IF ジルと結婚後
100話記念に書いたIFでジルとの結婚後のお話です。性的描写がややありますので苦手な方はご注意下さい。
どうしよう、恥ずかしい。
隣で実に満足そうに眠る夫の姿を見て、ついでに自分の肌に刻まれた、至るところにある内出血の痕に、昨夜の出来事を思い出しては顔に熱が昇ってしまいます。
何か色々な物から解き放たれたジルは、うん、とてもとても私を愛してくれました。精神的にも肉体的にも。その後遺症が腰部の痛みや違和感になっているので、ちょっと困りものです。
起き上がるのも億劫で、もう寝坊で良いや新婚は許される、と自堕落な思考で隣の伴侶を眺めます。
私はぐったりしている時に諸々後処理をされていたらしく、ちゃんと寝巻きに着替えさせられていました。風邪引かないようにとの配慮なのでしょう、……それは良いけど色々恥ずかしいのですよ。
ジルはそのまま、素肌。脱いだら凄いという言葉を地で行く引き締まりに、全部見た後でも気恥ずかしさが残ります。
綺麗だなあ、とか思ったり。傷もちらほら見えるけど、それを全部含めて綺麗で格好いいし逞しい。……そんなジルに愛されたのだと思うと恥ずかしいけど、幸せで一杯です。
「先程からころころ表情が変わってますが、何か面白い事でもありましたか」
「ひゃっ!?」
寝ていたかと思ったのに、ジルは狸寝入りをしていたのか何処か楽しそうに笑って私を引き寄せます。ぴと、と私と違ってかちかちな胸板に図らずも口付けをさせられてしまい、やっぱり恥ずかしくなってしまいました。
起きてたなら言って下さいよ、と文句を言おうとしたら、実にすっきりした笑みで「おはようございます」の一言。それでもう言う気が削がれてしまって。というかその後唇を重ねられたから、そもそも言えなかったのですけども。
「……ジル」
「どうかなさいましたか、リズ」
確信犯だ……とか思いつつも、変わった呼び方に擽ったさを覚えて、もういいやってなってしまいます。
様が取れたのは、もうジルは私の従者なんかじゃない。ただ一人の伴侶として、私だけのジルになったから。私は元から呼び捨てだったから変化がないのですけど、心はちゃんとジルを夫として想ってます。
……あなた、の方が良いのかな。
「おはようございます、……あなた」
試しに呼んでみると、これが中々に気恥ずかしい。でもジルの奥さんになったんだなあと実感が出来て、うん、悪くはないです。とても満たされて、幸せです。
ちら、とジルを窺うと、擽ったそうに微笑んで、更に額に口付けを落として来ます。ジルも幸せそうで、こんな呼び方も偶には良いのかもしれませんね。中々に慣れないから難しいのですが。
幸せな時間を過ごしていた私ですが、ジルは流石に出勤しなければなりません。私は結婚式の翌日は来るなとセシル君に念押しされましたが、行けないの間違いでしたねこれ。
家から援助とかありますし、そもそもジルが婿入りの形ですから私の名前は変わらないままなのです。別館に住んでるだけでルビィ達近くに居るし。
でもジルは自分でもちゃんと働いて私を養うつもりらしいです、そこは真面目で偉いですよね。
「……そろそろ湯浴みの準備をしましょうか。拭いたとはいえ、汗だらけでしょう?」
「誰がそうさせたのですかね……」
「可愛かったですよ、私の下で乱れるリズも」
そ、そういう事を平然と言う……。
行為の最中も甘い言葉や羞恥を煽る言葉を耳元で囁くから、私常に気が休まらなかったのですよ。耳弱いと知ってたから食まれたりして、非常に擽ったいし。
脱ぎ捨てたナイトガウンを着直しているジルに少しジト目を送ると、とても美しい笑顔で首を傾げられます。ええ、見事なスルーだと思いますよ。
気にした様子なく微笑んで私の頬に口付けるので、もう責める気も霧散してしまいます。
「では行きましょうか」
「へっ?」
ひょい、と抱えられて、私の目が点になります。
……いやいや、私まだ寝てたいんですよ、動きたくないし見られたとはいえ明るい場所で見せたくないし。何で一緒に湯浴みする気満々なのでしょうか。
「じ、ジル、私後で一人で」
「体が辛いでしょうし、私が丁寧に洗って差し上げますよ?」
「け、結構です!」
「出勤時間にそこまで制限はないから大丈夫です。何なら休めと言われたくらいですから」
会話が成立してないんですけど……っ!
割と女の子の憧れであるお姫様抱っこを軽々とこなすジルは、それはそれは柔らかくとろけるような笑みと口付けで私の口を黙らせます。
押し黙るしかない私に、ジルは一層甘い笑みを浮かべては私を浴室へと連行。ああ、これは新婚でよくあるいちゃいちゃパターンの一つなんだな、と思うと嬉しくもあり、同時に色々休まる時がなくて困ると言うか。
セシル君、ごめんなさい。ジルは大幅に遅刻して行きそうです。