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一幕の弐。

       ◇


 日が暮れる少し前に、色町に足を踏み入れた。すぐに荷田屋へと向かい、その周囲の小道や通りを把握する。完全に日が暮れてからではこういうことは出来ないし、出来ていなければ危ない場所へ近付いてしまいかねないからだ。

 饅頭屋は丁字路の、道が交わる部分に在った。そこでふと思い出した『丁字路の交差点には魔性の者が突っ込んでくる』という迷信のことを僕が言ったら、

「これだけ欲にまみれた場所だと、むしろ魔性に侵されていない人間の方が少ないのかもしれないですよ」

 と切り返された。僕は納得して、饅頭を二つ頼んだ。今日は甘いものばかり食べている。

「それと、古本も扱ってると聞きましたが」

「おお、情報が伝わるのが早いですねえ」

 わざとらしく驚いた風な店主のおじさんが屋台の側面を叩く。観音開きの戸の中は棚になっていて、そこにぎっしりと本が詰められていた。にやにやと笑いながら、店主は腕組みした。なにやら蔵書を自慢するようだ。

「東西を渡り歩いて集めたものですから、ご満足いただけるものがきっとあると思いますよお。まあ、この辺はお金持ちの方が多いようでして、あんまり売れてませんがね」

 近辺に金持ちが居ることと本の売れ行きの少なさにどう因果関係が出来るのかわからなかったが、試しに手にとってぱらぱらとめくる。そういえばこうして本を読む時に、開きすぎると本が傷むから角度を抑えろ、と教えてくれたのは白だったっけ。

「どうです。なかなか良いでしょう?」

 店主の問いかけで記憶を探るのをやめて、開いている所に目を落とした。そういえば、考えてみたら僕は本をあまり読まないからどういうのが良い本かわからないのだけど。まあ白は乱読家だからそう問題は無いか……あ、また考えが横道にそれている。本を直視できないせいだ。

「もし、お客さん? ははあ、その反応。あまりお客さんはこういうの読まれないようですね。そんでしたら、これなんかお勧めしますよ。絵柄が万人受けするようで、入門としては最適ですので」

 店主がほれほれと僕にもう一冊の本を突き付ける。題名は〝葉月〟〝風車〟〝家具屋〟〝葉っぱ〟〝鍵〟……ふむ。

 まあこんなところで店を構えている時点で気付くべきだったのかもしれないけど、この饅頭屋が取り扱っているのは、春画の本だった。なるほど、お金持ちなら本なんて買わずに直接遊女を買う、か……。絵だけでなく文章も付いているから、確かに読み物ではあるけれど。おい白、やっぱり伝聞の噂はあてにならないと思うぞ。遠くの空に呼びかけた。

「……じゃあ、この二冊買います」

「お買い上げありがとうございます!」

 白に買っていったらどんな顔するだろう、といたずら心が動いたため、衝動買いしてしまった。金を渡してすぐ、我ながら馬鹿なことをした、とも思ったけど。たなびいていた後悔の念を震え上がらせるように鐘の音が響き、酉の刻を告げる。仕事の時間だ。この店主にも鍼は要らないかと訊くつもりだったが、無理そうだ。僕は風呂敷の中に二冊を入れて、走り出す。


 客に僕のことを教えたのは、同じ貧乏長屋に住む(しげ)さんである。重さん曰く『呑み屋で知り合って意気投合した男が腰痛を訴えたので、お前に仕事をくれてやることにした』のだとか。

 だが客が居るという宿に着き、ふすまの前まで来て僕は少し躊躇していた。旅の客というのはなにかと面倒だからだ。顔見知りではなく逗留も一時であるため、態度が悪かったり、下手すればけちつけて金を払わなかったりもする。僕は面倒事が無いことを祈りつつ、声をかけた。

