7話 龍王エーディンからの宣戦布告
セリクが生贄に捧げられるちょうど一ヶ月前、龍王エーディンによる人類への宣戦布告が行われた……。
ガーネット領南方にある帝国軍の駐屯所。ファルドニア領に近いこともあり、屈強な精鋭が揃えられていた。彼らは日々辛い訓練に明け暮れ、いつでも龍族と戦う覚悟ができている猛者たちばかりであった。
ある穏やかな陽気の昼下がり。のどかな雰囲気とは対照的に、荒々しい剣檄と掛け声が響き渡っていた。いつものように砦の中庭で、一〇〇名を越える兵士たちが二人一組で訓練をしているのだ。
若兵たちが気合いを発しながら斬り結び、指導する老兵が喝を入れる。そんな中、いきなり辺りが真っ暗になる。何事かと兵士たちがいっせいに上を見やった。
太陽を隠すような巨大な影が上空を横切っていた。それは、旋回しつつ咆吼をあげる!
「りゅ、龍だッ!! 敵襲! 敵襲だ!!!」
尖塔で見張りをしていた兵士が、大きな悲鳴をあげた。次の瞬間、龍が尖塔をかすめて飛来する。驚いた兵士は、バランスを崩して真っ逆さまに落ちてしまった。グシャッ! という気味の悪い音が耳に残った。
落ちて潰れた仲間を目にして、かつてない非常事態に兵士たちに動揺がはしる。
「グォオオオオオオーン!!!!!!」
腹の底に響く重低音が響き渡り、旋回していた龍は急降下してくる。
二本の太い両腕で、砦の尖塔に ガシッ! と、しがみついた。帝国旗が振り回された尾によって無残にも叩き折られる。
それは鮮やかな蒼い鱗を持つ龍だった。黄色い目が輝き、剣山のような無数の歯列の間から、長い舌を振るわせて再び怒号する。
大きく開いた口から青白い光が迸り、光弾を放つ! それが中庭の石壁を粉々に吹き飛ばした!
「あ、あれはなんだ!?」
「普通の龍じゃない! あんなデカイのは見たことがないぞ!」
「まさか。ありえぬ…。龍王アーダン、か」
一人の歴戦の老兵が震えながらそう呟く。その言葉に兵士たちは真っ青になった。ただの龍ではなく、よりによって龍族の王かと。
龍王という存在の恐ろしさは聞いて知っていたが、実際に目にするのは誰もが初めてだったのだ。
「ガォオオオオオオオーッ!!!!」
龍は蛇のような下半身をブンッ! と振り、勢いよく尖塔の下を打ち砕く。勢いよく飛び散る石に当たって、数人の兵士たちがその犠牲となった。
「う、撃て!! 撃ち落とせ!!」
慌てて隊列を組み、兵士たちが弓を一斉に放つ!
龍は空高く上昇して、それらを楽々とかわしてしまった。
「お、おのれ! 帝国に電報を打て!! 至急、救援要請だ!! ここで叩くぞ! 絶対に村や町に行かせてはならん!!」
隊長が指示を出し、慌ただしく兵士たちが武器を掻き集めて集結する。
龍は砦の周りを大きく飛び回り、再び急降下して、今度は中庭の真ん中に降り立った。
ドッシーンッ!
