18話 暗殺者集団
商店街からだいぶ離れ、倉庫などが建ち並ぶ人気のない交差点にさしかかった。
辺りをキョロキョロと見回し、フェーナがピタッと立ち止まる。
「どうしたの?」
「あれれ? D地区ってこっちだっけ?」
左を指さすフェーナに、セリクは首を傾げた。
「ええ? 道知ってたから先頭を歩いてたんじゃないの? そっちじゃ城に行っちゃうよ。逆だよ」
荷物で両手が塞がっているセリクは、顎で右方向を示す。
「あ。そっか。えへへ。車で来たからわからなくなっちゃってた」
舌を出して笑うフェーナ。クルッと右向け右をして、大きく手を振りながら歩き出す。
随分と遠回りになってしまったのではないかと、セリクは深くため息を吐き出した。
「ん?」
曲がり角で、再びフェーナは立ち止まった。危うく持っている荷物ごとぶつかりそうになって、セリクは怪訝な顔をする。
「そのままでいいんだよ。大通りに戻るには…」
「違うの! なんか聞こえるの!」
「ちょ、フェーナ!」
いきなりフェーナが駆け出す。それをセリクは慌てて追いかけた。
三つ目の角を曲がり、裏路地を抜けていく。配管を飛び越え、少し広い場所に出た時にはセリクの耳にも聞こえてきた。
ドルルルッ!! ドルルルッ!!!
キュキュキュッ!!
キキキキーーーッ!!!
ドガシャンッ!!!
セリクたちの眼に飛び込んできたのは、猛烈な勢いで走ってきた車が、大きくドリフトしながらシャッターに激突する瞬間だった。
「た、大変だ!」
細かいことは解らなかったとしても、それが緊急事態だということは見ただけで解る。ドキドキと鼓動が早くなり、手の平には汗が滲む。
「乗っている人、大丈夫かしら!?」
フェーナが車に向かって走り出す。
セリクは持っていた荷物をその場に放ってそれに続いた。
車は屋根付きの高級車だ。黒塗りのボディに、金色の薔薇と枝葉が模様として描かれている。
が、今はひしゃげたボンネットからブスブスと黒煙を吹き出し、ライトは片方が完全に潰れてしまっていた。実に無惨な姿である。
バカーンッ! と、後部座席扉が蹴り開けられた。頭を振りながら何者かが姿を現す。
「うむむっ! まいった……おのれ!!」
ピカリと光る禿頭。かなり高齢の男性だ。着ている服から、身分が高い人であることが解る。
額をちょこっと切っているが、大怪我をしてそうではない。
「おい。しっかりせい。大丈夫か?」
前席から運転手を引きずり出す。そちらは重症だ。全身血だらけで、気を失っているのかぐったりとしている。
「手当てします!!」
フェーナが運転手に近づいて、怪我の具合を確かめる。
「む?」
老人が二人に気づいて眼を丸くした。フェーナはそんなことお構いなしに治療をはじめる。癒しの光を見て、老人は呆気にとられて口を大きく開いた。
「これは……なんともはや。いや、いかん! 追っ手がきておるのだ! 君たちはさっさと逃げろ!」
ハッとして、老人が後ろを振り返る。
「でも、この人が!」
「時間がないのだ! ワシらのことはいい!」
老人がフェーナの肩を揺さぶるが、頑なに離れようとしない。
「追っ手がきてるってどういうことですか?」
「わけあって命を狙われている。狙いはワシだけだ。君らは関係あるまい。巻き込まれるぞ」
場慣れしているのか、老人は冷静そのものだった。
セリクはフェーナをチラッと見やる。重症なだけあって、完全に治るまでには時間がかかりそうだ。逃げたくても逃げられそうにない。
ヒュンヒュンッと風を切るような音が響く。老人は歯ぎしりして見上げた。
「もう追いついたのか!」
ビルの上から、ロープの先端が数本おちてくる。それをつたわって、何人か降りてきた。
「応!」「応!」「応!」「応!」
