特別挿話『エシュロンの日記』
PV20.000(実際には達してませんが…)突破記念です。
感謝の意を表して、この話をUPさせて頂きますw
UPする度に来て下さる方もいるようでホント感謝ですw
ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします!!
こんにちは。エシュロンです。
エシュロンは、ファルドニアにある龍王城に住む龍族の仔供です。
ちょくせつ会ったことがないので、今日は文章でエシュロンのことについて書きたいと思います。
エシュロンは、デイルダの深い山の中で生まれました。
人翼龍種という龍族で、タマゴはまんまるだったそうです。
おぼえているのは、タマゴから出てくるとき、おかあさんが目の前にいたことです。
おかあさんは、エシュロンを見ると、なんだかとっても残念な顔をしていました。
それで、おかあさんは鼻息をフンと出して、タマゴのカラを付けたまんまのエシュロンを、フカフカの巣から落としたんです。
まだ生まれたばかりのエシュロンは飛べません。それはたかいたかいお山の上からですからね。
エシュロンはピューッて落ちていきました。とってもはやかったような気がします。
そこを偶然、通りがかったエーディン様に、ピョンと助けてもらったです。
それからエシュロンは、エーディン様にお仕えしていますです。
エーディン様は龍王様という、龍族の中では一番偉い方です。
そのエーディン様の背中に乗せてもらって、エシュロンはたくさんのお話を聞きました。
なんでおかあさんがエシュロンを落としたのかを聞くと、ルゲイト様という人が、「………真っ白な生き物は抵抗力が弱い。長生きできないと思ったんだろう」と言ってました。
そういえば、おかあさんはオレンジみたいな色をしてたのに、エシュロンはどうしてか真っ白です。
でも、真っ白だから長生きできないのはどうしてでしょう? でも、巣から落とすことなかったんじゃないかなって思います。でもでも、そのお陰でエーディン様たちに会えたんだから良かったのかもです。
エーディン様はエシュロンを見て、「白龍だなんて珍しいじゃねぇか。見分けやすくていいと思うぜ」と、なんだかほめてくれました。
助けてくれた時、エーディン様はエシュロンと同じで龍の姿をしていました。
でも、地面に降りると、身体がちっちゃくなって、なんでか人間の姿になります。人間になると、赤ちゃんのエシュロンよりも小さいです。
なんで人間になるのかとエシュロンが聞くと、「こっちの方が動きやすいからだな」だそうです。
それで、エシュロンも人間になろうとがんばりました。エーディン様にお仕えするんだから、エーディン様と同じことができなくてはいけません!
がんばって、がんばって、さらにがんばって…気づいたら、エシュロンも人間みたいな形になってました。
喜んで見せに行ったら、エーディン様は目を真ん丸くして、「へえ。ガキのくせにやるな。この形態になるのは、大人の龍でも難しいんだぜ」と言って頭をなでてくれました。
龍の姿だと、頭をなでにくいんですが、この人間の姿だといっぱいなでてもらえます。だから、人間になれて良かったです。エシュロンはとってもうれしかったです。
龍王城には、エーディン様につかえる人間がいます。
変な黒い丸を眼つけたルゲイト様、龍になったエシュロンでもおんぶできるガル様、いつもお尻をフリフリさせてるベロリカ様、そして、バーナル様。
エシュロンは、優しいバーナル様が大好きです。いつも絵本を読んでくれますですし、エシュロンが子供だからってバカにしたりはしません。ちゃんとお話を聞いてくれます。
エーディン様とどっちが好きかと聞かれると困りますけれど、エーディン様はときどき怒ったりするときもあるので………そういう時は、バーナル様が一番です。
でも、エーディン様もやっぱり好きです。だから、どっちもエシュロンはだい、だい、だい好きなんです!
これがエシュロンの紹介です。
でも、それだけじゃ、エシュロンの"お願い"は聞いてもらえないと思うので…。
これから、エシュロンの龍王城での一日を書きます。よーく読んで下さい!
