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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Liberator
163/190

Save Your Soul/Crave Your Whole 3

『貴様ァッ!』


 爆風に煽られるコックピット内でヨルダノヴァは、左背部に装備されたブースターをフルブーストさせてアズライト・キャヴァリアに無理矢理方向転換させる。だがその間にもウィリアムはバイクを走らせながらのハンドグレネードの投擲をやめない。


「お前らのくだらねえ馴れ合いに、あの子達を巻き込むんじゃねえ!」

『世界を混迷へ導いた貴様が何を言う!』


 ウィリアムが投擲するハンドグレネードを、アズライト・キャヴァリアはバトルライフルを失ったことで自由となった右腕部で振り払う。

 そしてその藍色の装甲を纏う右腕部が横をすり抜けようとするウィリアムを捉えようとする。だがウィリアムは咄嗟にハンドルにもたれかかるように前傾姿勢を取り、シートに挟んでいたハンドキャノンで迎え撃ち軌道を変えさせる。


「元凶は俺でも、それをやったのはお前らだろうが!」

『言い訳がましいなあ! 復讐者(アヴェンジャー)ァッ!』

「否定はしねえし、させねえよ!」


 冗談のような銀色の銃が弾丸を吐き出す度に、パワーアシストですら殺し切れなかった反動に苛まれながらもウィリアムは銃撃を止めはしない。


 ローズマリー・アロースミスはこの依頼を受けさせる際、ウィリアムに自らの撒いた種を刈り取れと言っていた。

 企業を壊滅させ、枷を失った私兵達を野盗へと変えさせ、世界を混迷の中に引きずり込んだ責任を取れ、と。

 ローズマリーは種を撒いたのはウィリアムであり、その種を育て混迷の花を咲かせたのは世界に生きる人々だと理解していたが、あらゆる暴力が蔓延る世界の黒点であるウィリアムに責任と取らせると称して、戦火を更なる戦火で焼き尽くさせる以外の方法を思いつくことは出来なかった。


 しかし娘であるローレライはウィリアムが戦場に赴くことを良しとせず、以前より作ってはいたが秘匿していた武装をウィリアムに与えさせることをローズマリーに約束させた。


 ナノマシン散布型ハンドグレネード、サイレント・ブリンガー。


 そして出立前に侍女により手渡された、黒い布で包まれた巨大な鉄の塊。

 弾が切れたハンドキャノンをガンホルダーに戻し、ウィリアムはそれを乱暴にバイカーズバッグから引きずり出す。


 黒い布に包まれた重厚な金属塊。ウィリアムは巻きつけられたベルトを外し、黒い布を加えて引き剥がした。

 姿を現したのは折り畳まれた黒い銃身、Quietism(クワイエティズム) Vanisher(ヴァニッシャー)と刻まれた粒子砲。


 ウィリアムはそれを左手を振り払うような動きで展開させると、それと連動した合金のパイプが展開された銃身を固定して粒子砲としての形を象っていく。

 バイクを後輪を滑らせるようにして止めたウィリアムは、黒い銃身をアズライト・キャヴァリアを向け引き金を引くと、いつかのアンチマテリアルライフルと同じほどの長さの銃身、そしてそれ以上の大きさを持った砲口に粒子が集束し始める。


 ウィリアムはここで死ぬ訳にはいかない。

 女達と約束をしたのだ、必ず戻ると。


 ヨルダノヴァはここで死ぬ訳にはいかない。

 何よりも愛していた主君を、この手で弔うまでは。


 そしてアズライト・キャヴァリアも、左腕部に装備された粒子砲に粒子を集束させる。

 大小の青白い粒子の光が、美しくも殺意を孕むその光が峡谷を照らす。

 放たれればどんな物質でさえも葬る、そんな歩兵の手には余る粒子砲を、かつて自らを殺そうとした原罪のオリジナル・ホワイトの残骸から作られたソレを向けてウィリアムは吐き捨てるように叫んだ。


「くたばれ、クソッタレェッ!」

『死ね、復讐者(アヴェンジャー)ァッ!』


 そして峡谷は、殺意と粒子の光に包まれた。

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