「鍼灸師の、」

「入れ」

 粗野というか豪快な物言いは僕の挨拶を潰して通った。

 ああ……面倒な客じゃないといいなぁ……。

「失礼します」

「失礼なことはすんなよ」

 受け答えからして面倒臭かった。ふすまを開けて膝をすりながら入ると、中に居たのは三人。手前の一人は正座して、定規が背筋に入れてあるのではと疑うほどに居ずまいのしっかりした人。長い黒髪を総髪にしていて、切れ長の瞳が鋭い眼光を散らす麗人だ。羽織袴で二本差し、背も僕より少し高いだろう。そのせいか、少し威圧感がある。僕は奥のもう一人に目を移した。

 もう一人は柔和な面立ちで背も僕と同じくらい、帯刀していることもない。ほっとした僕に片手を振る余裕もあり、威圧感皆無だ。髪は短めで肩にかかるくらいだが、着崩した橙色の着物が艶やか。そして、

「おう。頼むぞ鍼灸師」

 髪の短い女の人の隣にあぐらをかいて座っていた男が客のようで、先の二人は付き人か何かのようだった。そうでなければ夜伽(よとぎ)役か何かだろう。

 男は年の頃三十路といったところで、十七の僕からしたら一回り上。婆裟羅(ばさら)に着飾った緋色の着物姿はけばけばしくない程度に、しかし派手な人物像を確立させた。男もまた総髪にしていたが最初に見た人よりは短く、毛先も少し荒れているあたりが男らしさを感じさせる。

 表情をうかがうように見ていたためか、目線が合う。背がかなり高く見下ろされてる気になることと、軽薄そうに笑う目元がどうも気になったが、それさえ気にしなければ割と女性受けしそうな顔立ちだった。

「ほお。ここら辺じゃ一番腕が確かだって聞いたから呼んだんだが、意外に若いな」

「いえ、僕はそれほどでもないです。凄腕だったのは僕に鍼術を教え込んだ先代ですよ……」

 語尾に溜め息を重ねてしまう。先代が亡くなってのち、引き継げたのは患者と道具だけで、腕と評判はどうにもなっていない。しかもあの人が鍼術だけじゃなく医術全般に秀でた人だったおかげで僕は引き比べられることが多く、心労も絶えない。嫌なこと尽くしだ。

「謙遜か? まあ腕の方は実際にやってもらえばわかっちまうけどな。ところで、ここにゃ旅の途中で立ち寄っただけなんだが、なかなかイイとこだな」

「それはどうも。お褒めにあずかり恐縮ですよ、何もないところですから」

「そーいうさっぱりした潔さがいいんだよ。ごちゃごちゃした街ってのも、あれはあれで案外不便なもんなんでな」

「街、ですか。どちらからお越しになったんですか?」

「江戸の方だよ。俺ァ縮緬問屋ちりめんどんや光衛門(みつえもん)ってんだ」

 片膝を立てて笑う光衛門さんは、四方山話に花を咲かす。さっさと治療に移る気がないようなのでどこも悪くないのかと疑ったが、端々の動きから察するに、やはり腰。肩も少し痛めてる。しかし観察する僕の視線を散らすように、光衛門さんは手を振って視線を遮った。

「ここは飯もうまいし静かで暮らしやすい。……ただ、あんまイイ女はいねえな」

「いないですか」

 不服そうにうなずく光衛門さんだが、僕はまだ女性を見る目の基準が出来てないから、さっぱり感覚がわからない。仕事柄こうして色町にも出入りしてるし、女性にも多く出くわすけど……なんだかんだで綺麗だと思った人はいない。一人を除いては。

「遊女屋いくつか見て回ったんだが、おっ、こいつはいい、と思うようなのはいなかったぜ。それともあれか、金積まないと会えない女郎とかいるのかい?」

 光衛門さんは真剣に悩んでいるのか、唸るように僕に問う。女郎、ねえ。

「荷田屋っていう、ここから少し離れたところではお高くとまった遊女が居るらしいですけど。ただその遊女屋は、一見さんお断りなので」

「ああやっぱあそこか。いい店構えしてるとは思ったんだ。誰か紹介してくれねえもんかね」

「あいにくと僕はあまり遊女に興味ないので」

男色(なんしょく)か?」

 突然なにを仰いますか。反応に困って、顔がひきつったのを知覚した。長い総髪の方の人は咳払いして場を収めようとしているが効果は無く、短い髪の方はにこにこしてるだけで、かといって助け舟もくれない。……自分でなんとか切り返すしか、なさそうだ。

