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【9】

ちょっとの間投稿できませんでしたが、投稿できるようなりました。

 ――【ミカ武具店】。それは北の広場のすぐそばにある路地の入り組んだ通路の先にある、何の変哲のない古ぼけた扉の先にある店だ。

 店の店主は腰まである空色の髪を先っぽで一括りにして、髪と同じ、空色のくりっとした瞳を持つとても可愛らしい女の子だった。とても、こんな奥まった場所に店を構える人には見えない。


「あのー、お客様? どうなさいました?」


 あまりの驚きに固まっていた俺を不審がって声をかけてきたこの店の店主の女の子。店の名前から想像するに【ミカ】というプレイヤーネームだろう。


「あ、いや、なんでもないです」

「あ、そうですか。では、何をご所望ですか?」

「えっと、防具の修理と新しい防具を探しに」

「防具の修理ですか。えっと、そのロングコートですか?」


 さすがに武具店をやっているだけあって、すぐに見分けられた。っといってもロングコート以外は初期装備だし、このコートもボロボロだからすぐにわかる。


「はい、そうです。えっと、お願いできますか?」

「はい! 喜んで!」


 俺はその言葉を聞くとロングコートを装備から外してミカに渡した。


「はい。お預かりしました。修理にはしばらく時間がかかると思いますので、店内でお待ちください」


 俺が頷くのを見るとミカはすぐに奥に引っ込む。修理をしている間、俺は店内に飾られている武具を見ることにする。

 このゲームでは店に飾ってある商品は固定されていて店の店員でなければ動かすことはできない。その代わりに、タッチすることによって商品のパラメーターを確認することができるシステムとなっている。

 俺は手短にあった防具をタッチしてパラメーターを見てみる。


 防具名:【繭糸コクーンのティーシャツ】

  種別:体装備〖内着上〗

  生産ランク;4

  属性:光属性

  ステータス上昇:AGI+46 INT+32

  耐久値:200/200

アビリティ:『斬撃耐性 Lv2』


 かなりのパラメーターを要していた。だって、俺のつけている内着のステータスがこれだ。


 防具名:【初心者のティーシャツ】

 種別:体装備〖内着上〗

 生産ランク:1

 属性:なし

 ステータス上昇:VIT+1

 アビリティ:『なし』


 初心者の防具シリーズは耐久値がなく壊れないがその代わりパラメーターが低い。この装備と比べると雲泥の差だ。ここの生産者はかなりいい腕をしている。

 ほかの商品も見てみるけど、どの商品も高いパラメーターをしていた。


「お待たせいたしました!」


 武具をしばらく見ているとミカが奥から現れた。どうやら修理が終わったようだ。


「耐久値は完全に回復しました」

「ああ、ありがとう」

「はい。それで、修理代が300Jになります」

「ん」


 俺は300Jを払った。


「ありがとうございます」

「いや、こっちもありがとうございます。あ、そうだ。これをくれなませんか?」


 俺は先ほど見つけた防具を指した。


「これですね? えっと30000Jになります」

「う、結構高いんですね」

「えっと、はい、うちは素材が良い分高くなってしまうんですよ。本当はもっと安く売りたいんですけど」

「まあ、しょうがないか」


 俺は必要経費と諦めて30000J払う。

 買ったのはこれだ。


 防具名:【銀亀シルバータートルのレガース】

 種別:足装備〖両足〗

 生産ランク:4

 属性:光属性

 ステータス上昇:STR+68 VIT+50

 耐久値:350/350

 アビリティ:『呪い耐性 Lv2』

      :『斬撃耐性 Lv2』

 

 銀の亀ってどこにいるんだろう? しかし、全体が銀色で統一されていて青いラインが二本、左右に入っているのはいいセンスだ。

 早速装備する。まだ下のズボンが初心者の装備だとしてもなかなかいい。


「お似合いですよ」

「そうですか?」

「はい! 髪の色とおそろいでいい感じです」

「ん。ありがとうございます。それじゃあもう行きますね?」

「はい。ありがとうございました!」


 俺はミカの声を背中に聞きがら店内を後にした。

 しかし、フェンリルさんといいミカといい誰もモミジのことを言わない。MOBをテイムすることってそんなに珍しいことじゃないのか?

 まあ、その辺はまたあとでアクアにでも訊けばいい。

 とりあえず、金がなくなってきたので、フィールドにでも出ますか。東の森は行ったから、今度はこのあたりで一番MOBが強い北の山岳地帯に行ってみるとしよう。

 俺はマップを見ながらどうにか路地から大通りに出て、北門からフィールドへと向かった。

―――――――――――――――――――――――


北の山岳地帯は【ディセント山】と言うらしい。来た感じでは岩場が多く隠れやすいところも結構ある。プレイヤーも遠くにちらほら見えるだけで、混雑している感じはない。さすがに、まだβテスター推奨のフィールド名だけはある。その分MOBもかなり強い。しかし、初日で驚異の成長を遂げた俺には倒せる。