妙な声を掛け合い、全身を濃紫の衣で覆った四人が地面に着地する。
全員が鉢金にマスクをして顔を隠し、鋭い眼光のみを見せている。そして腰には短刀を帯び、急所をプロテクターで守り、足には脚絆を履いていた。
実に動きやすそうな格好である。ビルから滑るように降りてきた様子からしても身軽に違いない。
「な、なんだ?」
怪しげな連中に警戒したセリクが腰の剣に手をかけると、覆面たちは一斉に低く身構えた。
「……用があるのはその男だけだ。邪魔をするならば容赦はしない」
代表格らしい男が言う。マスク越しの声はくぐもっていて、余計に威圧的に感じる。
「解った。降参する。だから一般人に手を出すのはやめろ」
老人は諦めて両手を上げ、セリクとフェーナを庇うように進み出た。
「セリク……」
フェーナが不安そうな顔で、チラリとセリクを見やった。
セリクは唇を噛み、コクリと頷く。どういう状況下なのかまったく解らないが、男たちの方がどう見ても悪人だ。放つ殺気からしても、老人を殺すつもりなのだろう。
「ま、待って下さい…。俺はDBの、自警団の一員です。悪いことなら見過ごせないです」
震えをグッと抑え込んでそう言う。緊張と恐怖で口の中がカラカラだ。
最後まで言ってから、なんで犯罪者に敬語だったんだろうかと多少バツが悪く感じられたが、敵がそれを気にした様子はなかった。
「DBだと? お前さんが?」
老人は驚いたようにセリクを見やる。
「……そうか。その名は最近に聞き覚えがあるぞ。帝国に尾を振る駄犬め。大義もなく我らを阻むか」
四人の男たちが、腰から小刀を逆手で抜く。
その強い殺気に、周りの空気までもが冷たくなったように感じられた。
「少年、お前さんのその勇気は嬉しい。だが、戦うのはやめておけ。ヤツらはプロの殺し屋だ。名ぐらいは聞いたことがあるだろう。ちまたを騒がしているテロリスト、“颯風団”だ」
老人が説明し終わる前に、四人が動き出した。
「早い!?」
セリクが剣を抜く前に、前面にいた二人が一気に間合いを詰める!
「応!」
下から抉るように放たれる一撃を、セリクは辛うじて身を引いて避ける。
避けたと見るや、その男はタンッ! と、横に飛んで距離を置く。
「応!」
離れた男の後ろから、二人目が間髪いれずに突き入れる!
「いかん!」
「セリクッ!」
老人とフェーナが叫ぶ!
「……む?」
二人目の男が眼を細めた。
突き刺したはずの小刀が、空を斬っているのを見て訝し気にする。確実に仕留めたつもりだったのだ。だが、刃はセリクには届いてはいなかった。
「くっ……。強い……」
セリクはどういうわけか、二撃目を避けていたのだ。元に居た地点よりも、大きく後方にいたのである。
ユラユラと立ち上る紅い戦気を見て、リーダーと思わしき者が仲間たちに目配せする。
「ただの子供ではないな。その剣は飾りではないということか……」
サササッと、四人が円形を作る。そしてセリクたちを大きく囲った。老人とフェーナにも攻撃が届く範囲だ。この状況では、いわば人質にされたようなものである。
「卑怯よ! 一人に四人がかりなんて!」
フェーナが怒るが、リーダーはフンと鼻をならした。
「我らは“戦闘者”ではない。敵を確実にしとめ、任務を遂行することこそ肝要…」
四人はジリジリと間合いを詰めてくる。
セリクの今の実力では、フェーナたちを守りながら戦うのは難しいことだった。
「くそっ。どうすれば……」
『衝遠斬』を放てば、一人や二人は一気に倒せるかもしれない。だが、残った二人に確実にやられるだろう。
「多対一は苦手と見える。まだまだ未熟よな!!」
セリクのちょうど後ろにいた男が、隙だらけの背中を見ていきなり飛びかかる!
「はやるな! 愚か者!!」
リーダーが怒りを込めた声で叫んだ。
ザンッ!