土埃とともに大きな揺れが起こる!兵士たちが緊張に身をこわばらせた。
龍はまるで人間のように腕を組み、上半身を反らして周囲を睨み付ける。その大きさたるや、人間の十倍はあるだろうか。一番高い塔とほぼ同じ高さであった。
しばらくして、龍の背から何人かが飛び降りてくる。それが人間の姿をしていたので、兵士たちは目を丸くした。
「……四龍、ルゲイト・ガルバン」
最初に飛び降りた人物、ロングコートをまとったサングラスの男が呟く。
「同じく!! 四龍が一人、ガル・ドラニック!!」
大柄な体格、そして巨大な刀をもった男が名乗る。
「アハー! ベロニカ・アンニス参上って感じぃ!」
露出度の高い、妖艶な女性がウインクした。
「…四龍バーナル」
中空をフワフワ漂う、全身がターバンのような薄布でくるまれたような少女が名乗る。
彼らの挙動に目を見張り、兵士たちは油断なく武器を構える。
「聞け! 人間どもよ!! 俺は地上フォリッツアの統治者たる龍王だ!!」
驚いたことに、龍は人間の解る言葉でそう叫ぶ。
「やはり龍王かッ」と、老兵ががくりと膝をついた。それを横目にして、隊長はゴクリと息を呑む。
「龍王が、人間が支配するこのガーネット領地に何用かッ?」
勇気を振り絞り、隊長は龍王に向かって問う。彼には大総統や将軍に代わり、この駐屯地を守る義務があった。その責任感が彼を奮い立たせる。
「人間が支配、だと?」
龍王はフンッと鼻を鳴らす。その勢いが凄く、土埃が舞い、ロングコートの男の髪が少し乱れた。
「俺がわざわざやってきた理由は一つ。ウジャウジャと増え蔓延する人間共の支配とやらから、この地上を今一度、龍王の手に戻さんがために、だ!」
それを聞いて、誰の顔にもひどく驚きが生じる。
「地上の支配を取り戻す? 何を勝手なことを……」
「俺はお願いに来ているんじゃねぇ。素直に明け渡せとも言わねぇ…。納得できなければ徹底的に戦い合うだけのことだ。こいつは俺からの宣戦布告ってやつだ!」
隊長の身体により強い緊張が走る。このような話を、果たして自分のような立場でしていていいのかという不安を覚えた。
「…か、神々に敗れた龍王が、この神国ガーネットに再び敵対するのか!?」
「あん? 神々に敗れた……だと?」
小馬鹿にしたように、龍王は唾を吐き棄てる。それから組んでいた両腕を大きく広げたかと思いきや、全身が青白く光り輝き、その姿がみるみる小さくなっていく。そして、一人の小柄な男の姿となった。
「神に敗れたってのは俺の親父の話だ。俺には関係ねぇ!! 俺の名は龍王エーディン! アーダンの息子にして、龍王を継承する者だ!」
「龍王…の息子? エーディンだと?」
「おうよ。…んんッ? どうにも納得してねぇって顔だな?」
「何を言っている? 貴様の話の何を納得しろと言うんだ?」
緊張した面持ちの隊長を前に、エーディンはかぶりを振って笑う。初めから相手が納得するかどうかなどどうでもよかったのだ。
「よーし。俺と、俺の親衛隊のご挨拶を兼ねてだ。ま、とりあえず、手前ら全員皆殺しといくか!」
尊大な物言いに、兵士たちはギリッと歯ぎしりする。自分たちはいざ龍族と戦うために訓練してきたのだ。逃げ出すものなど一人もいない。エーディンの挑発は、彼らの戦意を奮い起こす結果となった。
「いまさらノコノコと現れてからに舐めおって!」
「鍛え上げられたガーネットの神兵を愚弄するか!」
「神々に代わり、返り討ちにしてくれる!」
エーディンが巨大な龍の姿でなくなったことで、兵士たちから恐れが消えていた。目の前の小男に負ける気など、誰もしなかったからだ。
「宣戦布告を受けてくれて感謝するぜぇ。お礼に死ぬほどいいものを見せてやるッ!!」
嬉しそうにエーディンはニヤリと笑い、四龍がそれぞれ構える……。
