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RUIN【破滅】  作者: シギ
一章 紅い眼の少年
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30話 “寄生虫”殲滅作戦(4) 

 時は数十分ほど遡る……


 地下水路に隠されていた貯蔵庫。

 そこで、セリクとフェーナ、颯風団のラウカン、黄龍バイゼムが対峙していた。


「龍王エーディンの手下か!?」


 両腕を組み、バイゼムはセリクを見やる。


「いかにも!! だがな、こっちは人間の言葉で語らいたいなんざ思っちゃいねぇんだ! さっさと巣の在処を教えるがいい!」


 ブンッと尾を振り、威嚇するかのようにバイゼムが唸ると、アサシンたちを始末し終えたビッグワームたちがノソノトとその周囲に集まってくる。


「じょ、冗談でないでヤンス! 龍がでてくるだなんて聞いてないでゲスよ!!」


 ラウカンはクルッと背を向け、その場から逃走を試みた。


「人間は一匹も逃すつもりはないぜ! あーらよ! 『潜龍地爆《せんりゅうちばく》!!』」


 バイゼムが両手に波動を溜め、両方の拳を叩きつけるようにして爆発させる! バイゼムを中心に爆風が生じた!!


「こ、これはエーディンの技ッ!?」


「『イバンの聖盾!!』」


 フェーナが白金の膜で自分たちを覆う。もう完全に自分の意志で扱えるのだ。

 膜が波動による攻撃を防ぐ! 全身を覆うのでかなり役立つ防御手段である。


「フゲェッ!!」


 無数に飛んでくる波動を、“豪楼核”で撃ち返すことなどできるはずもなく、もろにダメージを受けて倒れ込む。

 そして、同時に破壊された天井が砕け落ち、ラウカンはその下敷きになってしまった。


「あ、あんな攻撃……こんな狭い場所でどうすれば」


 セリクは持った剣に力を込める。

 ラウカンとアサシンたちを相手にするか、バイゼムとビッグワームたちを相手にするのか……ただ相手が変わったというだけで、どちらも厳しい戦いになるに変わりない。


「セリク……ごめん。私、なんかちょっと変」


 フェーナは真っ青な顔をしていた。『イバンの聖盾』を発動するのに思った以上に消耗するのだろう。命を削るのだから、あまりフェーナに防御を頼るわけにもいかない。

 デュガンならどう戦うだろう。シャインだったら、マトリックスだったら……セリクは必死で考えるが、この圧倒的な不利な状況を打開する術は見いだせそうになかった。


「諦めろ! そして後悔しろッ!! その剣では、俺の鱗に傷一つつけられんわッ! それどころか、ビッグワームに斬りつけただけで折れてしまうだろがなぁ!!」


 以前、セリクがビッグワームを斬り裂いたことなど知らないバイゼムがそんなことを言う。


「……フェーナ。大丈夫?」


 小声でセリクが問う。


「え? う、うん。まだいけると思う。盾はあと一回か二回ぐらいなら平気よ。治療もできるわ」


 明らかに無理をして言っているのが解る。


「……いい、よく聞いて。俺が合図したら、来た道を全力で走って逃げるんだ」


「え?」


「このままじゃやられる。颯風団相手ならともかく、ドラゴンとモンスターの集団が相手じゃ……俺一人じゃ何ともできない」


「う、うん。そうだよね。マトリックスさんたちを呼んできたほうがいいよね」


「ここは俺が食い止める。だから、走り出したら絶対に振り返っちゃダメだよ」


 フェーナが目を丸くする。そして、セリクの腕をギュッと掴んだ。


「ダメよ! さっきみたいな攻撃されたら……セリクでも避けられっこないじゃない! 逃げるなら一緒だよ!」


「一緒に逃げたら、後ろから集中攻撃される。誰かが食い止めないと。それは戦える俺の役目だ」