セリクは振り返りもせず、剣を後ろに振りかぶるように大きく回した。それが襲いかかった男の手首を深く貫く。
「く、ぐぁ!」
鮮血が飛び散り、痛みの余りに武器を取り落としてしまう。
「な、なんだと……そんな馬鹿な」
動脈から噴き出る血を反対の手で抑え付け、狼狽しつつ後退る。
周りで見ていた者たちには、セリクが無造作に後ろに刃をそらしただけのようにしか見えなかった。これは単なる偶然だと。
しかし、リーダーだけは射殺すような眼でセリクを睨む。
「あの戦気を見て、まだ侮っておったのか。俺の指示もまたずに飛び出しおって……」
リーダーはチッと舌打ちする。そして部下に少し距離を置くように目配せで指示を出した。
「な……。血……?」
セリクは自分で何をしたのかまるで理解していなかった。
恐る恐る振り返り、地面に血が飛び散っているのが目に入る。そして、衣を血で汚しながら距離をとる男がいた。それを見た瞬間、頭が真っ白になり強い吐き気を覚える。
自分の剣先に血がついていた。それは自分が敵を傷つけたということである。さっきのイヤな感触はこれだったのだ。これを自分がやったのだ。そのことだけに意識が囚われ、セリクはガタガタと震えはじめた。
ポタポタと切っ先から零れ落ち、灰色の地を汚す血。その赤黒くなった染みは、徐々に、徐々に広がっていく……。
傷口を抑え付けながら、とんでもない化け物を見るような敵の怯えた顔。不安と憎悪が激しく渦巻いているのが見てとれる。
セリクは呼吸が荒くなり、ギュッと心臓を鷲づかみにされたような気がした。
剣を持ったときから覚悟していたことのはずだ。それだけでなく、魔物と戦ったり、シャインと修練したりして、だいぶ剣を使うことにも慣れていたはずだった。
しかし、実際の戦いは違う。人間の血を見て、剣が本当の意味で人の生き死にを左右させるものだとようやく実感したのだ。今の相手が人間だったからこそ、感情移入せずにはいられない。もし、これが自分だったら……敵の姿が、自分の怯えた顔のように見えてくる。
セリクは戦いに初めて本当の恐怖を覚えたのだった。
「ん? なんだ。まさか人を斬るのは初めてか」
リーダーがニタアッと覆面越しにも判るように嫌らしく笑った。
いくら敵が強くても、精神的に追い詰められたとすれば、それは願ってもない隙となる。リーダーはそれを好機と捉えたのだ。
「そうか。貴様の強さには疑問が残るが……。ここで始末しておいた方が後のためであろう」
三人がさらに警戒しつつ刃をギラリと光らせる。
片腕を痛めた男も、無事な手で落ちた小刀を拾った。血走った目で、セリクを睨み付ける。
「ううっ……」
剣を握らなければ、構えなければ……と、考えるが、頭の奥が痺れるような感じがして思考が回らない。
ダランと切っ先を下げ、血痕にばかり注意が行く。そこから目が離せないのだ……。
「セリクッ!」
フェーナの声に、セリクはようやく顔を上げる。そして振り下ろされた一撃を危うくのとこで避けた!
「少年! しっかりせい! 正義のために剣を振るのは悪ではないぞ!! 迷うな!」
老人が怒鳴る。どこからか鉄パイプを拾ってきて、セリクに加勢しようとしていた。
セリクは頭を必死に動かそうとする。そうだ。自分が戦わなければ、フェーナも老人もここでやられてしまうのだ。それだけは絶対に許せないはずだ。
意識を切り替え、敵に今一度目を向けた時だった……
「ぜいッ!」
低いが、明らかに女性と解る声が響いた!
ズンッ!
「グッ!?」
セリクに襲いかかろうとしていた一名の腹から、いきなり刀の先が飛び出る!
