【7】
かなり遅くなりましたが更新しました。最近、執筆の調子が悪いです。
朝起きた俺は冷蔵庫を見て、愕然とした。なぜなら、昨日作ったはずの水紀の夕食、つまりは、チャーハンが残っていたのだから。
俺は急いで水紀の部屋へと向かった。扉を開けて中を覗いてみると水紀はまだ、パンタシアをかぶっていた。どうやら、昨日から夜中もISOをやり続けていたようだ。いくらなんでもやりすぎだ。俺は急いで自室へと戻り、パンタシアをかぶって、ログインした。
――――――――――――――――
ログインした俺は東の広場の噴水前にいた。始まりの街では最初にログインした場所に次からも現れるようになっている。因みに、モミジは俺がログインした時に頭の上に現れた。
すぐさま、メニューウィンドウを出してチャットで、アクアを選んだ。
『ハーイ、もしもし。スノウお姉ちゃん何?』
アクアはすぐに出た。どうやら戦闘中とかではないようだ。
「お前、今どこにいる?」
『今? 南の草原から帰ってきて、南の広場近くだよ』
「そうか、今から行くから、そこで待っとれ」
『え? あ、う、うん。わかった』
俺はチャットを切ると走り出し。モミジには落ちないように言うことを忘れない。
南の広場に着いた俺はすぐにアクアを見つけた。そのそばにはパーティーメンバーと思われる人物が四人いた。
「あ、スノウお姉ちゃ~ん」
アクアが俺に気づき大きく手を振ってくる。ちょっと恥ずかしい。
アクアは手を振っているといきなり目を見開いた。そして、俺に向かってダッシュ。なぜ!?
「スノウお姉ちゃん! ど、どどど、どうしたの!?」
「何が!?」
俺の目の前で急ブレーキをかけて止まると、アクアは顔を思いっきり近づけて喋りだした。俺の反応も当然だと言いたい。
「何がって、お姉ちゃんの頭の上にいる子のことだよ!」
「頭の上って……ああ~、モミジのことか?」
「モミジちゃんっていうの!?」
「アクア、興奮しすぎ」
俺は片手でアクアを押しとどめ、片手でモミジをなでる。すると、モミジは気持ちよさそうに鳴いた。そこで、ようやく、アクアのパーティーメンバーが追いついてきた。全員が女の子で、どの子もとても整っている容姿をしている。
「アクアちゃん。早すぎ」
「あ、ごめ~ん」
「それで、そっちの方がアクアさんのお姉さん?」
「うん! 紹介するね。あたしの自慢のお姉ちゃん」
「あ、どうもスノウです」
妹よ、流れが急すぎる。俺はそのまま流されて、自己紹介をしてしまった。
「わぁ~、綺麗なお姉さんだと思ったけど、声も綺麗~」
「本当ですね」
「それで、こっちがあたしのパーティーメンバーだよ!」
アクアが四人の少女を指していった。
「まずは、この子が切り込み隊長のエルシア」
「誰が、切り込み隊長よ! まあ、切り込んではいくけど」
最初に紹介されたのは赤い髪をポニーテールにしている少女だった。その髪と同じ赤い瞳には勝気な光が浮かんでいる。
「この子が、魔法使いのサリー」
「どうも、こんにちは」
次に紹介されたのは、緑色の髪を腰辺りで一括りにして、優しそうな光を宿した薄緑の瞳をこちらに向けている少女だった。
「最後に、この二人が無口な双子で、補助魔法使いと、忍者のシルとミル」
最後にと紹介されたのはどちらも紫色の髪をサイドポニーにしている双子だった。青い瞳がこっちに向けられている。正直、顔だけじゃどっちがどっちかわからない。服でわかるが、とりあえず紹介された順だとすると髪を左のサイドポニーにしているのが補助魔法使いのシルで、サイドポニーを右にしているのが忍者のミルだと思う。
「それで、スノウお姉ちゃんの上にいる子は何なの?」
だから、妹よ。流れが急すぎるんだよ。まあ、このまま、紹介するか。
「えっと、この子はモミジ、昨日俺と契約したモンスターだ」
「え!? もう、MOBを使役したの? てかそんな子このあたりにいたっけ?」
「えっと、いたよ西の森の奥の方に」
「またまた、え!? もしかして、あれから、一人で、西の森に行ったの?」
変な言葉が入ったぞ、アクア。それにしても、何か悪かったのか?
