない?」

「いつ帰れるかわからないけどね。ギャハハハ」

どうやら二人の男性が一人の少女を囲むようにして詰め寄りながらナンパをしているようだ。

 少女は無視をして歩いているがが二人の男性はしつこく、先回りしながらしゃべりかけている。すると、さすがにずっと無視をされ続けたことに怒りを覚えたのか男性の一人が少女の胸に手を伸ばす。しかし、触れそうになったとき


「なに触ろうとしてんのよ!」


少女のそのきつい言葉と同時に胸に伸ばされていた手が払いのけられた。

「このクソアマ!」

 そのことに頭に血が上ったのか、二人の男性が少女に掴み掛かる。

(さすがにまずいか)

 真はそう考え、介入しようとしたが、その前に

「フッ!!」

 呼気とともに少女が放った回し蹴りが二人の男性の頭部に直撃した。

 まともにくらったのか二人の男性はその場に崩れ落ち動かなくなる。・・死んではいないようだ。

 ここで付け加えるべき大事なことがある。少女はスカートをはいているということだ。

 そうするとだ、その状態で男性の頭に回し蹴りを叩き込んだらどうなるだろう。考えてみてほしい。

(あ、水色だ)

 つまりそういうことだ。

 真が少女が二人の男性が一蹴したことと全く予期していなかった男として幸福な光景をみてしまって、呆けていると丁度、振り返った少女と目があった。

 真はこの時になってようやく少女の姿を視界におさめた。

 少女は百六十三センチぐらいの身長で美しい黒髪のロングヘア、スタイルもよく服の上からでも豊かな胸囲が主張している。顔はとても綺麗でとんでもない美少女だ。

 少女はこちらを見たまま、口をひらいた。

「・・・・見た?」

その声は、きれいであったが、なぜか地獄の底から聞こえる声のような不気味さをやどしていた。

「な、なな、何を?」

 咄嗟に誤魔化そうとしたのだが、どもってしまったのが悪かった。

「そう、見たの」

 少女の顔にはとても笑顔が浮かんでおり、顔のつくりも相まってとても魅力的だと評価できるものだとおもう。

 目が全然笑っておらず、背後に閻魔大王様も真っ青な般若が仁王立ちさえしてなければ。

(や、やばい。どうにかして誤魔化さないと。)

「い、いやぁ、すごいな。男二人をあんな簡単に、しかも頭に回し蹴りを当てて倒すなん・・・・。」

 言ってから気付いた。あ、下手を打ったと。

「やっぱり、回し蹴りするとこも見てたんだ。そうなんだ。うふふ。だったら見ていないわけがないわよね」

「あはは。あはははは」

 真のほおに冷や汗が流れた。少女は徐々に自分との距離をつめていく。そして

「・・・この変態!!」

 そして、少女はボディブローを放った。てっきり蹴りが来るものとばかりおもっていたため

「ぐふ!!」

 見事に決まり、真はその場に猛絶した。少女はそんな俺を冷めた目でみながら去って行った。

 ――――

「来て、早々酷い目に合った。」

 回し蹴り水色少女から食らったダメージから回復し、これから住む予定のマンションに愚痴を言いながらむかっていた。「大体スカートをはいて回し蹴りするほうが」とか「ワザとじゃないのに、寧ろ悪いは向こうなのに」などの言葉が聞こえてくる。

「ようやく、ついた」

 すでに、日は暮れ始め空が赤く染まり始めていた。

 マンションは五階立てで、自分はその三階の部屋に住むことになっている。部屋の広さは一般的で家賃も普通、中には開けられていない段ボールが重ねておいてある。

「さて、さっさと整理するか」

 そういって段ボールの片づけに取り掛かった。大凡片づけが終わったころ、ピンポーンとインターホンがなった。誰が訪ねてきたのだろうと不思議におもいながらもドアを開ける。するとそこには

「初めまして、隣に越してきた皇城美姫(こうじょうみき)と申します。どうぞよろしくおね・・!?」

 今日路地で俺にボディブローを放った少女がいた。少女も気付いたのか口上が途中でとまってしまう。

「「ああー!?お前(あんた)は!!」

「水色パンツ!!」

「変態!!」

 と驚きの声をあげ、互いに失礼な呼び名を口にする。こうして俺,千夜誠は隣人,皇城美姫と最悪な再会を果たすのだった。

 ――――

入学式まであと六日。

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