自分の身に一体何事か起きたのかと、男は目を見開いた。
「私の隊員に手出しはさせんぞッ!」
刺された男が振り返る間もなく、胴体を一気に斬り裂かれる! ブボッ! と、大量の血を吹き出して男は崩れ落ちた。
後ろから現れたのは、戦気を揺らめかせ、血振りするシャインである。
「な、何者か!? おのれッ!!」
セリクをターゲットにしていた男たちは、シャインに攻撃の矛先を変えた!
「おおッ!!」
颯風団が動くより早く、シャインが走り出した!
ズザンッ!!
「ギャッ!?」
防御も間に合わず、一番近くにいた男の首が飛ぶ!
「いいッ!?」
ズガンッ!
セリクに怪我を負わされていた男は、左手に持った小刀ごと縦に裂かれて斬り殺される!
「これ以上はさせぬ!」
「ぜいよぉッ!」
シャインと、最後に残ったリーダーが斬り結ぶ! 刀と小刀が火花を散らした!
「応ッ!!」
「そんなもの!」
パァン!
渾身の力を込めて斬りかかってくるのを、シャインは手甲で払いのける!
ズジャッ!!
「ッ!? うぬぬ、ぐああッ!」
シャインは敵の心臓を一突きにした! 刀を半回転させて傷口を拡げると、苦悶の叫び声をあげる。
「ぬ、ぬかったわ……貴様は……」
リーダーが、怒りにブルブルと震えながら言う。
返り血を浴びたシャインが、ギロリと男を睨み付けた。刺さっている刀を、敵の胴体を蹴り飛ばすことで一気に引き抜く。
「貴様ら“暗殺者”には恨みがある。だから容赦はせん! 女子供問わず、ターゲットであれば躊躇なく殺す外道めが!!」
「こ、このまま終わると思うなよ……んがッ!?」
倒れたリーダーは懐に手を入れて何かを取り出そうとしていた。が、最期の足掻きをする前に、シャインが一刀両断に斬り伏せる!
「貴様らのやり口はお見通しだ。あの世で命を奪った者たちに詫びてくるがいい」
シャインは死骸を見下し、敵の衣で刀の血を拭って鞘に納めた。
それは実に無駄のない戦い方だった。明らかに人を斬るのに慣れていなければできない動作である。セリクの眼には、試験の時に相対した時とは動きも迫力も何もかもが違って見えた。これが人を殺すということなのだと改めて思い知らされる。
「大丈夫か?」
セリクはハッとして、シャインの顔を見やった。いつの間にか側に来ていたのだ。
「…怖かったか?」
敵の血でまみれた顔だ。怖いと同時に、自分への情けなさを感じる。そしてセリクは小さく頷いた。
「ならいい…。怖いと感じるのは、剣士として恥ずべきことではない。怖さを感じなければ、ヤツらのような暗殺者か、単なる狂戦士に過ぎないからな」
「……俺は……戦えなかったんです」
ひどく落ち込むセリクに対し、シャインは思案顔になる。
「簡単に人を斬れるよりはいいさ。お前の性格はある程度は理解しているつもりだ。修練時でも、私相手に手加減してるだろう? 人が相手では剣が鈍る……今はまだそれでもいい」
それでもセリクは納得できないような顔をした。
「……そうだな。コホン。では、一つアドバイスしてやろう。剣を握った時は何も考えるな。護るべきもののことだけを考えろ」
フェーナと老人を指さす。
その時、フェーナの顔を見てシャインは眉をピクリと動かした。
「……お前は、意外と冷静なんだな」
チラリと自分が斬り伏せた死体を見やり、それからフェーナを見た。
これだけのことがあったにも関わらず、フェーナはケロリとした顔をしていた。運転手も治し終えたようで、パンパンと膝を叩いて立ち上がる。
「私だって怖かったけれど…。この人たち、セリクやこのおじいさんを殺そうとしたんだもん。殺されて当然だとまでは思わないけれど、許せないよ」
フェーナは死体となったアサシンを見やり、それからセリクに走り寄ってその手を握る。
「怪我ない?」
「あ。……うん。ごめん。俺、フェーナを護るって……言ったのに」
