禁じられた術
樹氷の森にある洞窟の奥の壁は、一昨日のまま崩れていた。マーシャルたちは十分に防寒していたため、前回よりはマシな道のりとなったが、息の白さは変化なかった。嫌な臭気と不気味な風が押し寄せてこれば、それは地底湖が目と鼻の先にあるという合図だった。
汚水をたたえる地底湖を前に、二人はまず辺りをじっくり見まわしマクベーンの姿を探したが、通ってきた地下通路にも、この地底湖のある空間のどこにもその姿はなかった。マーシャルとユンスティッドは期待を裏切られて落胆こそしたものの、一縷の希望は捨てていなかった。
ユンスティッドは道すがら、彼の考えを順を追って説明してくれた。まず、最初に地底湖への道を発見した際の蝙蝠には、禁じられた古代魔術が使用されていたこと。地底湖の上に穿たれた穴があり、あの空間は何らかの目的があって人工的につくられた空間だろうということ。マクベーンの地下書庫に仕掛けられていたのは、周到な発火魔法の罠であり、スペルを書き込んだ本が部屋全体にまんべんなく散らばって、おそらく初めから家が全焼するように仕組まれていたこと。淡々とした口調で、家の周りには何の保護魔法の痕跡もなく、他の家に火が燃え移っても構わないというような感じだった。そしてあの秘密の地下書庫に並べられていた本の中には、古代魔術の書とされ禁書と呼ばれる本がいくつか散見された、とユンスティッドは締めくくった。
それじゃあ、町長があの蝙蝠を仕掛けたっていうの?と質問したところ、それには首を傾げて「多分違うと思う」と曖昧な答えが返された。
『あの蝙蝠の罠は少なくとも数十年、もしかしたら百年以上前のものかもしれない。蝙蝠ってのは古来、吸血の呪文で使われるからな、おそらく外敵に対する仕掛けだろう』
『じゃあ、何で町長が地底湖にいると思ったのよ。もう山から下りてるかもしれないじゃない』
『その可能性もゼロとは言えない。だが、禁書は所持しているだけで一生牢に放り込まれるし、万が一使用していた何て事がばれたら死刑は確実だ。俺だったら、確実に全焼したか確かめるだろうな、たとえ住人が消火活動に不真面目だろうと分かっていたとしても。
全焼を確認してから逃げるとしたら、町の人に見られる危険がある下山道は避けた方が無難だし、無事に下山できた場合でも冬の間他の大陸に行く船は出ないし、王都に噂が届けば指名手配される。残る道は、凍死の危険を承知で北方山脈を越えて亡命するくらいだろう。この地下トンネルの出口を利用すれば、誰にも見つからず山に紛れ込める』
だから来る途中もマクベーンの通った跡がないか調べながら歩いてきたのだが、それらしきものは見つからず、地底湖の本来の利用者のための正しい道があるのだろうという結論に落ち着いた。
相変わらず悪臭を放つ湖にうんざりして、マーシャルはなるべく空間の隅に寄ろうと努めていた。
「ねえ、本当にこんな酷い場所に町長は来るの?私だったら大回りしてでも避けたいわ」
「来るはずだ」
そう言いながらも、ユンスティッドも鼻をつまんで眉間に深い皺を刻んでいた。マーシャルのパートナーは頭の回転が速く大抵のところで冷静であり、信頼していることはそうなのだが、偶に勘頼りになるのは勘弁してほしい。ユンスティッド曰く、「百パーセントの確率で確かなことなんか無い」らしいけど。
二人は壁際に座りこんで、ひたすら待ち続けた。一度地上まで出てみることも提案したが、ユンスティッドに却下され断念した。予定通りならば明日は王都に帰る馬車が迎えに来る日で、決着をつけるならば今日しかない。これは夜まで、下手したら明け方までの耐久戦になりそうだ。叫びだしたい気持ちを堪えて、マーシャルは抱えた両膝の間に顔を埋めた。ユンスティッドは極めて真剣だし、多分まだマーシャルには話していない考えがあるのだろう……