「いやそういうわけではないんですが、ちょっと」

「ん? ……ああ。そういうことか。不能か。悪いこと聞いちまったな」

 また今度は違う方向に勘違いされている気がする。いやだなあ変な客に当たったなあという思いが、顔の端から滲み出ているんじゃないかと思った。すると僕の表情から気持ちを読み取ってくれたのか、ごほごほと長い総髪の人が咳をする。光衛門さんはひどく怯えたように過剰な反応をみせて、ようやく本題を切り出してくれた。

「えー、では。腰と肩を痛めてるんでな、その辺を楽にしてくれると助かる」

「わかりました」

 鍼を取り出そうと風呂敷を開く。

 と、さっき買った春画本が出てきた。あ、忘れてた……。

 沈黙が部屋の中に広がる。ただ光衛門さんだけは真剣な顔つきで、おもむろにそれを手に取り、ぱらぱらとめくる。まじめな顔して読むものじゃないだろ、とは僕だけでなく横の二人も思っていたに違いない。やがて光衛門さんは微笑を浮かべながら、本をぱたんと閉じた。

「いいなこれ、今度貸して」

「なにその友達みたいな気安さ。やめてくれません」

「よし、そんなら気安く話せるように友達になるか」

 軽い。受け答えが軽すぎる。しかもこれでもし承諾しちゃったら、僕の数少ない友人の中にこの人が入ることになる。全体平均の質が下がりそうで、かなりいやだ。

「治療はじめますよ」

「なんだ、返答は無しか。まあ別にいいんだが、この本読みながらでも構わねえだろ?」

「僕は構いませんが、まず人前で平然と読むことがどうかと」

「それと、光衛門様。私が構いますので」

 長い総髪の人が光衛門さんから本を取り上げて、僕の風呂敷にしまってくれる。威圧感はあるけど常識は持ち合わせてる人みたいだ。僕が軽く頭を下げると、むこうも会釈を返してくれた。光衛門さんはとたんに不機嫌になり、ぶつくさ言いながら布団に寝転がった。

「ったく、(あき)は厳しすぎるぜ」

「仰っていることの意味が解りません。私は一般常識に照らし合わせて申し上げた次第です」

 違いますか、と睨みつけられて、光衛門さんは息を止めて黙った。さっきからこの人たちを見ていて、何やら複雑な上下関係があるように思えてならない。二人の様子を見て、髪の短い人は笑ってばかりだし。本当に変な客に当たったもんだな。

「じゃあ今度こそはじめます……って、肩がだいぶひどい打ち身になってますよ。何やらかしたんですか」

「覚に殴られたんよ」

「ああなるほど」

 絶妙の呼吸で髪の短い人が説明を入れたので、ついうなずきを返してしまった。しくじった、と思って僕が口を押さえると、横にいた長い総髪の人、光衛門さんが呼ぶところの覚さんはわなわなと腕を震わせていた。

「……(すけ)。誤解を招くような言い方はよせ」

「怖いなぁ覚は。そんな顔しとると余計に信じられちゃうよ」

「さほど表情を変えたつもりはない」

「素でその顔なん? もっと笑っとる方がいいのん」

「お前のようにへらへらしていては護衛など務まらんのだ」

 どうやらこの二人、助さんと覚さんは立場としては同程度らしい。今や先ほどまでの敬語はどこへやら、覚さんは鋭い視線と刺々しい語調を浴びせかけ、助さんと口論している。

 というか、部外者の僕が居る時に争うなよ。すごく居づらい空気になってきた。

「大体お前には職務に対する自覚が足りんのだ。夜は警戒のために交代で起きることにしているというのに、寝てばかりいる」

「うちは起きるべき時には起きるんよー。覚こそ、いつも神経とがらせてて疲れんの? 」

「力んでなどいない、これが常態だ」

「うそでしょ。あのねえ、無駄に力んどると剣振る妨げになるし、も少し肩の力抜きなって」

「…………」

「……ぷふっ。言われてすぐその通りにするんね。背筋伸ばせって言われた童みたい」

「貴様!」

 淀みなく繋がる会話には入り込む隙間がなく、あうあうと口を開こうとしては閉じる、を繰り返す僕。布団の上の光衛門さんに目を向けると、いつの間にかまた春画本を手にしていた。

