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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Punisher
93/190

Raging Wild/Blazing Riled 3

 そう吐き捨てると共に突進をかましてくる黄色の装甲を、シャドウは赤いマシンアイで捉えて最低限の移動で回避する。

 かつてクリムゾン・ネイルとの演習で見たパターンのままであるサルファー・エッジの機動を、エイブラハムはマシンガンで牽制しながら思い出そうとする。


 戦闘開始と同時に突進、距離が離れたらアサルトライフルでの牽制。

 記憶通りに向けられたライフルから吐き出される弾丸を滑るような軌道で回避しながら、エイブラハムは攻撃のチャンスを窺う。

 突進を主眼に置かれ、通常よりも分厚い装甲で覆われたサルファー・エッジ相手ではマシンガンは牽制の役割しか果たせず、時間を掛けられないエイブラハムはブレードでの戦闘に挑まなければならない。


「ちょこまかしてんじゃねえよ!」

「シャドウはそういう機体なんですよ、ブリーフィングは受けなかったのですか?」

「知らねえよ! お前が持ってる上等な玩具を見つけたらぶんどってくるってことしか聞いてねえ!」

「……本当に相変わらずですね」


 エイブラハムはコルデーロの変わらぬ様子に溜息をつき、コルデーロはそんなエイブラハムに腹を立てていた。

 トレンツ・コルデーロは自身の優秀さを疑うことなく、自らを取り上げない企業と、自らの認識ではコソコソとした仕事しかしないくせに終焉者(クローザー)という役割を与えられていたエイブラハムを嫌っていた。

 映像向きの派手な機動兵器で派手な動きをしているというのに、自らが取り上げられないのはおかしい。

 自分の在り方を棚に上げているとはいえ、コルデーロにとってはそれが事実なのだ。


「くたばれ女顔! 美白野郎!」

「……相変わらず腹が立つ、年上を敬おうという気はないのですか?」

「マジかよ!? 謀略者(フィクサー)と同じくらいだと思ってたぜ!」

「そこに直りなさい、叩き切って差し上げましょう」


 自身よりも遥かに歳下である上官の名前を出したコルデーロに、エイブラハムは感情を消したバリトンの声でそう告げ牽制の手を強める。

 冗談のようなやり取りをしつつもエイブラハムは視界の端でエネルギーのインジケーターを捉えていた。数日ほど動かす事が出来ず減少していたエネルギーも、回避行動でジェネレーターが動きほどほどまでに回復していた。


 終わらせよう。

 ナイトメアズ・シャドウは旋回を続けながらサルファー・エッジに向けていた銃口を地面に向け、吐き出された光弾は大地を抉り巻き上げられた砂塵のヴェールがくすんだ黄色の装甲を覆い隠す。

 スラスターから吐き出された青白い炎をバックにシャドウが高速でサルファー・エッジに迫り、ブレードを装備している右腕を振り抜こうとしたその時、銃声のむこうから重厚な金属音が響く。


「まだろっこしいんだよ!」


 コルデーロのスピーカー越しの怒鳴り声にかつて感じた事のない危機感に駆られたエイブラハムは、スラスターの出力を上げ無理矢理そこから離脱しようとする。

 だがその瞬間、黄色のフレームにから飛び出した合金の刃にナイトメアズ・シャドウの肩先の装甲が切り飛ばされる。


「うぜえよ……うぜえ、うぜえ、うぜえ!」


 激昂したコルデーロが次々と繰り出す突進と斬撃を細かいスラスターの操作により回避しながら、エイブラハムは自らの甘さを再確認する。

 役割があろうとなかろうとワンオフ機乗りであるコルデーロと暗殺者(アサシン)でしかないエイブラハムには、埋めようのない機動兵器を用いた戦闘の経験の差があった事を深刻に捉える事が出来ていなかった自らを責める。


 そして浮上した疑惑がエイブラハムの脳裏を侵食し始める。

 何故、自分はこんなにも機動兵器を使えるのか。

 手解きを受けただけ、確かにそうだったはずなのに何故実働データもない最新鋭機すら使えているのか。


「接触不良なんて冗談じゃありませんよ」


 捉えようのない疑惑をそう切り捨て、エイブラハムは失ってしまった反撃の機会を再度窺い始める。


「うぜえんだよ! クソが!」


 光弾をばら撒きながら距離を取ろうとするナイトメアズ・シャドウに、サルファー・エッジが類稀なる突進力で追い縋る。

 エイブラハムが知っているコルデーロの戦闘はミリセントとの演習のみであり、機動兵器の天才であったミリセントはコルデーロをここまで追い詰める事無く敗北へ導いていた。

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