町を出発する前に住民に頼み込んでパンを分けてもらっていたが、森の中で昼食として腹の中におさめてしまっていた。空腹が辛いかといえば、悪臭が充満しているせいでいまいち食欲を感じず、むしろ口の中に込み上げるすっぱいものを幾度か飲み込む羽目になった。
ユンスティッドの言葉にあった天井に穿たれた穴からは、丸い空が覗いていた。一度目の時は森に落下したためあっという間だったが、ちゃんとした道順を辿ると、地底湖まではかなりの時間がかかり、到着した時には昼を回って夕方が近いと思われた。空は相変わらず雪を固めたような白く重い雲に覆われ、山の近くにいるせいか今にも雲の塊が落っこちてきそうだった。下から見ていると上質な羽布団のようにも見えるので、凍えるような寒さを和らげてくれて案外気持ちいいかもしれないと想像する。どんなに身を縮めても、地面に触れたところから伝わってくる冷たさは全身を凍えさせたし、出口の方から吹き込んでくる風は冬にふさわしく茨のトゲのように露出した肌を突き刺した。家や隊舎の大きな暖炉が恋しい。
左隣に腰を下ろしているユンスティッドは、ここに着いてからじっと丸い空ばかり見上げていた。飽きないのだろうか、と思うが、どうも何かの目的があっての行動らしい。いくつか話題を振っても生返事しか返ってこず、ちらともこちらを振り向かない。マーシャルは肩を竦めた。
(あとで聞けば教えてくれるでしょ)
パートナーは空を睨むのに忙しそうなので、マクベーンの姿を見逃さないようにする本来の仕事はマーシャルが担うことにして、二つの出入り口を入念に見張る。しかし、それは座っていてもできる仕事だったので、暇なことに変わりはなかった。昨日たっぷり睡眠をとった分、今日はぱっちりと目が覚めているし、本当、どうしようか。
やがて丸い窓の外がオレンジに染まり、夜が訪れた。星の輝きこそ見えないが、雲の向こうには満天の星空が広がっているに違いない。昨日よりは雲が薄く途切れがちで、月の青白い体が見え隠れしていた。地底湖の周辺も一層冷え込むようになった。湖面に氷が張らないのが不思議な程だ。
おもむろにユンスティッドが腰を上げて、湖の前まで歩いて行った。マーシャルはそれを小走りに追う。
「どうしたの」
「運が良い、雲が晴れてきた」
「意味わかんないんだけど、ちゃんと説明してよ」
「そうだな、お前にもわかるようにちゃんと噛み砕いて話そう」
目の前の背中は、力をこめて小突くには絶好の的だった。ユンスティッドがゲホッとむせる。マーシャルは腕を組んでその様子を見下した。
「言っとくけど、今のは私じゃなくても分かんないからね」
「冗談くらいは察しろよ」
息を整えたユンスティッドは、こほんと咳払いをした。片足を持ち上げたかと思うと、いきなり湖の中につっこんでざぶざぶと膝まで浸かったため、マーシャルは間抜けな声を上げてしまった。湖の浅瀬からさらに進もうとする少年の服の裾を咄嗟に浸かんで引き留める。
「ちょ、ちょっと!いきなりなに入水自殺図ろうとしてるの?!」
「早とちりするな、どこが自殺だ」
「だって、こんな」湖はどろりと濁っていて、ユンスティッドのズボンにもムカデのようにギザギザした黒い水草が張り付いていた。生理的な嫌悪感が込み上げてきて、パッと服の裾から手を放し、さりげなく距離を取った。「こんな湖に入るなんて、爪先が触れただけでも呪われそうよ。自殺行為よ」
「魔法師がなに馬鹿なこと言ってるんだか。呪いがあったとしても、専門分野だろう」