「そんな……」


「大丈夫さ。俺は絶対に死なないから……。フェーナは早くマトリックスさんたちを呼んできてくれ」


 安心させるために、セリクは小さく微笑む。


「……話は終わったか? 素直に自分たちの住処まで案内するか、それとも最期まで抵抗するのか? このバイゼム様はどちらでも受けてやろう」


 バイゼムは余裕を見せて待っていた。敵にあえて時間を与えることで、自分が知恵ある龍として振る舞うのに悦を覚えていたのだ。それは兄のやり方を真似てのことであった。

 セリクは帝都まで案内して時間稼ぎすることも考えたが、いまイクセスの作戦が実行されている最中だ。帝都の中に龍族や魔物を入れたとすれば計画に支障がでるであろうし、ましてや民間人を犠牲にするかもしれない。それを考えると、その選択は選べるものではなかった。


「ああ。俺は最後まで戦う!!」


 いきなり『衝遠斬』を放つ! 腕はだるく、動かしただけで千切れてしまいそうだったが、そんなことに構ってはいられなかった。


「なに!? これは!?」


 バイゼムは意表を突かれて驚くが、サッと身をそらしてかわす。

 三日月の衝撃はその後ろにいたビッグワームの頭を叩き潰した。ひどい絶叫をあげてズシンッと倒れ込む。


「こ、これはデュガンの技ではないか……」


 バイゼムは、死んだビッグワームを見てワナワナと震える。それは怒りとも恐れともとれた。


「フェーナ、行け!」


「セリク!」


 フェーナはまだ迷っているようで、オロオロとしていた。


「なにしているの! さっさと行けよ!」


 セリクが怒鳴ると、フェーナは泣きそうな顔をしながらも走り出した。この場にいても何もできないのが解ったのだ。だったら、まだ助けを求めに行った方が正しいと言えるだろう。


「……く、クソが! 雌を逃がしたのか。ふ、ふふ。な、なかなかの勇敢なことだな。人間は反吐がでるほど嫌いだが、誇りを守る者は嫌いではない! 敬意を払い、この場は雌を見逃してやるぞ!」


 我に返ったバイゼムがそんな事を言う。それはまだ余裕を見せんとしての無駄ともとれる行為だった。

 だが、セリクは安心などしていなかった。この場は見逃してやるということは、やがてはフェーナを殺すということなのだ。そんなことはさせてなるものかと、セリクはさらに全身の戦気を高めた!


「……レイド。俺が救済者っていうなら、どうすればいいのか教えてくれよ」

 

 絶体絶命的な状況で、セリクはあの不思議な少年レイドの事を思い浮かべていた。呼びかければ、彼が力を貸してくれるような気がしたのだ……。



 脳裏にレイドの姿が浮かぶ。

 彼は驚きの表情を浮かべ、やがてその顔が白色に覆われた。


『時は満ち足りた…。我が力を受けよ』


 聞こえた声はレイドのものではなかった。

 

 暗闇にぷっかりと浮かぶ白い仮面。仮面の後ろから眩い光が満ち、その後光の中に沢山の白い手を広げていく。それが花弁のように円形に広がったかと思うと、ゆっくりと周囲を旋回しだした。レイドであったものは、人とはかけ離れたそんな姿となってしまったのだ……。

 異形ではあったが、それが人知の及ばぬ、何か大いなる存在だということだけはセリクにも感覚的に解った。


 ゴォーン! ゴォーン!!


 遠く…遙か遠くで、鐘の音が鳴り響く!


『破滅なる紅! 愛しき我が子よ! 往け!! 神敵を討ち滅ぼし! 神界セインラナスと地上フォリッツアに栄光と平安をもたらせ!!!!』


 眼を見開き、白仮面が叫ぶ!


『いま、破滅の扉は開かれた!!!』



 セリクの身体から強烈な紅い光が放たれる!!

 今まで放っていた戦気とは比べものにならない。松明や貯蔵庫の照明よりも明るく、周囲を紅く染めあげる!