「スノウさんはすごいですね。西の森の北の山岳地帯は今の段階では、βテスターでしかもパーティー向けですよ」
「え? そうなんだ」
結構強いMOBが出ると思っていたけど、そんなに難易度高いんだ。まあ、そのあとの九尾の狐との戦闘の印象が強すぎて、忘れていたが。
「そ、そんなんことより、モミジちゃんにさらわせて!」
アクアは鼻息も荒く、俺の頭へ視線を向けていた。
「良いけど、それより、アクア?」
「何? ひっ!」
俺に視線を戻したアクアはなぜかビビっていた。ちょっとは起こっているがそこまで怖い顔をしているつもりはないんだが。アクアの後ろにいるエルシアたちもなぜか顔を引きつらせていた。
「な、ななな何かな、お、おおおお姉ちゃん?」
アクアはちょっとビビりすぎ。まあ、これくらいビビるならちゃんと話を聞いてくれそうだ。
「昨日の晩飯どうした?」
「きき、昨日の夜ご飯? ええ、ええっと、食べてません」
「だよな~。アクア、正座」
「え!? こ、こんなところで?」
「アクア?」
「は、はい!」
アクアはその場でジャンプして正座した。地面に膝をぶつけて居たくないのだろうか?
そこから、俺のアクアへの説教を始めた。
――――――――――――――――――
「う、ぐすん。お姉ちゃ~ん。もうしないから許して~」
三十分ぐらいの説教で、アクアがぐずり出した。しかし、ここで許しては、こいつはわからない時がある。
「あ、あの~、スノウさん?」
そこで、今まで、様子を見ていた、四人のうちの一人、切り込み隊長のエルシアが話しかけてきた。
「何かな? エルシア?」
俺はなるべく普通の顔でエルシアを見る
「え、えーと、もうそれぐらいでアクアちゃんを許してあげてください」
「なぜ?」
「もう、十分に反省したと思いますし、そもそも、あたしたちが誘ったことですので」
「で?」
「え、えっと、だから、その、ご、ごめんなさい!」
エルシアは勢いよく頭を下げた。俺はしばらくそれを見たのちにため息を吐いた。
「わかったよ。アクア、もう立っていいぞ」
「う、うん」
アクアは遠慮がちに立ち上がった。
「アクア、今回はエルシアたちに免じて許してやるが、今後こういうことをしたら、しばらくゲーム禁止にするぞ」
「は、はい! 今後は気を付けます」
「とりあえず、朝ごはんだから、ログアウトするぞ」
「うん。じゃあ、みんな後でね」
「じゃあな」
俺とアクアはログアウトをした。
――――――――――――――――――――
残されたアクアのパーティーメンバーはちょっと唖然としていた。何せ、いつもは自分たちを引っ張っていくアクアがあんなにも言いなりになっていたのだ。
「なんか、すごかったね」
エルシアはログアウトした、二人の居た場所を見てそうごちる。
「そうですね。でも、あの可愛いお顔が無表情になって起こる姿はゾクゾクしました」
サリーはなぜか恍惚とした表情になっている。
「あー、あんた、Mだったわね」
「はい! 私も怒られたいです」
「はぁ……まあ、面白そうな人だったけど」
エルシアの言葉にシルとミルは無言でうなずいた。
――――――――――――――――――
落ちた俺と水紀は朝ごはんを食べていた。
「あの、お兄ちゃん。ごめんね」
「ん? ああ、別にいいぞ。これからはちゃんとご飯時には戻ってこれば」
「うん、ちゃんと守る」
「なら、良いぞ」
「うん」
それからは無言になったが、気まずい雰囲気ではなく、安らかな空気が流れた。
「ごちそうさま。じゃあ、あたしログインするね」
「ああ、後で俺も行くから」
「うん」
水紀を見送った後、俺は皿を洗い洗濯などの家事を一通りやった後、自室へと戻って、ISOにログインした。