「たとえそうだとしても呪いなんかかけられたくない!アンタみたいに図太くないのよ」
「お前だけには言われたくない」
冷めた目でそう言って、ユンスティッドは太腿に水が来るところまで進むと、今度は大きな円を描くように湖の淵に沿って歩き始めた。遂にトチ狂ったかとマーシャルは本気で心配になった。隠していただけで、一昨日頭を打っていたのかもしれない。他にも思いつく理由はあった。徹夜つづきの日……本の読みすぎ……マーシャルによる拳の振るいすぎ……マーシャルによる蹴りの食らいすぎ……最後二つの線が濃厚だった。
「帰ったら医務室で頭を診てもらいましょうね!」
「お前の頭をな」
ユンスティッドは湖の浅瀬を右回りに三周、左回りに三周すると、懐から小袋を取り出してキラキラと光る粉末をまいた。ぶつぶつと何事かを唱える。
「よし、これであとは運を天に任せよう」
「結局何だったの今の」
ユンスティッドが水から陸に上がりながら、「今のは……」と説明しようとする。だが、マーシャルの視線は彼の背後――――湖面の中央に注がれていた。ユンスティッドは気が付いていないが、そこでは水面が小さな丘のように盛り上がっていたのだ。丘はついに小高い山のように高く波立った。山の頂上に当たる所から黒い水が滝のように流れ落ちている。しかし、その全貌を露わにする前に、湖面は再び平らに戻った。あとには波紋がぶつかりあい、その広がる円の中を細い藻が漂っているだけだった。
「ねえ、あれがさっきの儀式の成果?」
マーシャルが一歩後ずさりながら尋ねると、ユンスティッドは怪訝な表情をした。
「何のことだ?」
「今、後ろで……」
マーシャルの言葉は最後までつづかなかった。否、つづけることが出来なかった。いきなり湖面から黒い腕が生えたかと思うと、ガッシと足首を掴まれて陸地から引きずりおろされたからだ。声を上げる暇もなく背中からまともに地面に叩きつけられ、一気に水中へと引きずり込まれる。「マーシャル?!」咄嗟に伸ばされたユンスティッドの腕を命綱のように必死に掴むが、すぐに放して湖の淵に手をかけた。爪ががりがりと削られ、先が割れたのかピリッと痛みが走った。引き込む力は増すばかりで、とうとうへりから手が滑った。捕まる場所を手探りで探したが、髪の毛のような感触の藻が指の間にからみつくだけだった。
(こいつ、なんて力なの!足首が潰されそう)
すぐに手を放さなければ、ユンスティッドまで道連れにしていただろう。水を飲まないように唇をつむって、マーシャルは片目を薄く開けた。埃や泥が眼球に染みる中、必死に敵の正体を見極めようとする。湖の中は外から見たよりも澄んでいて、沈んでいくにつれ、足首を掴む手の持ち主の姿がはっきりしてきた。化け物、としか形容しようがない姿をしている。藻と水草をびっしりと張り付け、それらがベールのようにゆらゆら漂っていた。
(不味い、息が)
唇の隙間から水泡がいくつも放出され、頭上に吸い込まれていく。一際大きく空気を吐き出し、いよいよ息がつづかないとなった時、全身にまとわりついていた水がうねり、マーシャルの体は水流の勢いに押されて急激に持ち上げられた。敵もろとも、陸上に打ち上げられる。体が転がって、拍子に腹を打ち付けた。パートナーの少年の魔法だと、すぐに分かった。
「マーシャル!」
地面を伝って駆け寄ってくる足音が響いた。水を飲んでしまっていたマーシャルは、ゴホゴホと口の中のものを吐き出した。顎に垂れた水をぬぐう。舌がざらざらして、歯を噛み合わせると砂がジャリリと鳴った。反撃する間を与えないとでも言うように、うつぶせ状態のマーシャルの上に小さな黒い影が落ちた。化け物が背中にのしかかり、押しつぶそうとしてくる。その手は足首から離れてマーシャルの首にかかった。小柄な体躯にも関わらず、凄まじい力で首を締め上げてくる。マーシャルは首を無理やり回すと、痛む目をひらいて敵の正体をはっきり見た。