 ディセント山に出てくる主なMOBは火と地の属性を持っていることが分かった。だって、身体が岩で覆われていたり、頭から炎を出していたから簡単にわかる。

 俺が今戦っているのはフレイムウルフの群れ7体だ。リーダーはすでに倒したので、後は弱体化したフレイムウルフを狩るだけだ。


「せいっや!」


 俺は掛け声とともに、新しく覚えた単発アーツ【バスタークラッシュ】使い、剣を地面に突き刺す。この技は剣を地面に力いっぱい突き刺すことによって衝撃波を周囲に発生させる。衝撃波を食らうとダメージと共に一瞬スタンを起こすという特殊能力付きだった。

 急激なスキルレベルのアップによってたくさんのアーツを覚えた俺は一つ一つ効果やダメージ量を確認しながら進む。

 モミジも回復魔法で援護してくれるからかなり楽に戦闘ができる。

 フレイムウルフ7体をさくっと倒した俺は時刻を見た。時刻は午前十一時を過ぎていた。そろそろ、山を下りないと昼食の準備が遅くなってしまう。

 俺は急いで山を下りて街でログアウトする。

――――――――――――――

 

 昼食はオムライスにした。今回は水紀も下りてきたので一緒に食べた後、また、ISOにログインする。

 昼からは生産系のことをしてみようと思う。せっかく生産系のスキルがあるのにやらないのはもったいない。

 そのためには素材とキットが必要なのだが、キットは買わないといけないため、今はない。素材もMOB素材しかないため、集める必要がある。

 とりあえず、ポーション系を作りたいので調合の基本キットを1500Jで買った。ついでに残ったJジュエルで【薬草】を100個、【蒸留水】20個【瓶】20個を3200Jで買った。こういう初期の素材は始まりの街でも買うことができる。

 俺は手短な広場で調合キットを出して、調合してみることにした。薬草を煎じたり、煮たりして、できたのが初心者ポーションという、最初に使うポーションだ。

 一回作ってしまえばスキルレベルが達していればレシピから一括して調合することができる。自動で作ってみると、多少だが手作業で作った方が、回復量が多かった。


「うーん。手作業のほうが、品質が良くなるのなら、ほかにも品質を上げる手段がありそうだな」


 今度は時間をかけて水分を飛ばしてみる。すると、また、回復量が上がった。だいたい普通の作り方の二割増しぐらいだ。

 調合などの生産スキルはMPを消費して行うようだ。

 俺は一時間ぐらいかけて、買ったすべての素材を初心者ポーションに変えた。


「うーん。ほかの素材でも何かできないかな?」


俺は素材を集めるべく、初心者の草原へと向かっていった。

 初心者の草原は今日も今日とてプレイヤーでいっぱいだった。それもそうだろう。今日はサービス開始二日目。βテスター以外のプレイヤーはスキルのレベル上げに初心者の草原に来る人も多いと聞く。

 初心者の草原の奥の方に来て早速、採取をおこなおうと思ったが、どれが薬草などの素材アイテムかわからなかった。それもそうだ。採取系のスキルをとってないのだから。

 俺はSPを16使って【採取】と【鑑定】を取った。採取は素材アイテムをとるときに判別をしてくれるスキルで、スキルレベルが上がると、より細かいアイテムまで見分けることができる。鑑定は?マークの付いたアイテムを調べて、アイテムを明らかにしたり、より細かい説明を表示できるようになる。ちなみに、採取したアイテムは鑑定で調べないと素材として使うことはできない。

 採取を生産王と入れ替えてみると、採取できる、場所がわかるわかる。草原の奥の方に来ているのであまり採取されていない場所が多い。俺は片っ端から集めて回る。

 それから一時間近く集めて回っていると、かなり草原の奧に来てしまったようで、周りに人がいなかった。


『くぅ』


 俺が採取に集中していたからか、どこかに行っていたモミジが帰ってきた。


「よし、帰るか?」


 俺がモミジを抱えて帰ろうとすると、モミジが手をすり抜けていく。


「おい、どうした?」

『くぅ、くぅ』


 モミジはある方向を向いて鳴いている。それは森の奥を指していた。この奥はまだいっていない。何かあるのだろうか。


「この奥に何かあるのか?」

『くぅ!』


 肯定のようだ。


「じゃあ、行くか」


 改めてモミジを抱えて、森の奥へと行く。

 しばらく歩くと、見えたのは洞窟だった。MOBがいるかもしれないのでモミジを頭の上に乗せてから、洞窟に入る。

 洞窟はヒカリゴケのような植物で薄っすら照らされていて、奥までは見えないが進むのには苦労しなさそうだ。まあ、俺には鷹の目があるから大丈夫だが。しかも、入り口はあまり大きくなかったが、だんだんと広くなっている。


「ん?」


 特に戦闘もなく、最奥まで来たようだ。最奥は大きな広場ぐらいの広さがあり、高さも相当だ。一番奥の壁には扉らしきものがある。それ以外にはないもないから、あそこに行けばいいのか。

 俺が部屋の真ん中あたりまでやってきた時に突如としてモミジが警戒の声を上げた。それと同時に真上に大きな気配を感じて、思いっきり後ろへと飛ぶ。

 上から落ちてきたものはさっきまで俺のいた場所を押しつぶし、地面から土煙を上げた。

 土煙が晴れて見えてきたものは大きな骨だった。


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