それから小一時間、砦の中で血飛沫の飛び交う激しい戦いが行われることとなる。いや、それは戦いとは呼ぶのは違うかもしれない。それは、龍王エーディンと四龍による一方的な虐殺というのが正しいのだろう。それほどまでに龍王は圧倒的に強かったのだ。
龍すら倒すはずの猛者ばかりだったというのに、四龍にかすり傷すらつけることも敵わず、無念のうちに散ったのである……。
「地上フォリッツアを! 今一度、俺の手に!! イーッヒッヒッヒッ!!!!!」
敵の屍の山を踏みつけ、敵の血にまみれ、エーディンの恍惚とした高笑いは天にまで響いた。
一人、生き残ってしまった老兵は剣を落とし、ガクガクと震えながらエーディンの顔を見やる。
「手前は、命の限り方々《ほうぼう》を駆け回れ!! 地の果てまでに伝えろ! この血の惨劇をもってして、龍王が再び支配者に戻ると!! そして全ての人間の命は、この俺が手綱を握っているのだということを知らしめろ!!」
強大な力を持つ龍王エーディン、それに次ぐ、人間とは思えないほどの強さを持つ四龍。
その噂を聞いた人々は口々に囁き合い、神国ガーネット帝国は震撼したのだった…………。
―――
龍王の脅威は、ガーネット南方最果てに位置するレノバ村にも伝わっていた。駐屯地はレノバ村からそう遠くはなかったのだが、帝国からの噂が流れて来たのは、三週間ほどの時間がかかってのことである。
村長の家では、村の男衆が集まり、重苦しい顔を向かい合わせていた。
「…村長様。どうするんだべか? ここは龍王の住処ファルドニアに一番近い村だぞ」
「んだ。龍王に最初に狙われるのはここだべ」
男たちの問いに、長い眉毛をピクリと動かして、村長は小さく頷く。
「……そうさな。実に弱ったことじゃ。この村に戦える者はおらん。唯一の剣士であったエリック・ランドルでもいてくれたら良かったのにのう」
村長の言葉に、誰もが溜息をつく。
「ガーネット帝国はなんて言ってるだ? 帝国から兵士を派遣してもらえばいいべ!」
一人の気弱そうな男が立ち上がって言う。
村長は首をゴキリと一つ鳴らし、指先をクイッと動かした。すると、その息子が立ち上がって、棚から手紙を取り出して持ってくる。
「これが帝国からの返事じゃ…」
「『軍部は龍王討伐のための再編成を行っており、全部隊を帝国に集結させている。よって、それぞれの街・村は各々で自警団を結成させ、防備に当たるように務められたし。現在、ダフネス大総統が神々との交信を試みておられる。啓示が下されるまでの忍耐である。健闘されたし。以上』」
村長の息子が読み上げると、落胆の声があちらこちらから漏れる。
「ってこたぁ、帝国はワシらを見捨てるって言うてんのか?」
「なにが自警団だ! 高い税だけ払わせておいて、いざっちゅう時の危機には知らん顔か! あんまりでねぇか!」
憤る村人たちが、ここぞとばかりに不満をぶちまける。不満は不満を呼び、同調し拡大していく。そして、話題は長く続く干ばつによる問題になどまで飛び火した。それを皮切りに、つまらぬ近所同士の揉め事まで飛び出す始末だ。因果関係などもはや関係はなかった。ただ不満のはけ口を求め、より各々の口調が荒くなっていく。これはもはや話し合いなどではなかった。
はけ口を見出せない不満が飽和してしまうと、それは怒りを呼び、その怒りがさらなる不満を生み出す悪循環を作り上げていた。殴り合いになりそうになると、誰かか止めはする。だが、誰も解決策などは口にしない。感情だけで言いたい事を喚き立てるだけなのだ。
普段から抱いていた飢餓への恐怖と、龍王への恐怖が混じり合い、ひどく混沌とした空気が場を占めていく。
そのように騒ぐ会衆だったが、それでも村長は顔色一つ変えない。キセルを口にくわえて弄びながら、好き勝手なことを言う一人一人の顔をただ見回していた。