「な、なにごとか!? 人間がこのような膨大なエネルギーを発することなど……」


 バイゼムはまぶしそうに目を覆う。

 目は強烈な真紅を帯び、まるで流星が飛び交うが如く虹採の中を光が激しく動き回る! 

 セリクは超絶とした顔つきとなっていた。そこに彼の意志はまるで見られない。


「……『紅絶我他《ド・ル・アエ》』」

 

 聞きなれない言葉を呟くと、紅い光が規則正しく集まりだし、樹木の枝のような形状へとなっていく。そして、各枝の先端に無数の手の平を咲かせた!


「なんだ? この力はなんなのだ!? こんなものは見たことも、聞いたことも……」 


 いくつもの紅い手が蠢き、バイゼムの身体に狙いを定めて飛んでいく!! そして、その両手、両脚と翼や尾に至るまでを抑えつけた!!

 そしてバイゼムだけではなく、ビッグワームたちも、上から紅い手にグッと圧しつけられる!


「グオッ! う、動けんだと! こ、この俺が!? 黄龍バイゼムとあろう者が!!」


 硬い地盤を掘り進めるぐらいなのだ。バイゼムは己の腕力にも絶対の自信を持っていた。脆弱な人間が束になってかかってきても、捻り倒すなんて造作もないはずだった。

 それなのにも関わらず、自分の半分にも満たない大きさの人間、それも子供に動きを封じられるというのは実に屈辱であった。


「カアッ!!」


 苦し紛れに口から波動弾を撃ち出す! が、セリクは避けることもせず、手でパチンと払うだけで簡単に消し飛ばす。


「……龍族よ。滅びよ。神々と人間に刃向かう者どもよ」


 心ここに非ずのセリクが呟き、何かを握りつぶすような仕草をする。その瞬間、一斉に紅い手がグッと閉じられた!


「ガアアアッ!」


 メキメキッとバイゼムの身が軋む! 鱗がひしゃげ、肉がねじられ、骨が砕けていく!

 ビッグワームに至っては、グヂャッと潰れた音がしたかと思うと、中身の臓物をぶちまけて死んでいく。辺りに生臭い血と汚物の臭いが漂った。


「き、貴様ァッ!!」

 

 バイゼムだけは、必死で抵抗している。全身に力をいれ、その握り潰しを堪えていた。

 潰れぬほど頑強なのだと見て、セリクは剣を構える。戦気とは違う、異質な力が全身から刀身に流れる。


「……討ち滅ぼせ、神敵を」


 予備動作はなかった。少なくともバイゼムには見えなかった。気づいた時には、セリクはバイゼムの鼻先に移動し終わっていた。

 それはとても剣技とは呼べぬものだった。鋭い刃をただ思うがまま振る。

 身動きのとれぬまま、一方的に斬撃を浴びせられ、拘束されたバイゼムにはもはやどうもしようもない状況であった。

 何度か攻撃した後、セリクは自身の剣を見やる。どうにも、その硬すぎる鱗や皮膚によって致命傷を与えられぬのだ。


「グハハ! こ、このような程度の攻撃……何度、喰らおうとも俺は倒せぬ!」


「……神敵……討ち滅ぼせ」


 紅い手が動き、バイゼムの頭と顎を固定する。


「な、なにをする気だ!?」


 セリクはグッと身を乗り出し、無理矢理にバイゼムの口の中に入り込んだ。


「ンゴォオォッ!!」


 血反吐を吹き出し、バイゼムが悲鳴を上げる!

 セリクがバイゼムの口腔内から斬りつけだしたのである。柔らかい内側にダメージを与えられてはたまらない。斬られる度に血を噴き、充血した目がギョロギョロと忙しく動き、ここではないどこかを見やる。

 痛みのあまり、意識も朦朧としだした頃だった。兄ハウェイの咆吼が聞こえた。バイゼムはカッと目を見開く!!

