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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Irregular(短編集)
175/190

Perfect Killing/Wrecked Willing 4

 来客などがない限り、リベルタリア家の人間しか使う事のない食堂。

 そこには1人分だけ用意された食事と、どこかつまらなそうにスープをスプーンでかき回す亜里沙が居た。

 パトリックとフェルナンドは機動へ気球の装甲技術を生かしたサンプルの確認、チーロはそれに随伴したため、リベルタリア家の人間は必然的に亜里沙1人とされていた。


 ダークブラウンの瞳は寂しさを滲ませ、その亜里沙の様子がナターシャの心を掻き乱す。

 絶望と失望に沈む人々をナターシャはたくさん見てきた。そしてその人々が自らに導かれ笑顔と生きる意味を取り戻していく様もたくさん見てきた。


 しかし、ナターシャにはその小さな少女1人救うことも出来はしない。

 化け物達を率いて権謀術数のままに戦場を操る謀略者(フィクサー)。それがナターシャ・コチェトフであり、復讐者アヴェンジャーに復讐する存在なのだから。


 だからこそ、ナターシャはおかしくてしょうがなかった。

 住人を売り払おうとしているリベルタリア家が。

 弱き者達の痛みを知り、秘めた才能を開花させながらも驕る事のなく在り続けた解放者(アリサ)をつま弾きにする、リベルタリア家が。


 亜里沙が解放者(リベレイター)として目覚めれば全ての人類のランクが1つ下がり、復讐者(アヴェンジャー)と相対するに値する存在となるだろう。

 暴力を行使せず、誰も傷付ける事無く、多くの人々の失われた尊厳を感応させる。

 それがナターシャが亜里沙に見出した回答者(アンサラー)としての素質であり、解放者(リベレイター)としての可能性なのだから。


 だが当の亜里沙はテーブルのスープを覗き込むばかりで、口に運ぼうとはしていなかった。

 仕方ない、そう胸中で言い訳するように呟き、ナターシャは端末の通常回線でレギナの端末をコールする。


『どうしました、サーシャさん?』

「私とあなたの食事2人前を持って、リベルタリア家の食堂まで来てちょうだい。許可は私がとるわ」

『わかりましたー!』


 間延びしたレギナの嬉しそうな返事を聞きながら、ナターシャは訝しげな亜里沙の視線を無視するように目を閉じる。

 暫しして申し訳程度に装飾が施された扉がノックされ、2人前の食事を載せたサービスワゴンと共にレギナが食堂に現れた。

 そしてその亜里沙に用意された物と食器以外同じである食事達は、2人の手によってテーブルに並べられていき、ナターシャはチーロの椅子をアリサのそばへ寄せて席についた。


「お嬢様、ご一緒させていただいても構いませんね?」

「……なにそれ」


 亜里沙は笑みと共に疑問符の付かない疑問詞をナターシャへ向け、ナターシャはそれを了承と取りレギナを席に着かせて食事を始めた。

 亜里沙はレギナに髪型について問い掛け、レギナはソレを自慢するように亜里沙に見せつける。

 レギナは亜里沙にも同じようにやると提案するも、亜里沙は手先が不器用なレギナを知ってか顔を一気に引きつらせる。


 そんな少女達のやり取りと笑顔を眺めていたからだろうか。

 ナターシャの表情はいつものポーカーフェイスから、自然と浮かんでいた笑顔へと変わっていった。

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