村長が一言も発しないのを見て、村人たちの発言が減っていく。
やがて沈黙が訪れた。それを待っていたかのように、村長がカンッとキセルで側にあったツボを叩いた。
「……何をここで言おうが変わりゃせん。とどのつまりは、ワシらで何とかするしかないということじゃ」
誰もが分かりきっていた結論だった。愚痴を言い合っていても結末は同じなのである。
達観した村長の言葉に、皆が落胆して肩を落とした。
「……なあ、村長様。そもそも龍王はなんで怒っているんだべか? なんでワシらを滅ぼそうとしちょるんかなぁ?」
間抜けな顔をした男がそう呟く。その隣にいた男が、ゴチンとその男の頭を殴りつけた。
「アホンダラ! そんなこと解るわけなかっぺ!」
「…なぜ、怒っておるか、か」
村長は長い顎髭をさすりながら考える。
「お、オラが思うにだ! きっと腹が減ってるからだべよ!」
間抜けな顔をした男は、痛む頭をさすりながらも自信満々に答える。
「はあ?」
「何を言うちょるんだ!? そんなアホな理由で…」
ザワザワと騒ぎ立つ村人を見て、村長はニヤリと笑う。
「いや、待て。それはあるかものぅ……」
その意外な発言に、誰もが目を開いた。よもや村長が、このような話を肯定するとは誰も思わなかったのだ。
「…そうじゃ。生贄じゃよ」
物騒な言葉を聞いて、皆が緊張した顔で互いを見回す。
「い、イケニエ? お、オラ、イヤだぞ! オラは喰われとうねぇだ!」
間抜け顔の男が慌て出した。それを見て、村長はやれやれと首を横に振る。
「お前じゃない。ちと考えれば解ることだろうが。ほれ、一人おったじゃないか。厄介な“悪魔の子”がのぅ。この村に起こる災厄もあの子供のせいとは思わぬか? 殺せぬなら、喰らってもらうのがいいじゃろ」
そこまで聞いて、ようやく皆が村長の意図するところに気づく。男たちは嫌な笑みを浮かべてニタリと笑いあった……。
村からかなり外れた川沿いにある一軒屋。まず誰も訪れないため、歩道は雑草に覆われていて、庭もかなり荒れ果てていた。まるで廃屋のような建物は、屋根は崩れおち、外壁は薄汚れ、窓はペンキで塗り潰されている。
男たちは怖い顔つきで、それぞれ鎌や鍬を手に持ち、村長を先頭にして戸口の前に立った。
「おい! セリク!! 出てくるだ!!」
「はよ出てこんと、火つけるど!!」
男たちが叫び、石を投げつける。その一つが窓に当たってバリンッと割れた。
間もなくして、ガチャリと扉が開く。そして、恐る恐ると、一人の少年……セリクが顔だけ出す。その表情は、不安と恐怖に強張っていた。だが、その紅い眼の輝きだけはいつもの通りだ。
まるで血を思わせるかのような眼を見て、男たちは息を呑み込み、怖気て半歩後退る。村長はわずかに目を細めた。
「……大丈夫じゃ。出てくるがええ」
息巻いていた男たちを制し、村長は優しい笑顔を浮かべて手招きした。セリクはコクリと頷いて出てくる。
土に汚れた小汚い少年。手足は細く、ボロ切れをまとっていた。足には鎖がつけられ、家の中にそれが繋がっている。家の中の柱にそれが繋がっていることは、繋げるよう指示を出した村長にはよく解っていることだった。
「村長……」
一人の男が口を開こうとしたが、村長はジト目でそれを止めさせた。そして、さっきの笑顔に戻って、セリクを上から下まで値踏みするように見やる。
「しばらくぶりじゃな。セリク。大きゅうなったな……。はて、幾つになったかのう?」
「……十四、です」
「そうか……。ロバートとマティナが死んでから、もうそんなになるか」
父と母の名をいわれ、セリクは切なそうな顔をする。
「……父母のないお前を、この村においてやり、家を与え、食べ物も与えてきた。のう?」
