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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Irregular(短編集)
185/190

Dance With Shadow/Trance With Hallow 4

「フラッシュグレネードにスモークグレネードかよ!」


 苛立たしげに野盗バンディットの男はヘルメットのシールドを上げ、煙幕が広がる施設内を見渡してアンジェを捕捉しようとするが、撃った方が早いとすぐさま切り替えてガトリング砲の引き金を引いて滅茶苦茶に弾丸をばら撒く。

 岩肌が剥き出しになっている壁と床を、転がっていた酒瓶を、そして硬い金属質とは違う何かを穿つ音を聞きながら野盗バンディットの男はなおも引き金を引き続ける。

 狂乱に歪む顔がシールドが無くなったヘルメットから露わになり、その醜い様を晒しながら野盗バンディットの男は勝利を確信していた。


 しかし、何かがおかしい。


 今までとは違う違和感に気付き始めた野盗バンディットの男の胸中に、得体の知れない不安と焦燥が広がり始める。

 野盗バンディットの男とアンジェとの距離は焼く70mほどあり、その途中にあったあらゆる物はガトリング砲が吹き飛ばしており存在しない。

 ならこの近づいて来る音はなんなのだろうか、硬い金属質とは違う何かを穿つ音は。


「死ねよ、死ねよ、死ねよ!」


 なおも近づいてくる奇怪な音に男は声を張り上げる。

 男がばら撒いているのは人間が耐えられる訳もない火力のガトリング砲。それこそ特殊走行車両や機動兵器でなければ、耐え切れないはず。

 だというのに、その音は平然と硝煙と砂埃の中から現れた。

 パワードスーツを纏う死体を白銀の太刀に刺し、盾の様に構えていたアンジェリカが。


「サムライ女! てめえ、俺の部下を盾に――」

「どちらにせよ、見捨てるつもりだったのでしょう? 下等生物らしい浅い考えですね」


 自らが斬り捨てたガトリング砲の残骸を踏みつけ、アンジェリカは不機嫌そうにそう吐き捨てる。

 アンジェリカがやったのはエイブラハムが屍食者(スカヴェンジャー)の切り札である、巨鳥の生態兵器ヴェズルフェルニルを撃破した際の模倣だ。

 エイブラハムがヴェズルフェルニルの視界を塞ぎ、防御に使用したのはあのトレンチコート。アンジェリカはフラッシュグレネードとスモークグレネードで視界を殺し、パワードスーツを纏う死体で弾雨を防いだ。

 白銀の太刀が軽々と突き刺さるような粗悪品だが、防弾性は高かったようだ。

 そう胸中で毒づきながらアンジェリカは、白銀の太刀の切っ先を野盗の男へと突きつける。


「姉さんはどこに居るのか。さっさと吐きなさい、クソッタレ」


 従わなければ命は無い。強制力を持った言葉と共に白銀の太刀の切っ先で、野盗バンディットの男の鼻先を撫でる。

 痛みはないものの、流れ出した自らの血液に焦燥が戻ってきた野盗バンディットの男はガチガチと鳴り始めそうな歯を必死におさえ込みながら、自らの後ろに存在する金属製の扉を指差した。


「そ、そこだよ、そこの金属製の扉の向こうだ」


 その言葉にアンジェリカは太刀を野盗の男の鼻先から離し、言われた扉へと歩み寄る。

 薄汚れた金属製の扉。それは何かを拒絶するように、ディスプレイから光を消していた。


「まあ、もう開かないけどな! さっきガトリングで配電盤とか吹き飛ばしてやったしよ!」


 そう言いながらハンドガンを取り出す野盗の男の目に、白銀の剣閃が煌く。


「ならばもう結構。あなたは用済みです」


 掛けられた言葉に野盗の男は、引き金に掛かった指を引こうとするも腕の先の妙な軽さに違和感を感じ、その正体に気付いてしまった。

 先の消えた自らの腕、崩れていく自らの体、落ちていく自らの視界。


交戦終了(コンバットクローズ)


 紡がれた終了の言葉を最後に、男は乱分割された肉塊と化した。

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