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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Liberator
158/190

And For All Justice/End For All Injustice 4

「ごきげんよう、こちらは多目的傭兵屋アヴェンジャー戦略担当のローレライ・ロスチャイルド。これより野盗バンディット掃討の指揮を一時的に取らせていただきますわ」

『ふざけやがって! 今度はそうやってはめる気か!?』


 即座に返された怒声をローレライはインカムのモニタリングを一時的にキャンセルする事でやり過ごす。

 フェルナンドの言った通り、見せ掛けだけとは言え、ローレライはコロニーと敵対していたのだ。不信感を持つのも無理もないだろう。

 しかしのコロニーLibertaliaのほとんどの人間が同時に理解していた。

 この女は企業を壊滅させた襲撃の指揮を執り、ウィリアム・ロスチャイルドと戦闘車両を用いずに機動兵器を撃破した参謀なのだと。


「でしたらどうぞお好きに。負けるための戦いというものをわたくしは知りませんが、さぞお楽しいのでしょう?」


 そもそも専守防衛が精一杯だと聞いていた戦力が戦えているこの報告と違う事実に、ローレライは防衛部隊こそが勤めを果たしていないと憤慨していた。

 機動兵器という分かりやすい恐怖に曝され続け、助けも呼ぶことも出来なかったコロニーの疲弊を知らないからこそ出た考えではある。それでもローラにとってはそれが事実なのだ。


「皆さんよく聞いてください。フェルナンド・リベルタリアはコロニーLibertalia首脳として、ローレライ・ロスチャイルド殿に指揮権を一時的に譲渡しました。これは事実であり決定です」


 泥沼となりかけた対話にフェルナンドはそう言って割り込む。

 既に戦闘が始まっている以上、こんなことに時間は掛けられないのだ。


『ですがフェルナンド様――』

「皆がそう思うのも無理はありませんが、これが最善なんです。こんなことしか言えない僕の無能さを許してください」


 優秀な若きコロニー首脳の謝罪に、反論者達は黙らざるを得なくなる。

 父を戦いで喪いながらも指揮を執り続け、コロニーを守り続けてきたフェルナンドに反論出来る者など居はしない。


「ようやく話がついたようですわね。早速ですが、リベルタリア邸前に配置している装甲車と小隊を餌に、中央の街道へと誘い出していただけまして?」


 若き首脳やその傘下の者達の心象など知らぬとばかりに、ローレライはマーカーを打ったマップデータを各隊長の端末へと送信する。


 コロニーLibertalia(リベルタリア)には中央に大きな街道があり、それに沿うように細い道がいくつもある。だが急造のコロニーであり、峡谷内で1から作り上げたLibertaliaはろくな区画整理もされておらず、途中で終わっている道も多い。それを理解しているのか、野盗達は裏道を避けて街道に中隊をまばらに配置していた。

 そしてローレライの策は複数の中隊を中央の街道の一部に集めて、現在野盗(バンディット)達と相対するように配置している大隊と裏道を抜けて大隊とで挟撃し、足を止めた野盗の中隊にロケットなどの高威力兵器で殲滅するというものだった。


「……随分とシンプルな策ですね」


 滔々と語ったローレライに困惑の色を滲ませながら、フェルナンドは思わずそう呟いてしまう。

 自身の存在を誇示する事でLibertaliaに動揺を誘い、ウィリアムという絶対的な戦力を行使させる事で膠着状態を生み出した。そんなローレライが指揮を執った襲撃と比べて、今回の作戦がフェルナンドにはあまりにもシンプルなものに感じられたのだ。


「この程度の規模であれば本来策すら不必要ですわ。今回の戦いでは商品価値のある人間を生かしながらの威嚇ではなく、敵対者の殲滅なのですから――それと、装備の出し惜しみをしてはなりませんわ。утешениеを壊滅させたと知られれば、そうそう他の野盗はおいそれと手を出されることはなくなるはずでしてよ」


 見くびるな、そう言外に付け足して、ローレライは同じ疑問を持っているだろう各部隊に告げる。

 野盗のパワードスーツに欠陥が生まれている以上、ロケットランチャー等の高威力兵器は今までの以上の効果を発揮するはずだ。これまで企業の残党をウィリアムと共に殺し続けてきたローレライだからこそ、確信を持って指示を出しているのだから。


 端末に表示されたマップ上で、コロニーLibertalia防衛部隊を示すマーカーのいくつかが動き出した。

 その動きに感じた平和ボケと言い換えられる錬度の低さに、ローレライはどこまで呆れさせてくれるのかと嘆息する。


「どうやら、変わらなければならないものが多いようですわね」

「……重々承知しております――ところで、失礼ですが奥方様はいつより戦いに参加されているのですか?」


 詫びも程ほどに、フェルナンドは不躾であると理解しつつ思わず問い掛けてしまう。

 名前、ルックス、そして眉唾物とも言える戦歴以外の全ての情報が公開されていない傭兵。そんなウィリアムと唯一無二の信頼関係を築き、非戦闘員でありながらも敵の組織に潜入することが出来る美しき女傑。その女に興味を持つなと言う方が酷であった。

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