「ええ。村長様……。感謝しています」
セリクが深々と頭を下げる。その様をみて、男たちの幾人かがブッと吹き出した。
「それでな、今回、ワシらが来たのはな。フム。なんじゃ……。そろそろ、その恩義を返してもらえないかと思ってのことなんじゃよ」
「恩義を返す……」
村長の言葉に、セリクは小首を傾げる。恩義を返すということの意味を考えたのだ。
「俺、村のためなら……野良仕事でも、水汲みでも……なんでもやります。ただ、これが…」
セリクは足首の枷を見やった。これでは何の仕事もできない。家の周囲を出歩く程度しか移動できないのだ。
「野良仕事? 水汲み? ……いやいや、セリク。そんなことはせんでいい。それよか簡単な仕事じゃよ」
「簡単な仕事?」
セリクは少し考える。水汲みなどより簡単な仕事があるだろうかと。
「……そう。至極簡単じゃて。セリクはなーんもせんでええんじゃ」
「なにも? そんな仕事があるんですか?」
「ああ、ああ。そうとも。お前にしかできない仕事なんじゃよ」
「俺、やります!」
愚鈍なまでに信頼し、どこまでも真っ直ぐな視線を向けてくるセリクを見て、村長は内心同情を覚える。しかし、それは優しさからきているのではなく、ただ自分よりも劣る存在への尊大な憐れみに過ぎなかった。
「そうか。ありがとうな。なぁに本当に簡単じゃて。ただな、龍王アーダン様に食われてくれるだけでいいんじゃからな」
村長が残酷に笑う。一瞬、唖然とした顔をしたセリクだったが、その顔はどんどんと青ざめていく。
「食われるって……食べられること……? え、俺…食べられる、って。龍王…に?」
泣きそうな顔のセリクを見て、村長はニタニタ笑ったまま、背を向けて歩き出した。それとは反対方向に、セリクを包囲するように男たちが進み出ていく。
「イヤ、イヤだ……そんな! 俺は!! 村長様!!」
「やれ。あんま傷をつけんようにな」
村長の指示で、男たちが持っている武器を振り上げてセリクへと近づいていく……。
「なにやってるの!!?」
急に響いた大きな声に驚き、男たちが振り返った。
そこには一人の少女が、息を切らせて駆けてきた姿があった。男たちの背に向かって叫んだのである。
後からきた年配の女性に腕を掴まれたが、少女はそれを乱暴に振り払う。
「ここに来てはいかんと言うておったじゃろ」
村長は溜息をつき、静かにそう言った。
「村長様! セリクを、セリクをどうする気!? なんで、こんなことを!?」
「ふむ。セリクには龍王の生贄になってもらう」
「なんで!? どうしてセリクが!!!?」
再び叫んで、走り出そうとする少女を、村の女たちが集まってきて抑えた。それでも、少女は声を張り続ける。
「……ふん。セリクは身寄りがないから、ちょうどいいのじゃよ。誰も嘆き悲しむ者はおらんしな」
冷たく言い放つ村長の言葉に、少女は真っ赤になって憤った。
「私も身内はいません! お兄ちゃんも行方不明だし!! セリクが生贄になるんだったら、私だっていいはずです! 私が生贄になります!!」
一瞬だけ虚を突かれた顔をした村長が、カッと眼を見開き、眉をピクピクと動かす。そして、持っていた杖でドンと強く地面を突いた。
「ならん!! それだけは絶対にならん!!! 村人は誰一人とて殺させぬ!!」
その言葉に、少女は唖然とした顔をする。プルプルと震える村長は、「はやくしろ!」と男たちを焚きつけた。
怒鳴り声、殴りつける音が響く。最初、悲鳴にも似た声が上がっていたが、それは徐々に弱まり、次第に何も聞こえなくなっていった……。
「やめて! やめてよッ!! 離して、離してってばッ!!! セリクゥーーッ!!」
少女が泣き叫ぶ。女たちは辛辣な顔をしながらも、暴れる少女をその場に全力で押しとどめるしかできなかったのだった…………。