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【1】

こんにちは、ソルラです。まだ、ほかの作品が途中なのに新しいのを作ってしまいました。でも、作りたかったんです!

 




 無限に広がる蒼穹の中に存在する浮遊島に彼は現れた。この世界に現れた彼は英雄となるかはたまた魔王となるかはまだわからない。けれど、確かに始まった。彼の冒険は。

  ―――――――――――――――――――――――――――


「ゲームやろうよ!」

「は?」


 俺――倉木くらき柚樹ゆきが、学校から早くに配られた夏休みの課題をやっているところに聞こえる元気がいい、まだ幼さを残した声。


「何言ってんだ? 水紀?」


俺に話しかけてきたのは俺の妹の倉木くらき水紀みずきだ。腰まで伸ばしてある漆黒に輝く髪を頭の横で二つに止めてある。いわゆるツインテール。パッチリ二重の大きな瞳が髪と同じく黒く光っている。顔の要所要所も非常に整っており、誰が見ても美少女だ。ただ、残念なのはもう中学二年生にも関わらず小学生の中学年に間違われる小さい体だ。

 そんな水紀は目をキラキラさせて俺を見ている。


「だから、ゲームしようよ!」

「俺、今宿題やっているから後でな」

「後でなら、一緒にやってくれる?」

「ああ」

「約束だよ!」

「わかってるって」

「絶対の絶対だよ!」


 そういって、水紀は嬉しそうに俺の部屋を出ていった。このとき俺はゲームといっても二人でやるパーティーゲームだと思っていた

  ―――――――――――――――――――――――――


 今日のノルマを終えた俺が自室を出て、下に行くと楽しそうにソファーでテレビを見ていた水紀に出くわす。水紀は足音で俺が来たのだと分かったのか、すぐに振り向いた。


「お兄ちゃん、宿題は終わったの?」

「ああ、って言っても今日のノルマ分だけだけどな」

「じゃあ、ゲームがやれるね!」

「ああ」


水紀はすごくうれしそうにじゃれついてきた。それはまるで、散歩に連れて行ってもらえる犬を創造させる。


「それで、何のゲームをやるんだ? 家にあるのだと、マカオパーティーなんかか?」

 某ゲーム会社が出しているパーティーゲームを言うと水紀は首を振った。

「全然違うゲーム。最新作ゲームだよ」

 こう見えて水紀はかなりのゲーマーだ。RPGからシミュレーション、はたまたアドベンチャーまで、ありとあらゆるジャンルに手を出している。そのどれもが上手い。こういう人が生粋のゲーマーだというのだと俺は思う。

 俺も適度にゲームはやる方だと思うが、どうしても水紀と大学に行った姉にはかなわない。ついでに言うと悪友にも。どうして、俺の周りにはこうもゲームが上手い人が多いのだろう。


「最新のゲームで二人でやれるゲームなんてあったっけ?」


 俺も適度にやる方なので、時々、最新作ゲームの情報などは見ているが今月発売のゲームで二人以上のゲームはなかったはずだ。


「あるんだよ、それが。二人以上のゲームが!」


 水紀はかなり興奮している。俺とゲームできることがそんなにうれしいことだというのか。ああ、忘れていた。水紀はかなりのお兄ちゃんっ子だった。つまりは、俺が大好きだということだ。これは自意識過剰ではない。この前も俺に向かって大好きといっていたし。


「そうなんだ。じゃあ、やるか?」

「うん。じゃああたしの部屋に来て」


 どうやら、ゲームは水紀の部屋でやるようだ。これは珍しい。いつもは俺の部屋かリビングでやるもんだから。それも一日中。なぜ、ゲームを一日中やれるかというと、ただ今、両親はいない。父さんの単身赴任に母さんが付いていったからだ。どうも、当初は父さん一人で行く予定だったのだが、父さん大好きな母さんが駄々をこねて、一緒についていったらしい。単身赴任は今年いっぱいはあるようで、水紀は注意される人もいないから一日中ゲームができるというわけだ。ついでに、姉の方は県外の大学に行っているため、大きな休みにしか帰ってこれない。まあ、姉がいたとしても無駄だが。


 水紀の部屋に入るとそれまたファンシーな光景だった。向かって右側。つまりはベッドがある方は、壁一面がピンクの壁紙が張られている。壁に取り付けてあるフックに水紀に似合いそうな可愛らしい服がごまんとかかっている。反対側は壁紙自体が白色だ。これだけでもおかしい。普通、壁紙は同じ色にするはずだ。しかも、その壁際においてある机やら棚やらにパソコンやテレビなどの機械類がいろいろ詰め込んである。これでは、左右で違う部屋だ。

 水紀は部屋の隅に置いてある、紙袋を手に取ってきた。結構大きい袋だ。


「これだよ。お兄ちゃん!」


 水紀が紙袋から出してきたのは一つのゲームだった。俺はそれを手に取ってタイトルを読み上げる。


「えーっと、何々、【インフィニットスカイ・オンライン】? ……ってこれオンラインゲームじゃん」

「え? そうだけど?」

「水紀、俺オンラインゲーム嫌いなんだけど」

「え!?」


 水紀は聞いてないという風な驚き方をした。そういえば水紀にはいってなかった。俺はある理由でオンラインゲームが嫌いになった。昔は大好きだったが。


「で、でもでも、それはただのオンラインゲームじゃないよ。VRMMOなんだよ」

 VRMMO――仮想大規模オンラインゲームとも呼ばれるそれは七年前から出始めた新しいゲームジャンルだ。そもそも、ヴァーチャル・リアリティーシステムが開発されたのは今から八年前。一年という短期間でゲームにまで進出してきたのはすごいことだ。本来はもっと時間をかけてやるものだ。しかし、その短期間でゲームハード開発したエントロピー会社がもはやVRゲーム界の第一線を走っている。