水草がすだれのように垂れ下がった身体は丸みを帯びて芋虫かサナギのようだった。そこから四本の短い手足が突き出している。いかんせん張り付いているものが邪魔で、目の前にいる生物が、水棲なのか陸棲なのかさえ分からない。あの下にはぬめりのある皮膚が隠れているのか、尖った鱗が隠れているのか……水草がベチョッビチョッと不愉快な音を立てて剥がれ落ち、地面にねっとりとした水たまりを作った。鼻が曲がりそうな悪臭に目頭が痛む。顔のすぐそばに化け物の顔がある。目も鼻も口も見えなかったが、生臭い呼気が首筋にかかって、産毛を逆立てさせた。
首を絞める手をはがそうと躍起になっていたマーシャルに、ユンスティッドが加勢した。化け物のぶよぶよとしたソーセージのような指を一本一本剥がそうとするが、それは困難を極めた。こいつは、ただ一心不乱にマーシャルの息の根を止めることだけを考えているに違いない。
(何で、こんな、)
マーシャルの喉からか細い悲鳴が漏れ、血流を止められた首から上が赤らんでいった。
「くそっ!」
恐慌をきたしたユンスティッドが、「イグニス!」と叫んで、化け物の背中に火をつけた。驚くべきことに、化け物は微々たる動揺すら見せなかった。マーシャルの限界も近い。何か打つ手はないかとユンスティッドは視線を走らせ、マーシャルの腰にはかれている長剣に目を留めた。
朦朧とした意識の中で、マーシャルはぼんやりと眼前の化け物を見つめていた。嗅覚も麻痺し、耳の奥に分厚い膜が張ったように外界の音が遠い。先程の火の呪文のせいで、化け物の体は燃え続けていた。熱をものともしていないようだが、水草や藻からは水分が蒸発し、ぱらぱらと地面に落ちる。火の手は頭部にまでたどり着き、化け物の顔面を覆い隠していた一番大きな水草が剥がれた。薄らぐ意識の中で、マーシャルは平べったい顔を見つめた。そこでは、ぽっかりと空いた二つの穴が混沌とした闇をたたえ、マーシャルを飲み込むときを今か今かと待っていた。
――――眼孔だ、と直感的に悟った。
そこにはかつて二つの眼球が埋まっていたはずだ。まわりを覆う皮膚は、蝋のように白かった。
(化け物、じゃない)
心がおののいた。
(人間だ)
頭の毛はほとんど抜け落ちていたが、茶色い毛髪が何本か残っていた。顔全体がパンパンに膨れ上がり、鼻や唇は埋没している。僅かに開いた口の中には歯が一本もなく、シューシューという息遣いが隙間から這い出ていた。老いているのか若いのか、男なのか女なのかも判別がつかない。呼吸以外のおよそ人間らしい行動を放棄して、マーシャルの首を締め上げることだけに全身の力を注いでいる。それなのにマーシャルは、不意にこの醜悪な生き物に憐れみを抱いた。(なぜ)
その時、剣をかざしたユンスティッドが、マーシャルの首を締め上げる二本の腕を切り落とそうとした。振り下ろされようとする切っ先を、すみれ色の瞳が恐怖の色で見る。だが、押しつぶされた喉は呻き声も悲鳴も発することができない。
(ユンス、ダメよ!この子……)
マーシャルの心の叫びは別の形で届くこととなった。
「やめなさい、ライアン」
と、誰かが言った。
怯えるでもなく、焦ることもなく、淡々とした声音だった。
振り下ろされる直前の切っ先が止まったかと思うと、ユンスティッドが突き飛ばされた。マーシャルの首にかかった手を、新たに伸びてきた手が強制的にはがしにかかる。ああああああ、と低いうなり声が聞こえたと思うと、今までの攻防は何だったのかというほど、あっさりと指がはがれてマーシャルの喉は解放された。
