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Actors On The Last Stage  作者: J.Doe
Program:Punisher
115/190

Please Baby Burn/Please Reighny Turn 3

 アンジェリカはスプリット・シャドウへ回し蹴りを繰り出して無理矢理距離を空けた瞬間、被弾覚悟で背を向けたまま、スラスターをフルブーストさせて更に距離を空ける。

 出遅れたスプリット・シャドウの撒き散らす光弾を蛇行機動する事で、柱に当て霧散させる。


 レーザーブレードに発光弾(フラッシュロケット)、お膳立てが整っている以上あとはあとは自分がやれるか、やれないか。それだけだ。


 何よりアンジェリカは証明しなければならない。

 自らが父の命の延長線上にあるだけの価値があるのだと、あの不細工な紛い物よりも自らが父の一番の理解者なのだと。


 ナイトメアズ・シャドウは両肩の発光弾(フラッシュロケット)をロックオンせずに宙空に射出する。

 漆黒の弾頭は自らを放った影が通り過ぎた瞬間、地面に落下し眩光を炸裂させる。

 その光を察知したシャドウは緩やかな円軌道を描きながら旋回し、ありったけの発光弾(フラッシュロケット)を放つ。


 同じ武装を使用するスプリット・シャドウが有視界妨害兵装に対する備えをしていない筈がなく、生半可な弾数では効果は得られはしない。

 弾切れ(エンプティ)を告げるシグナルを聞きながら、ナイトメアズ・シャドウは柱を蹴りスラスターの高出力な推力により滞空する。


 もう終わりにしよう。


 ナイトメアズ・シャドウは右腕のレーザーブレードで柱を切り裂き、生み出した大小ある瓦礫を黒い装甲を纏う足で自らを見失いつつもこちらの射撃武器がない事を理解し、眩光から出ようとはしないスプリット・シャドウへ蹴り飛ばし青白い炎を背負って猛追する。

 同体レーダーで飛来する物質を感知したスプリット・シャドウはマシンガンで振って掛かる瓦礫を粉砕し、その光弾はナイトメアズ・シャドウの酷使されていた左足の装甲を削り、ついには膝から先を吹き飛ばした。


 千切られ爆散する足も、確実に瓦礫と漆黒の装甲を削る光弾も意に介さずナイトメアズ・シャドウはただ加速する。

 瓦礫を全て破壊する事が出来なかったスプリット・シャドウに瓦礫が襲い掛かりその場に縫いつけ、ナイトメアズ・シャドウは白い装甲を纏う左腕を残った足で踏みつけるようにしてスプリット・シャドウを飛びつく。


 部位破損により重量は減少しているものの、高速で迫る機動兵器の持つ運動エネルギーに抗う事は出来ずスプリット・シャドウはそのままシャドウに馬乗りにされ装甲を削られながら地面を滑る。

 慌ててスプリット・シャドウが抵抗しようにしようとするも、マシンガンを持つ左腕はシャドウの右足に踏まれ、懐に入られるどころか馬乗りにされている現状ではフラッシュロケットすら効果的ではない。


 最適化された思考でプライマル・シナーはレーザーブレードを展開するも、ナイトメアズ・シャドウの左手で放たれた裏拳により右腕部の手首に当たる部位が破損し、ブレードのエネルギー供給が物理的に遮断されてしまっていた。


 ――終わりにしましょう


 バリトンの声の幻聴に身を委ねながら、アンジェリカは脳裏によぎる声に応えるようには粒子の刃を振り上げる。

 青白い光は粒子を散らしながらも、静謐でありながら獰猛な光を放つ。


「さようなら」


 アンジェリカは舌の回らない口で告げる。

 父を奪った全ての怨敵へ、今殺さんとしている父の紛い物へ、そして愛する父と愛しい思い出を作った日々へ。

 愛しい影が霧散していく映像(ヴィジョン)がよぎる脳裏、埋めようのない喪失感が溢れ出す胸中。

 そして少女の手に委ねられた暴力の光が、振り下ろされた。

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