 紅い手による捕縛は、セリクが腹に入った瞬間に消えてはいた。

 バイゼムは憔悴としながら、兄の声を頼りに地表まで這い出て行く……。




ーーー




 そして、現在……


 見るも無惨な弟の姿に、ハウェイは涙を流した。龍族も悲しければ涙を流すというのは人と共通している点だろう。

 ズルリと、セリクはバイゼムの口から這い出てくる。見たこともない高質量のエネルギーに戦慄を覚えながらも、ハウェイは怒りと憎しみを込めてセリクを睨み付けた。


「……人間とはいったい何なのだ。龍族が支配していた地に群れ広がり、無力を装いながら、狡猾なまでに残虐な…」


 バシュッ!!


 ドズン!!


 ハウェイの嘆きは途中で遮られた。セリクが紅い斬撃を飛ばし、それがハウェイの首を落としたからである。

 バイゼムほどの防御力は持たず、またクロイラーの砲撃によって鱗のほとんどを消失していたハウェイの頸は、いとも簡単に落ちてしまったのだ。

 二匹の龍は、向かい合わせに崩れ落ちる。その形相は、互いの無念を語り合っているかのようであった。


「……龍族とやりあって倒したってのか」


 イクセスが、二匹の死骸を見てゴクリと唾を飲み込む。

 それは軍が何もする必要もないほどのあっという間の幕切れであった。

 確かに自分もハウェイを良いところまで追いつめていた。だが、それは帝国の兵器によるものが大きいだろう。セリクが持っているのはただ単なる切れ味が鋭い小剣に過ぎないはずだ。


「このガキ。いったい何者なんだ?」


 ただデュガンから剣技を仕込まれただけではない。イクセスはセリクへの認識を改めはじめていた。


 敵を倒し終わり、セリクの目の光が薄らぎ、放っていた紅い光も弱まってゆく……。やがて、それは普通の戦気へと変わる。


「……神々の…力。これが」


 今回はセリクは意識を失わなかった。自分が何をしたのかは覚えていたが、それは自分ではない何かが自らを動かしているような奇妙な感覚だった。


「…おい。大丈夫か?」


 イクセスが聞くのに、セリクは目をしばたく。


「……え、ええ。終わり、ですか?」


「あれで終わってなきゃ、本物の化け物だぜ」


 死骸を顎で指し、イクセスは肩をすくめてみせた。


「ここは帝都です…よね。みんなは? DBは?」


 いつもの気弱な少年に戻っているのを見て、イクセスはわずかに眉間にシワを寄せた。


「ああ、ついさっき、裏手の“寄生虫”退治は終わったとの報告があったぜ。マトリックスたちは、テメェを追って地下水路に入ったみたいだが……。ま、とりあえずはこれで無事作戦終了だな」


 イクセスは無線機を口元に寄せる。


「あー。こちら本部だ。本作戦は、現時刻をもって完了とする。龍族による襲撃もあったが、こちらもすべて蹴りがついた。各自、撤収作業に入れ」


 その後、部下たちからいくつかの無線が入り、その度にイクセスが答える。


『…ガーガ! イクセス! 地下にはまだセリクくんが! 龍族はすべて倒したのですか!? ……ガガーッ!』


 マトリックスの声だった。


「ああ。セリクならここにいる。地下にいた龍もこいつが倒したぜ」


『ガーガ!! 本当ですか? それならば…………ピーピー!! セリクゥ! 大丈夫!! 怪我してない!? ガタン!! フェーナ! 危ないぞ!! セリク!! 無事か!? ガガー、ピーガ!!』