酸素にかつえていた肺が、早く!と急かしてくる。最初喉は呼吸の仕方を忘れたかのようだったが、何とか息を吸い込むと、心臓が胸を突き破る勢いで激しく脈打ちはじめた。
生理的ににじんだ涙をぬぐって、マーシャルは助けてくれた人を見上げた。若い男だった。どこかで見かけたことが――――と記憶を辿ってハッとする。この町を訪れた最初の日に、マーシャルを崖から突き落とした男だった。
立ち上がろうとしてふらついたマーシャルに、先程の淡々とした声がかかった。
「これでも死なないのか。よほどツキがあるみたいだ」
「マクベーン町長……!」
ゆっくりとこちらに歩いてくるマクベーン。いつの間にか近くにいたユンスティッドが、マーシャルを庇うように立ちはだかった。
「もう危害は加えないから大丈夫だよ。本は燃やしてしまったしね」
マクベーンは言葉通り、マーシャルとユンスティッドを一瞥しただけで、すぐに視線を若い男へやった。
「カイ、ありがとう」
おおおおお、カイと呼ばれた男は低く唸った。ニット帽の下では、黄色く濁った白目の中で、青目が振り子のように激しく揺れていた。焦点が合っていないのだ。
背中を向けたマクベーンを引き留めたのは、ユンスティッドだった。
「マクベーンさん、待ってください。あなたには聞きたいことがたくさんある」
「私に応える義務はないと思うが」とマクベーン。
ユンスティッドは無視して話し続けた。
「僕らを殺そうとしたのはあなたですね」
「そうだよ」マクベーンは質問に答えることにしたらしかった。
「一日目にそこの男を差し向けマーシャルを突き落とし、昨晩地下書庫に発火魔法の罠をはって図書の隠滅をはかった」
「そうだ」
「僕たちを殺そうとした訳は?」
「さあ」マクベーンは首を傾げた。「単純に王都の人間が邪魔でね。この町を気に入っていたから、離れなければならないのが嫌だった。君たちを殺せたらこのまま住んでいてもいいかと思ったんだが、ちょっと計算違いをしていてね。結局、君たちの生死にかかわらずボレーアスを出なければならなかったから、殺す理由はよく分からなくなってしまったね」
ユンスティッドは黙り込んだ。まだ座り込んだままだったマーシャルは、まじまじとマクベーンの隣にいる若い男ともう一人を見つめていた。とりわけ、化け物だと思っていた人間の方を。水草にまみれた生き物は、立ち上がっても若い男の胸にも背が届かなかった。
「本はもういらなかったんですか」
「そうだね、必要な分はそらで言えるから。記憶力はいい方なんだ、君もみたいだけど」
「……ここにはどの道を使って?」
「ここら辺には小さな抜け道がたくさんある。気付かなかったか?」
「この空間は、何のためにあるんですか」
マクベーンは鼻を鳴らした。
「分かっていることを確認されるのは不快だ。もっと別の質問はないのかい」
「それじゃあ」
上唇を舐めて湿らせ、ユンスティッドの声が囁くようなものに変わった。
「――――あなたは、何者ですか」
それまで僅かな表情を浮かべていたマクベーンの顔から、一切の感情が抜け落ちた。
「分かっていることを尋ねられるのは不快だと言ったばかりだ。君はそれほど愚かか。だが、どうしてもというならば、君の予想を述べてみるがいい。答えるかはそれを聞いてから考えよう」
ユンスティッドが深く息を吸った。マーシャルはマクベーンと対峙するパートナーを不安げに見つめる。ユンスティッドの黒曜の目が、糾弾するように目前の老いた男を見据えた。
「あなたは禁術を使って、不老不死の体を手に入れた。違いますか」




