表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

コンパクトの冒険譚

やれやれ、お嬢・・いえ、王妃様にも困ったものですなっ


おっと、失礼。私は王妃様の使い魔の鏡でございます。以後よろしくお願い致します




さて、今の近況を簡単に説明いたします


王妃様は元の世界であのように殺されてしまいましたが、星の巡り合わせと・・微々たるものですが私たちの力もあり、今までとは異なる世界・・いわゆる異世界への転移、あるいは転生を成されるはずでした


私の、私たちの大切な王妃様ですし、一時的に私たちの住む世界の狭間に王妃様の魂を避難させ、平和で王妃様の過ごしやすい世界を皆で吟味していたのですが・・



ほぼ同時期に、今のこの世界にて行われた勇者召喚・・これがまた厄介な術式が組まれておりまして、意識侵食・無意識誘導・権威隷属などなど・・まぁ、他の世界からお越しいただく方に申し訳無くなる程のペナルティスキルが満載されていたのですが、その召喚された勇者(仮)が私たちのいた、この世界の狭間を通り抜けていきました


普段ならエール的な祝福スキルをさりげなく付けて見送るのですが・・

なんと、王妃様の魂がそれに巻き込まれるように、その身体に吸い込まれていったのです



私たちは慌てました


引き剥がそうとしたものの、余程組み合わせが悪かったのか離すことが出来なかったのです


この勇者(仮)を消したとしても、王妃様の魂と絡んでしまっている以上、一緒に消滅してしまうかもしれません



こうなったらこの者を生かし、魔王でも倒させ、とっととお帰りいただき、再びここに来たときにじっくりと分離させよう



そう結論付けた私たちは、行動を起こしました



あるものはペナルティスキルを消し始め


あるものは手当たり次第に祝福を付け始め


またあるものはそれらが露見しないように隠蔽の術式を施していきました




完全な人間の器に魂が二人分ともなると、元々あった魂の優先権は高いでしょうが、どこかしらで王妃様の意識は出てくるはず


そう考えた私は、王妃様の意識が現れた時のために、あの世界についての情報を手当たり次第に集めまていきました






時間にして数秒でしょうか





私たちの世界を通りすぎていった勇者(仮)は、かの世界へと無事に降り立ち


召喚者の思惑とは少し外れた形で、勇者(仮)は勇者となりました


まぁ、あのペナルティスキル程度、私たちの力であれば普通のレベルと同じなのですが、人間にとっては無効化された事が予想外だったようです


籠絡させるための聖女とは別に、国の暗部にいた暗殺者を冒険者風に仕立て上げ、勇者に同行させてきました


勇者には鑑定スキルを付けたはずなので、そんな小手先の小細工などは丸裸なんですけどね




私には勇者自体に全く興味がありませんが、大切な王妃様の器・・傷を付けられては困ります


誠に不本意ですが、表立って守ることも視野にいれないといけません


ふふ、久々に腕がなります



いやいや、あまり表立つと王妃様に怒られてしまいますね



それにしても王妃様は、いつになったら出てくるのでしょうか?




勇者たちは王都を発つ準備を行う間


王と一部の魔法士がペナルティスキルの再付与を目論んだり


暗部が付近の盗賊団と接触したり


聖女が催淫作用のある聖水を教団幹部から手渡されていたり



まぁ、色々とありましたが、ここら辺は勇者に対処してもらいましょう

私たちの祝福があれば、大体のことは何とかなるでしょう



しかし・・前の世界も生きにくい場所でありましたが、この世界も中々に厳しい世界ですね

やはり、早々に王妃様の切り離しをしたいところです




・・・・・・・・・・・・



ようやく勇者たちが旅立てました


最後まで隷属系の付与が出来なかった王と、聖水が効かずに平穏な王都生活を送られてしまった教皇たちは悔しそうな顔をしていますね

ま、あの程度で足止めされても困りますし、私的にも早く旅立って、パパっと倒して、とっとと元の世界に帰ってもらいたいんですけど



・・・・・・・・・・・・



旅立ったその夜、立ち寄った村にて盗賊団に襲われました



あぁ、あの時暗部と話していた輩ですね


レベル的に見ても、かなり余裕ではないでしょうか




・・・・勇者の動きが怪しいですね


あぁ、そう言えば平和な世界から来たのでした。命のやり取りとは無縁の世界・・王妃様の次の世界として候補に入れても良いでしょうか



そんな事を考えていると、村の入り口を守っていた暗殺者の女が、自然な形で1人盗賊を取りこぼしてきた



その盗賊は勇者しか見ていない


つまり、初めから´そのつもり´なのだと分かります



盗賊の歩幅的に20歩ほど


勇者に迫る切っ先




勇者は・・・・



ダメだ、初めて向けられた殺気に身体の反応を遅らせているらしい




はぁ、仕方無いですねぇ




この世界に無い転送系の魔法で、盗賊の右足が来る予測位置に拳大の石を呼び出し、重力系の魔法で固定させる



続けて、体勢が崩れつつ体を捻りながら勇者に斬りつけようとする、あわれな盗賊の心臓の予測位置に勇者の持つなまくらの剣の切っ先を持ってくる


あぁ、勇者は使い物にならないので、微弱な雷魔法で筋肉を動かしましたよ?




ま、結果の見えている殺陣など詰まらないものです




ぼんやりさんは置いておいて、転移させた石を元に戻しておきます


変な疑いの芽など、摘んでおくに越したことはないですしね




・・・・・・・・・・・・




勇者の暗殺に失敗した盗賊団はすぐに退却し、勇者パーティーは村の面々から感謝の言葉をかけられる。そんな出来芝居



はぁ、なんですかね・・こんな茶番を見せられる身にもなってほしいものです



青い顔をした勇者がベッドに入り込む



んー、早く王妃様が出てきませんかね。この勇者、主役にするにはちょっと物足りません



そんな事を考えながら勇者の張った結界を眺める


防音、認識阻害・・この世界にある結界をアレンジしたものかもしれませんが、強度が微妙ですね


王妃様なら・・・・



おや?


睡眠状態にある勇者の身体が動き始めました



自分の身体の動きを隅々まで確認するかの動き


あぁ、その動き一つ一つに優雅さが感じられます



ちょっと感極まったせいか、視界がボヤけますね



呼ばれてからすぐに姿を御見せできなかったのは、この世界でもありそうなコンパクトの姿を検索していたからなのです。前の世界と同じ形と言うのも、なんだか味気無いでしょう?




久し振りのやり取りに、にじみ出る嬉しさを隠し通すのは非常に困難なミッションでした



このまま勇者が目覚めなければ良いのにと思いつつ、言葉を交わす



お嬢さ・・王妃様、いつでも私たちはお側におりますゆえ、気軽にお呼びくださいませ



消え行く王妃様の意識を見守りつつ、私はコンパクトになった姿を隠蔽魔法にて消して行く




王妃様は夜まで表には出ないでしょう・・


はぁ、仕方ありません


王妃様・・我々のお嬢様が目覚めるまで、勇者のお守りでもしていますか



それと・・王妃様の事です。身体を慣らす名目で、手頃な魔物と戦いたがるはず



王妃様レベルの強者はいないでしょうが、片手間で倒せそうな魔物の住みかにでもゲートでも繋げておきますかね




きっと、役に立つはずです


鏡さんたち?のサポート会(回ではない)でした

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