 俺も昔はVRMMOもやっていた。


「ふーん。でも俺はVRMMOが特に嫌いなんだ」

「でもでも――」

「でもでもじゃない。やらないったらやらない」

「うー」


 やばい。水紀の目が涙目になってきた。でも、やりたくないものはやりたくない。


「じゃあ、いいもん」

 

俺が無言を貫いていると突如として水紀はスマホを取り出した。スマホを数回操作して耳元へ当てる。どうやら、どこかに電話しているようだ。


「あ、もしもし、お姉ちゃん? あのね――」

 

どうやら、一番上の姉にかけているらしい。しかし、姉さんにかけてどうするつもりだろう?


「――ん、お兄ちゃん」


  すると、水紀はスマホを俺に差し出してきた。電話を替われということらしい。


『ちょっと! ユキちゃん! どういうこと!?』


 電話を替わるととてつもない大きな声で話しかけられた。俺は素早くスマホを耳から離す。


『ちょっと! 聞いているの!?』

「姉さん、聞いてるから、うるさい」

『あ、ごめんね……ってそんなことはどうでもよくて!』

「どうでもよくないだろ」

『どうでもいいの! それよりどういうこと? 【ISO】をやらないって?』

「ISO?」

『ああ~、インフィニットスカイ・オンラインのことよ』

「あ、そんなんだ」

『それよりも、ISOをやらないってどういうこと!?』

「あ、話を戻した」

『ふざけないで答えて』

「あ、はい。えっとそれは俺がVRMMOが嫌いだから」

『それだけ?』

「そうだけど?」

『ふーん』


 すると姉さんは黙ってしまった。


「ど、どうしたの?」


 それが若干怖くて声をかける俺。


『ユキちゃんがそのつもりなら、こっちにも考えがあるわ』

「か、考えって?」

『ユキちゃんの黒歴史をさらす』

「げっ!」


 姉さんは恐ろしいことをいった。俺の黒歴史と言ったらあれしかない。もともと並みの美少女より可愛いらしい俺の容姿を使って水紀と姉さんがさらに悪乗りして、作った写真集がある。そのことだろう。俺も最初は嫌がったが、無理やり着替えさせられて、結局最後は一緒にノリノリでやっていた。


「や、やめない? それ」

『ユキちゃんが一緒にISOをやるって言ったらやめてあげる』

「そ、それは……」

『やらないっていうなら、インターネットに写真データを流す』

「う、うぅ~~。はぁ、わかったよ。一緒にやるよ」

「わぁ~! ほんと!? お兄ちゃん!?」


 会話を聞いていた水紀がいきなり抱き付いてきた。そのまま、俺と水紀はベッドに倒れこむ。


「って、危ないだろ水紀」

「えへへ~。ごめんなさ~い。でも、お兄ちゃんが一緒にゲームやるっていうからうれしくて」

「たくっ。それで、姉さん聞こえてた?」

『ええ、聞こえていたわ。私もユキちゃんと一緒にプレイできるのがうれしいわ』


 姉さんはさらりと言ったが、俺は聞き逃さなかった。


「へー、姉さんも一緒にやるんだ?」

『行ってなかった?』

「うん。聞いてない」

『そうなの。でも今言ったからいいわよね?』

「まあ、いいけど」

『それじゃ、後のことは水紀ちゃんに任せるから、バイバイ』

「うん。じゃあね」


 そういて姉さんとの通話を終えた。ちなみに水紀は俺の胸で頬ずりをしている。


「おい、水紀。いい加減離れろ」

「ええー。良いじゃん。お兄ちゃんが一緒にやってくれるからそのうれしさを味わいたいんだよー」


 さらに、深く頬ずりをする水紀。げっ、こいつ匂いまで嗅ぎはじめた。


「いい加減にせいっ!」


 俺は水紀を横に投げる。今はベッドの上なのでそんなに危険はないからできることだ。


「あうっ」


 なんか変な声を出してベッドに放り投げられる水紀。まあ、気にしない。


「ひどいよ、お兄ちゃん」


 非難の声があげられるが気にしない。


「それより、ゲームやるんだったら、情報を集めなきゃな」

「それなら、任せて!」


 あ、復活速い。

水紀は立ち上がると無い胸をめえいっぱい逸らしていってきた。


「任せてって?」

「あたしね、これでもISOのβテストに当選してて、その中でもトッププレイヤーなんだったんだよ」

「へー、それで最近俺のところに来なかったんだ」

「あ、ごめんね。別にお兄ちゃんをないがしろにしていたわけじゃないの。愛しているよ」

「それは、別にいい。愛さなくてもいいから」

「ううー。お兄ちゃんの愛が厳しいよ」

 

俺が拒絶すると、ちょっぴり涙目になる水紀であった。


「それじゃあ、説明してもらおうな」

「あ、うん」


 こうして始まる水紀様のISO初心者講座。


ゲーム説明などは次回。

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