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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Liberator
164/190

Save Your Soul/Crave Your Whole 4

「何の、事でしょうか」


 フェルナンドはそう言いながら、ローレライから離れるように執務席の椅子に腰を掛ける。

 今のローレライは銃を取り上げられており、衣服のパワーアシストを除けば文字通りの丸腰。


 だというのにその態度はまるで支配者のような威圧感を持ったものであり、フェルナンドは知らず知らずの内にかいていた汗を拭う。


「この騒動も何もかも、全てはリベルタリア家の資産を守ろうとしたパトリック様とチーロ様の愚かな金策のせいなのではなくて?」

「ですから、何が仰いたいんですか?」


 焦れたようにアッシュブロンドの髪をかきむしるフェルナンドに、ローレライは第3の目的が達成された事を理解する。


 第1の目的はутешениеからLibertaliaの人々を守る事。

 第2の目的は謀略者(フィクサー)の正体を探り、その目的を把握する事。

 そしてローレライが自主的に決めた第3の目的は、敵対者を最初にLibertaliaに招き入れた存在を、後の憂いとなるない通者を炙り出す事。


 コロニーLibertaliaは峡谷という天然の要害に守られている上に、身銭を切ったパトリック・リベルタリアのおかげで防衛戦力は十分なほど。しかしутешениеは峡谷を迷わずに抜けてリベルタリアを襲撃した。

 つまり、リベルタリア側に内通者が居るという事になる。утешениеをLibertaliaへと招き入れた内通者が。

 リベルタリア家の資産が尽きるのを恐れた、チーロ・リベルタリアという内通者が。


 チーロは人々を守るパトリックに愚直さと少ない資産が尽きるのを恐れて、有色の住人を数人差し出す事を条件に報酬を得る予定だったのだ。

 フェルナンドは分かっていながらも、コロニーの混乱を恐れて事実の抹消を図った。ローレライにはそう思うだけの証拠があった。


「утешениеの襲撃はリベルタリア夫妻とутешениеによって仕組まれたもの。内容は定期的に一部の有色の住人をутешениеに拉致させ、その分け前を2等分するというもの――утешениеのログにありましたわ。チーロ様と謀略者(フィクサー)の通信履歴が、彼らが仕組んだ姦計の証が。あなたは知っていてそれを見逃したのではなくて?」

「……そうか、そこまでバレてたんですね」


 隠していた銃にさりげなく手を伸ばしていたフェルナンドは、自嘲するような笑みを浮かべて椅子に背を預ける。


 リベルタリア家の最大の罪にして、最大の失態。

 утешениеをLibertaliaに引き入れ、定期的な拉致を容認する事でコロニーの守りと収入を得るという最悪の取引。

 その甲斐もあってутешениеは最初の襲撃以来Libertaliaを襲う事はなく、他の野盗や人買いからコロニーを守り続けていた。


 しかしソレも終わりだ、とフェルナンドは肩を竦める。


 そもそも有色の人間が集まってくるもの拒まずというスタンスに無理があったのだ。

 ウィリアムのような切り札が居る訳でもなく、その上謀略者(フィクサー)として内側からLibertaliaを操っていたナターシャが居なければ、Libertaliaの運営はもっと早く破綻していただろう。

 パトリックが生きていた頃でさえ、Libertaliaは重要書類の1部をナターシャと亜里沙の手に委ねていたのだから。


「こんなひどい事になるなんて思っても居ませんでした。そんな事を言っても、もはや無意味でしょう。僕を磔刑にでもしますか?」

「あら、心外ですわ。わたくしは"無能なり"にコロニーのまとめていたフェルナンド様の手腕を評価しているつもりでしてよ――それに、既に首謀者が"居ない"事件に罰を与えるほどわたくしは暇ではありませんの」

「……本当に、何もかもお見通しなんですね」


 何もかも上を行く少女にフェルナンドは、降参だとばかりに手で顔を覆う。

 自分以外の誰もが知らない情報に推測だけで辿り着いた参謀。ナターシャに頼りきりだったフェルナンドが、そんなローレライに敵う訳がなかったのだ。

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