「ううん。そんなことない。戦おうとしてくれただけで嬉しかったし。やっぱりセリクは……」
「え?」
「ううん。なんでもない」
フェーナはペロリと舌を出して笑う。
「すまんな。命を助けられた」
老人が心底ホッとした表情で、セリクの肩をポンと叩く。
「いや、俺は何もしてないです…。シャインさんが」
「何を言うか。お前さんがいなければ、その前にワシは殺されておったよ。連れも助けられたしな。三人に礼を言いたい」
セリク、フェーナ、シャインと、それぞれとギュッと力強く握手を交わす。
「……ご主人様。私は…」
気が付いた運転手が、ヨロヨロと立ち上がる。服はボロボロだが、フェーナが治療したので傷はすっかり消えている。
「おお。うむ。意識を取り戻したか。良かった。……おい、無線機は使えるか?」
老人が問うと、運転手はコクリと頷いて、腰のベルトについていた小さな黒い箱形のものを取り出す。
銀色のアンテナをのばし、横に付いたダイヤルのようなものを操作する。ピーピー、ガーガーというやかましい音が響き渡った。
「…颯風団に襲われるとは。帝国の要人とお見受けしますが?」
シャインがそう言うと、老人は大げさに肩をすくめてみせる。
「あー、まあな。もう大分前に隠居した身なのだが。それでもヤツらは、まだワシが何かの有益な情報を持っていると思っているのだ」
「そうですか。しかし、なぜ、このような場所に? 護衛もつけずに不用心だったのでは?」
確かにここは商店街からだいぶ外れた場所だ。
そのシャインの言葉には若干、棘が含まれていた。命が狙われているのだから、もっと警戒しろと言いたいのである。
「そうだな。返す言葉もない。いや、その…娘が久しぶりに帰ってくるのでな。お忍びで……ちと買い物をしにな。帝都でサプライズな物を探しておったわけよ」
気まずそうに老人が頭をかく。馬鹿親っぷりが自分で恥ずかしいといった感じだった。
「ご主人様! 護衛隊と連絡がとれました。すぐにこちらに来ます」
「うむ。そうか! こやつらの後始末も人員を手配しておけ」
たいして待たされることなく、すぐに新しい車が二台やってくる。
先頭の一台は、さっき老人が乗っていたのと同じ型の高級車、後ろの車は幌のついた軍用トラックだった。
車から降りてきたのは、明らかに帝国の兵士に違いない。
帝国軍に連絡をつけるなんて、隠居した身だとしても、それなりの影響力をもっているのだと解る。
兵士たちがトラックに敵の死体を手早く運び入れ、血飛沫の跡なども綺麗に洗い流し、ここで殺し合いが起きたなんて思えないほど綺麗に片付けてしまった。
「世話になったな! そのうち、必ずや何か礼をさせてもらおう!」
老人はセリクに向かってニカッと笑うと、車に乗って去って行ったのであった……。
「……あの老人。どこかで見た気がするんだが」
シャインは腕を組んで考えるが、思い出せないようで首を横に振った。
「あのー。そんなことより、シャインさん。どうしてここが解ったんですか?」
フェーナが首を傾げて問う。確かにシャインがこの場に現れたのはタイミングがあまりに良すぎた。
ギクリとした顔をして、シャインは口をへの字にさせる。
「い、いや……。そのだな。偶然、パトロールをしていて…だな」
しどろもどろで説明をするシャイン。その様子からしても、明らかにセリクたちの後を付けていたのだと解る。
「……もっと早く助けてくれても良かったのに」
「それは! お前たちがいきなり走り出して裏路地に向かうから、見失った……」
釣られてボロを出す。シャインはしまったという顔をし、フェーナはしてやったりの顔だ。
「と、とにかくだ! もう日も落ちる! さっさと教会に戻るぞ! いいな!」
誤魔化すように大声でそう言い放ち、シャインは大股で歩き出した。
セリクとフェーナは小さく笑いあってから、荷物を拾い集め、帰途への道に続いたのだった…………。




