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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Irregular(短編集)
183/190

Dance With Shadow/Trance With Hallow 2

 無残にも切断された合金製の扉、岩肌が剥き出しとなった壁と床、辺りに散乱する合成アルコールのボトルと人の破片達。

 血煙が漂うその中で疾走するアンジェリカは首を傾げる事で飛来する弾丸を回避し、ヘルメットを被った顔面を正面から鷲掴みにし、力任せに壁へと叩きつける。砕けたヘルメットの破片が突き刺さったのか、それともヘルメットごと頭が砕けたのか、パワードスーツを纏う体は赤い飛沫を撒き散らしながら放り投げられる。


 アンジェリカが正面から侵入したそこは旧時代の名残を残した施設。簡単なセキュリティと照明などのシステムが生きていたせいで、アンジェリカは侵入を悟られてしまっていた。

 とはいえ閉鎖空間である以上、ハンドグレネードや面制圧兵器の装備は考えられず、ほとんどの敵は酩酊状態。最高水準の戦闘思考を譲り受けたアンジェリカに敗北などある訳もない。エイブラハム・イグナイテッド、ウィリアム・ロスチャイルド。その2人はシモン・リュミエールにとっての特別だったのだから。


 だがウィリアム・ロスチャイルドの凄惨な記憶を垣間見たからこそ、焦燥が強くアンジェリカを突き動かす。

 無力な女が囚われてしまえば、辿り着くのは最悪の結末以外ない。


 奥歯を噛み締める事で舌打ちを堪えたアンジェリカは、視界の端に感じた人影に一気に駆け出す。そこに居たのは予想通り、野盗バンディットの構成員が4人ほど。生への願望と死の恐怖からか、ヘルメットから除く灰瞳の目はどれも血走り、口からは荒い息が漏れている。


 しかし、そんな事はアンジェリカには関係ない。

 構成員達の中央へと転がり出たアンジェリカは水平に構えられた銃口から逃れるように腰を落とし、白銀の太刀を水平に高速で回転させる。立体的なヴァインの装飾が施された刃は風切り音を奏で、銃弾よりも速く猛威を振るった剣閃により、4つの首と体が新たに地面へと叩きつけられた。


「本当に、汚らわしい」


 心底不愉快そうに吐き捨てたアンジェリカは白銀の太刀を振って血を払う傍らで、疑問から眉間に皺を寄せる。

 ただの戦闘であれば敗北はありえないが、今回の戦闘はあくまで救出戦。敵を全員殺し尽くせばいいという訳ではない。


 だが、それはあくまでアンジェリカの都合であって、敵対者達の都合ではない。

 敵対者の目的はLibertaliaに住まう有色の人々であり、降伏勧告に使う人質としてメリッサは拉致されているはず。少なくともアンジェリカが既に手に掛けた20人ほどでは、コロニー1つを占拠する事など出来ない。

 しかし救援を寄越させる事でメリッサを人質を取った事から、野盗達はLibertaliaの性質と戦力を把握していないはずはない。ウィリアム・ロスチャイルドとローレライ・ロスチャイルドによって、謀略者(フィクサー)という企業の忘れ形見から救われた平和に危機感を失った人々を。


 そして導き出される応えは1つ。

 野盗達はLibertaliaの性質を理解しているからこそ、荒事があったかのように遭難を演出し、他の誰でもないメリッサを人質に取った。


 Libertalia最強の戦力、アンジェリカ・イグナイテッドを葬るために。


 突如向けられた濃密な殺気にアンジェリカが咄嗟に近くの岩壁の影へと身を隠したその瞬間、轟音を上げて圧倒的な暴力が施設内唯一の通路を襲った。

 毎分4200発の弾丸はパワードスーツを纏う死体達を弾き飛ばし、岩壁をジリジリと削っていく。

 ガトリング砲。アンジェリカは自分を殺すためだけに用意された明確な殺意に、今度こそ舌打ちをしてしまう。アンテイムド・メサイアやパーフェクト・レインがあれば話は別だが、その2つは代行者(プレイヤー)悪夢の影ナイトメアズ・シャドウと共に失われていた。



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