エシュロンの朝は、ニワトリさんが鳴くのと同じです。太陽が昇ると、コケコッコと鳴くので、それでいつも眼がさめます。
起きたら川で顔を洗って、裏庭に行くです。すると、ロベルト様がエサ箱にエシュロンが大好きな干し草を入れてくれます。朝ごはんです。
でも、この時は人間の姿で行ってはいけません。前に人間の姿でいったら、エサ箱の中に落ちて、おじいちゃん龍に間違えて食べられそうになったです。
おじいちゃん龍は歯がないので食べられることはありませんでしたが、ヨダレでベトベトになってしまったです。二度とあんな思いはしたくないです。これは叶えなくてもいいお願いです。
ごはんが終わったら、エシュロンはロベルト様と一緒に龍王アーダン様の部屋の前まで行きます。
龍王アーダン様は、龍王エーディン様のおとうさんです。会ったことはないんですが、とってもとっても偉い方だそうです。
ロベルト様がお祈りをするので、エシュロンもマネします。
「…なにを祈るですか?」
大きなトビラを前にしても、何を言ったらいいかわかりません。
こういうときは、ものしりなロベルト様に聞いてみますです。
「なんでもいいのですよ。龍王アーダン様は、私たち龍族の願いを聞いて下さいます」
「なんでもいいですか? えっと、エシュロンは美味しいものがいっぱい食べたいですぅ。あと、カリファラの蜜がもっと飲みたいですぅ。あとあと、バーナル様の人間の街に買い物に行きたいですね。それでできれば積み木のオモチャが欲しいですぅ。買ってもらえると嬉しいです。それで、その、あの……」
あんまり自分のお祈りばかりしてちゃまずいかと思って、ロベルト様を見ますけど、優しく笑っているだけでした。
「エシュロンさん。アーダン様は、あなたの本当の心の願いを叶えて下さる御方なのですよ…」
「本当の願い?」
エシュロンは考えます。本当の願いってなんなのでしょうか?
食べ物、オモチャ…確かに欲しいですけど、もっと欲しいものがありました。
「エーディン様やバーナル様、そして四龍の皆さんが………いつでも元気でいられますように。皆、エシュロンと笑って楽しく過ごせますように。龍王アーダン様、お願いしますですぅ」
そうお祈りをすると、ロベルト様はコクリと頷いてましたです。
龍王アーダン様の部屋の前には、エシュロンたち以外にも人が来ます。
少し前は、真っ黒い服に怖い顔をしたオジサンが来て、ザシュザシュしてました………あの時はこわくて、エシュロンは近づけなかったのですが、いまじゃ見かけなくなりました。良かったと思いますです。
エシュロンの後にすぐに来る人は、ルゲイト様です。ちょっと前に、龍の像の後ろに隠れて見てたですが、ルゲイト様は頭を下げて、えっと、"モクトウ"…とかいうのをしてました。
お祈りみたいに口には出さないけれど、"最大の礼"なんだとか……ガル様が言ってましたです。
エシュロンには、龍王アーダン様がどういう方なのかよくわかりません。
エーディン様は、人間たちが地上フォリッツアを自分たちの物だって言うことに対して怒ってます。エシュロンはよくわかりませんが、エーディン様が怒ってるならエシュロンも怒りますです。
でも、本当は戦いは良くないとも思うです。もし、みんなが言うとおり、龍王アーダン様がとっても強い方なのなら、なんで出てきていっしょに戦ってくれないのか不思議なんです。
エーディン様にその話をすると怒るので、バーナル様に聞いたら、「アーダン様はご病気で伏せっておいでなのです」と言ってましたです。
でもでも、龍族はビョーキなんかにかからないので不思議です。エシュロンだって、カゼなんてほとんどひきませんし…。
前にベロリカ様に「知ってるぅ? おバカさんは風邪ひかないのよぉ」なんて言ってましたけれど、エシュロンはおバカじゃありません。龍族だからジョーブなんです。
それなのに、龍王アーダン様はビョーキになったっていうのが、エシュロンにはどうしてもわからないことでした………。
お祈りをおえると、エーディン様の修行を見に行きます。
いつもエーディン様の修行はスゴイです。ビッグワームを何十匹もロープで引っぱったりするです。あと崖からゴロゴロ飛び降りたりもするです。とってもイタそうですぅ…。
あとはガル様とパンチやキックし合ったり、バーナル様と波動を撃ち合ったりしますです。
波動は、龍王様や龍族がつかえる力ですが…エシュロンはまだつかえません。『タオ・ブレース』とか出せたら、もっとおやくに立てるですが…ニガテです。アレ、歯がイタくなりそうですぅ。
なんで人間であるバーナル様が波動を使えるのかは、龍王の血がどうのとか言ってましたけど………ムズかしくてわからなかったです。
その後は、ルゲイト様とお勉強します。
ルゲイト様は笑わないし、エシュロンが一番キライな時間です。
「………1足す5は?」
「0です!」
ルゲイト様のマユゲがピクッとうごきます。怒ったときですね、まずいですぅ!