 マトリックスの、そしてフェーナとシャインの声が聞こえる。雰囲気からして、皆で無線機を取りあっているのが予想できた。

 イクセスが無線機をセリクに手渡す。ボタンを押すところを教えてもらい、両手で大事そうに握りしめる。


「うん。大丈夫だよ。俺は無事です」


 無線機の先で、安堵の声が響く。フェーナに至っては、泣いて喜んでいるようだった。

 しかし、いつまでも会話が終わらないのを見て、イクセスは無線機をとりあげ、「顔を見てから話せばいーだろうが」と飛ばし、一方的に無線を切ってしまう。

 しばらく気まずい沈黙が続いたあと、イクセスはようやく口を開いた。


「……おい。セリク。さっきの力についてなんだが…」


「え?」


 イクセスは言いかけて、少し悩んだ挙げ句、首を横に振る。


「いや、いい。聞いたってどうせ意味不明だろ……」


 そう一人で納得して、イクセスはクルリと踵を返す。


「さて。俺は戻るぜ」


「あ。はい……」


 イクセスはチラッと二匹の亡骸を見て、それからセリクをもう一度見た。


「……城にはな、Dr.サガラの研究施設がある。そこじゃ戦気や波動の研究も行っている」


「研究、ですか?」


 何を言いたいのか解らず、セリクは首を傾げる。


「その力はな、普通の戦気や闘気とかの類いじゃねぇと思うぜ。もし正体を知りてぇと思うなら紹介状を書いてやってもいい」


 イクセスがそう言うのに、セリクは傷ついたような顔をした。


「……俺が普通じゃない…から?」


「平たく言えばそうだ。ただの才能あるガキなのかと思っていたが何か違う。常人離れし過ぎている」


「……“悪魔の子”…だから?」


 レノバ村での嫌な記憶がよみがえってきて、セリクは慌てて回想するのを止めた。


「俺のところの兵士ってなわけでもねぇしな。無理にとは言わねぇよ。たがよ、前にも言ったように、不確定な力は戦力にはならねぇからな。DBで役立ちたいと思うなら、ちゃんとテメェで把握して置いた方がいいと思うぜ。力の正体を、な」


 アドバイスのようだったが、その突き放した物言いのせいか、イクセスに親近感はもてなかった。同じ冷たい口調でも、デュガンとは全く違う。

 イクセスはまだセリクを戦力としては見なすべきではないと考えていたのである。たが、強力な龍を倒したとあっては無視することもできない。故にそんなことを勧めたのだ。


「紹介状が必要なら、マトリックス通して連絡よこせ。……そんじゃあな。ご苦労さん」


 そう言って、イクセスは城の方に向かって歩きだした。


「俺の……力の正体」


 セリクはそう呟いて、二匹の龍を見た。途端、これを自分がやったのだという意識が浮かび、吐き気を催してその場で嘔吐した。

 胃がムカムカして、喉がヒリヒリと焼けつくような感じがする。血の臭いと、嘔吐した物のニオイが混じり合い、余計に吐き気を覚える。そして、言いしれぬ罪悪感に潰されそうになった。


「……俺、俺は……」


 ポロポロと涙をこぼし、セリクは頭を抱えて一人泣いたのだった…………。




ーーー




 暗闇の世界。

 崩れてバラバラになった古い積み木を見やってから、レイドは紅い瞳を静かに閉じた。

 少年の内面に蠢く激しい葛藤、強い選択、強い迷い、強い疑問……それらが渦となり、中を駆け巡る稲妻となり、怒りとも悲しみとも捉えられない暴走した激情となる。それらの苦痛を余すことなく味わい、レイドは顔をしかめた。


「……君であった理由なんてない。そして、僕であった理由なんてない」


 レイドはそう呟いて、積み木を組み直す。


「君が龍王を倒すのは避けられない宿命なんだろう。でも、僕は……」


 最後に積み上げた三角形を乗せた瞬間、積み木はガラガラと崩れる。


「人々を愛した君よ。君はどこへ行ってしまったんだい? セリクは目覚めつつある。僕は……僕の力を……もう…………」


 レイドは縋り求めるように見上げる。


「……セリク。でも、約束は守るよ。僕は絶対に君を護る。どんな形になろうとも」


 そう言い終わると、レイドは白い仮面を付け、暗闇の中にかき消えていってしまったのだった…………。

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