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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Punisher
117/190

My Sweet Shadow/I Leave Hollow 1

 演目(プログラム)終末劇(ラストステージ)、第2幕:断罪者(パニッシャー)


 悲観主義(ペシミスト)である企業は罪深く怠惰な人類の筆頭である自らを断罪する存在、断罪者(パニッシャー)という復讐者(アヴェンジャー)に負けずとも劣らない回答者(アンサラー)を作り出した。その素体には唯一色を残していたリュミエールの血族を使用して、世界が作り出した答えに対する新たな回答を提示したのだ。


 ナイトメアズ・シャドウとの擬似ネットワーク、擬似レーダー、擬似データベース、擬似トレーサー等を格納してあるものの未だ惰弱な存在である断罪者(パニッシャー)には、最強の生体兵器である比類なき白(ディスオルタナティヴ)を庇護者としてつける事を決定する。

破壊者(デストロイヤー)壊殺者(ブレイカー)復讐者(アヴェンジャー)、アドルフ・レッドフィールドらの記憶から作り上げたAIを、オルタナティヴ技術の結晶である素体にインストールした比類なき白(ディスオルタナティヴ)は最良の庇護者であり、最高の教師となるだろう。

 3者の記憶は比類なき白(ディスオルタナティヴ)終焉者(クローザー)という役割を与える程に優秀な暗殺者(アサシン)を作り上げ、アドルフ・レッドフィールドの記憶は計画通り比類なき白(ディスオルタナティヴ)断罪者(パニッシャー)を守らせるのだから。


 その後役目を終えた比類なき白(ディスオルタナティヴ)進行者(ファシリテーター)に殺害させ、その記憶を断罪者(パニッシャー)譲渡。復讐者(アヴェンジャー)が撃破したオリジナル・ホワイトのAI、プライマル・シナーを吹聴者(ジバー)はスプリット・シャドウへインストールし、単独でソレを撃破する断罪者(パニッシャー)復讐者(アヴェンジャー)を越える最強の存在となる。


 そして回答者(アンサラー)でのみ対応できる戦力が消え、誰もが生存競争に勝たなければ生きていけない世界が作られ、復讐者(アヴェンジャー)は新たな争いの炎を生み、断罪者(パニッシャー)はその炎を掻き消して世界を(なら)していくだろう。


 組み上げられた2つの演目が終わりを迎える事は永遠にない。


 ●


 多大な時間を掛けて手に入れ、そして何度も見返したそのデータを表示する端末をテーブルに投げて女は嘆息を漏らす。

 女としては身長の高いすらりとした体躯、冷たい美しさを湛える顔に飾るアイスブルーの瞳、背まで伸ばされた美しい白銀の髪。そんな彫像のような美しさを誇る女の傍らには美しくも残忍な光を放つ白銀の太刀が携えられていた。

 ヴァインの装飾がほどこされたソレの刃には悪夢の終焉者ナイトメア・クローザーと刻まれており、それが誰にとっての悪夢なのか知る事も出来なかった女――アンジェリカ・イグナイテッドは苦笑を浮かべる。


 エイブラハムの遺体を埋葬した後、メリッサはエイブラハムが受け取る筈だった報酬を受け取ってアンジェリカと共にレジスタンスStrangerに別れを告げた。欺き続けただけに飽き足らず、ハニートラップまでさせようとしていたイーノスにはもはや嫌悪感しかなく、それはイーノスに従うだけだった父も同じだった。

 しかし女と子供の旅は宿1つすら厳選しなければならないほどにとても過酷であり、メリッサの資金と野盗(バンディット)襲撃によって得た報酬はすぐになくなってしまった。

 そして縋るようにエイブラハムに預けられたアタッシュケースを開けたメリッサはその中身に驚愕した。


 アタッシュケースに入っていたのは数枚の書類と便箋。

 それはアンジェリカとメリッサを正式に娘にするという便箋と書類、エイブラハムの隠し財産の在り処などの走り書き、そしてその財産を遺産としてアンジェリカとメリッサに平等に分配するという遺書だった。

 複製が出来ない直筆のサインとパーソナルIDを含むそれらにアンジェリカだけではなく、自らまで大切に思われていたことを知ったメリッサは涙を流して2人で生きていく事を改めて決意する。


 企業というこの時代において最も高収入の組織に居ながら得た収入を使う事があまりなかったエイブラハムの財産は膨大な物であり、その資産により2人の旅は快適なものとなったが大き過ぎる財力は争いの火種となる。

 野盗(バンディット)が有色の美少女であるアンジェリカを狙い、2人が泊まる宿を襲撃したのだ。


 これにはレジスタンスという不安定な環境での過酷な旅に慣れていたメリッサも慌て、宿からの脱走が間に合わず野盗(バンディット)に2人の寝室への侵入を許してしまった。

 戦わなければ粗野な男達に犯され最終的には命を含めた全てを失ってしまうと、メリッサがハンドガンを枕の下から取り出したその時、野盗(バンディット)達の体を銀光が切り裂いた。


 切り裂かれた男達を含め誰もがその状況を理解する事が出来なかった。

 男達は身の丈以上の太刀を振るう少女を、メリッサは隣で眠っていた筈の妹の、もう居ない2人目の父を髣髴とさせるその立ち振る舞いを。

 野盗(バンディット)全員を斬り捨ててみせた少女は自らの姉に無事かと問い掛け、姉はたった1人の家族を戦いに連れて行かれないように返り血に塗れた少女をきつく抱きしめた。


 綴書者(テラー)の思惑通り戦いが断罪者(パニッシャー)を逃す事はなく、アンジェリカは戦う事を余儀なくされた。


 演目(プログラム)終末劇(ラストステージ)によってエイブラハムの全てを得たアンジェリカは赤い服を好むようになり、白銀の太刀を扱えるようひたすら研鑽し続けた。

 そして自身らに掛かる火の粉を払いながら旅を続けた数年間でアンジェリカは最高の用心棒と呼ばれるようになり、あらゆる民間軍事企業に傭兵として登録を打診される。しかしアンジェリカは話もろくに聞かずソレを拒否した。

 父から受け継いだ太刀は姉と自らを守るものであり、金につられて誰かの為に振るうものではない、と。

 アンジェリカの意志は固く、旅の間ごく僅かな例外を除いて自衛以外の目的で太刀を振るう事はなかった。


 そしてアンジェリカとメリッサは旅の果てに比較的新興のものであり、有色無色問わず人々を受け入れる小規模コロニーLibertalia(リベルタリア)に辿り着いた。

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