「………エシュロン。一応、理由を聞こう」
「はいです! えっと、からっぽのお皿にリンゴが5きたですよね?」
「………そうだ」
「はいです! ということは、エシュロンが5コ食べれるです。だから、0になっちゃいますですぅ!」
「………これは計算問題だ。食べてはいけない」
「でも、食べれるです! リンゴ5コぐらいなら楽勝ですぅ!!」
「………物理の問題ではない。リンゴの個数、エシュロンの胃袋の容積量、共に関係がない。これは算数だ」
「はいです! でも、リンゴの問題でもあります!!」
「………そうか。そうだな。リンゴの問題…か。フム。そうか。問題文にそうある以上は、確かにリンゴの問題だな。その発想はなかった」
ルゲイト様はアゴに手をやって考えてるです。
よし。今日も算数はクリアですね。ホッとするです!
次は、ベロリカ様のとこです。ビヨー学とかいうのをやりますです。
「いい。エシュロン。男なんて生き物はね、しょせんは女を見た目で判断して生きてるのよ。見た目が8だとしたら、残りは…」
「また"さんすう"ですか?」
「算数? まあ、そうね。残りの2はなんだと思う?」
「えっと、残りは………声の大きさ、とかですか!?」
「ブッブー! は・ず・れ! 残りは"積極的アプローチ"よ。"性格"だなんて言うヤツもいるけど、だいたいそんなの建前。紳士ぶってるそういうヤツに限って、顔とか胸とか足とか見てんだからさ。男ってのはそういう生き物よ。だから、声をかけられるのを待つ女より、声かけてくる女が好かれるのよ。でも、これも見た目の8割にかかってくるからね…だから、自分磨きが必要なワケよ。わかるぅ?」
「じぶんみがき…ですかぁ。なんか、とってもイタそうです」
ベロリカ様が目にバチンバチンやってるのとか………かなり痛そうに見えますです。
「アーッハッハ! 痛くなんかないわよん。お化粧だもの。ほら、アンタも顔貸しな。ガキのうちに、こういうのは覚えておくと役立つわよー」
そんなことを言って、エシュロンの顔にベタベタと触れてくるです…。うげ、粉っぽいですぅ。
「ガキだからしょうがないんだろうけどさ。ホント、アンタ、寸胴体型よねぇ~」
ん? 目をつむってるうちに、なんか服まで脱がされてるですけど…。
「人間に化ける時、もっとなんとかならないわけ? 胸を出すとか、腰をくびれさせるとか…」
「うう、そんなの意識してやってないですぅ…」
「ふーん。意外と使えないのねぇー。まあいいわ。さ、出来上がり!」
「え? もう終わったですか……」
「ええ。さ、エーディン様に見せてらっしゃい。ほら、これも持って」
「はあ。解ったですぅ。行ってくるですぅ……」
で、エーディン様に見せにいったら、「なんだそりゃ。人間の農夫か?」と言われたです。
ルゲイト様からは、「………いや、ほっかむりに、鼻割り箸、ザルと来れば、"どじょうすくい"だろうな。宴会芸でも習っていたのか?」と言われたです。
………ベロリカ様、ゆるすまじですぅ!!!
あとで、クツの中に赤い絵の具いれてやるですぅッ!!!
あ。ここも叶えてくれなくていいところですからね! まちがえないでください!!
気を取り直して、午後にはガル様のとこです。
ガル様は大きなイノシシを倒して、それを焼いている最中でした。
「む? エシュロンか。飯時にピッタリ来おったな」
ガル様はニッと笑って、ちょうど焼けた部分をくれるです!
「はいです。ガル様の昼食が一番おいしいです!」
「ヌハハッ! いいぞ、たんまり食うがいい。足りなければ……」
ガル様が焼いているイノシシを見て固まります…。
あ、やっちまったです。つい龍になって、ぜーんぶ食べちゃったですぅ。
「……うむぅ。エシュロンよ。飯時は、人間の姿ではおれぬのか?」
『あぅー。ごめんなさいです。お腹いっぱい食べるには……こっちの方が』
「まあ良い。また獲ってくればいいだけのことだ。それに、まだ食べるものはあるしな」
ガル様はそう言って笑うです。ガル様は顔は怖いですけど、怒ったりしないから好きですぅ。
『………また、食べにきてもいいですか?』
「うむ。だが、今度は拙者の分は残してもらいたいものだな」
『はい! 気を付けるです!』
エシュロンは大きく頷きます。よーし、ちょっと足りない分は下に落ちてたのを食べるですぅ!
「ぬぅ! その材料は……」
まーた、やっちまったようです。
「ううむ。雑炊にでもしようと…山の幸を持ってきておったのだがな」
『ごめんなさいですぅ!!』
「ヌハハ。ま、まあ良い…」
そう言ったガル様の腹の虫がグゥーと鳴ったです。
ホントに、ホントに悪いことをしてしまったです………。
ここも、叶えなくていいと思うです…。はい。
あ、でもイノシシはおいしかったからまた食べたいですぅ!
お腹いっぱいになったら、バーナル様のところに行くです。
バーナル様は、ヒザまくらをして、優しく頭をなでながら、絵本を読んでくれます。
「………神王ラクナ・クラナは答えました。『光は神界セインラナスから充分に地上に与えられています。何もかもを欲しがってはいけません。我々は地上に与えるために備えているのです』と。龍の王は怒って言いました。『そんなことは関係がない! いま欲しいのだ! だから、手にいれるのだ!』 こうして、龍の王は多くの龍を従え、神界セインラナスに襲いかかりました」
「……アーダン様は悪い龍なんですか? 神にテキタイしたんですか?」
眠くなるのをこらえて、エシュロンはたずねます。
バーナル様とのおしゃべりは楽しいのです。だから、寝るわけには……
「エシュロン。貴女はどう考えますか? どう思いますか?」
「……エシュロンは、わからないですぅ。でも、エーディン様は……悪い方じゃないですぅ。だから、アーダン様も………悪いとは思えないですぅ」
「ええ。そうですね。かつてアーダン様はこう仰せになりました。『己で考えよ。真実は己が眼のみが映す』と。…アーダン様の決断は、人と決して争わぬこと。それは神とも争わぬことを意味します」
「むずかしすぎて…わからないですぅ。アーダン様は戦いたくないのに戦ったんですか…?」
「はい。それはエーディン様も同じこと…」
「じゃあ、なんで………エーディン様は戦って……る……で…すか」
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バーナルの部屋に、エーディンが入って来る。
「…寝たのか?」
寝息をたてているエシュロンを見やって尋ねると、バーナルは口元に人差し指を当てた。
そして彼女を起こさぬように、静かに持っている本をたたんで置く。
「四龍が誰一人でかけず、久しぶりに龍王城にいたのです。だから、ちょっとはしゃぎすぎたんでしょう。お夕食まで、このまま寝させてあげましょう」
静かにそう言うのに、エーディンは頷く。
「ん? そういや、朝から気になってたんだが……こいつ、何を大事に持ってんだ?」
エシュロンの大きなポケットに、何かがはみ出ているのを見つけて、それをスッと引き抜いた。
「…これは?」
「ああ。それは……。前に、プレゼントしてあげた日記帳じゃありませんか?」
子供っぽいイラストの表紙。確かに人間の言葉で"日記"と読めた。
誕生日になんでもいいから欲しいとねだるエシュロンに、ルゲイトが人間の街で買ってきたものだった。
「なんでこんなものを持ち歩いてんだ?」
エーディンが無造作にめくると、今日あった出来事がイラストと共に出てくる。
「…読めるか?」
「………いえ」
クレヨンで文章らしきものが書いてあるのだが、エーディンにもバーナルにもそれは判読不明だった。
「最初のページは……これは、アーダン様と読めませんか?」
父親の名前がでたことに、エーディンは一瞬だけ不快そうな顔をするが、それでも怒ることはなかった。
「親父の名前だと…。ああ。確かにな。ええっと、"アーダン様へのお願い"か? なんだこりゃ。日記ってのは、日常の出来事を書くだけなんじゃねぇのか?」
人間の風習にはそれほど詳しくないエーディンが問う。
「ええ。何気ない日常…ですね。絵を見る限りでも、出来事を書いているようですが……。でも、エシュロンのお願いですか。なるほど…。この娘の気持ち、私にはなんとなく解る気がします」
「あ? 解るって何がだ?」
「きっと…。この"何気ない日常そのもの"を、アーダン様にお願いするつもりで書いたのではないでしょうか」
バーナルが優しく言うのに、エーディンはフウと息を吐いて肩をすくめる。
「何気ない日常をお願いね…。なんだか地味な願いだな」
「ええ。でも、この当たり前の日常を失いたくないのでしょう。この娘にとっては、それが無くなってしまうのが怖いのではないでしょうか…」
バーナルはそう言って、エシュロンの頭にそっと触れた。
「だから、それを親父に、か。ハン。だが、これじゃあ、何を書いてあるか殆ど読めねぇぜ」
エシュロンの字は、適当な落書きよりも下手くそだった。本人が読めるのかどうかすら怪しい文字だ。いや、文字という形すら為していないとも言える。
「ええ。そうですね。でも、この娘が一生懸命に書いたこと…。そして、その想いは本物ですよ」
エーディンはエシュロンの顔を見やって、フッと柔らかく笑う。
「そうだな…」
そうとだけ言って、二人はしばらく無言のままに、エシュロンの幸福そうな寝顔にしばらく見入っていたのだった……………。