「あのー、すみません光衛門さん。時間をあらためて出直してきてもいいですか」

「別にいいけどこの春画本は置いていけよ! まだ読んでる最中だから!」

 そう言ってがばっと本を抱きしめる。駄目だこいつ。

「本はもうどうでもいいですけど……で、この打ち身って結局なにが原因だったんですか」

「ん? ああ、こりゃあれだよ。色町の方にくりだしていたらだな……」

 ふいに言葉を切って、目を細める光衛門さん。僕を睨むようにしているので何か粗相でもあっただろうか、と思ったが、彼の視線は僕の後ろ、閉じたふすまへと突き抜けていた。急に黙りこんで静かになったのでどうしたのかと訊こうとするが、僕は気付く。そう、静かなのだ。まだ日が暮れきった時間帯でもないというのに、宿の中に静寂が染みわたっている。助さんと覚さんも口論を止めていた。

 そうして静まり返った室内に、徐々に近づく足音が入り込んでくる。重く響いてくる音はいくつも重なっていて、大人の男が五、六人は居ることを思わせた。するとかちゃ、と音がして、覚さんが刀に手をかけた。だが光衛門さんはそれを諫めるように手を差し出して制する。次いで、僕を追い払うように手を動かした。

「鍼灸師。床の間の辺り、助の後ろまで下がってろ。早く」

「は、はあ」

 僕が移動するのと同時、光衛門さんは布団の近くに転がっていた、布を巻かれた杖を手元に引き寄せる。横を過ぎる時、助さんも両手でそれぞれ懐と帯の中を探っていた。なんだかまずいことに巻き込まれつつあるらしい、と思いながら僕は床の間に腰かけ、とりあえず商売道具を抱えておく。

 やがて複数の足音はふすまの前に落ち着き、空気が変わったのを察した。

「邪魔するぜえ」

「邪魔をするなら帰れ」

 覚さんが、光衛門さんがさっき僕にかけたのと似たような言葉を投げかける。それは用途としては同じ言葉だというのに重みはまったく異質なものとして轟き、ふすまの向こうにいる相手を一瞬ひるませた。

「……うるせえ!」

 が、あくまでも一瞬は一瞬だった。ふすまを斜めがけに真っ二つにして、抜き身の刀を肩に担いだ男たちがぞろぞろと姿を見せる。どいつも薄汚れた着物とさんばら髪、無精ひげといった外見の共通点が多い。見分けがつかない、と言い換えてもいい。おそらくこいつらがこの宿の中に居た人間を刀で脅したせいで、辺りが静かになったんだろう。

 そんな男たちの中で一番体格がよく、おそらくは頭目と思しき男が、後ろの仲間たちを腕で押し留めるようにして一歩前に進み出た。

「テメエら、ふざけてんじゃねえぞ!」

「ああ? 俺も覚もふざけちゃいねえよ。大真面目に生きてるっての」

 光衛門さんは片膝立てた体勢で相対し、侵入者の頭目は見下ろす形になる。どうやら、用がある相手は光衛門さんらしい。そして今は頭目の指示で止まっている五人の男は切っ先をちらつかせながら覚さん、助さんを牽制しており、頭数で勝ることを自信の拠り所としていることがうかがえた。どうもこのごろつきと光衛門さんには、因縁があるようだ。

「くそっ、テメエ昨日も今日も俺たちをずいぶんとコケにしてくれたじゃねえかよ、ああ!?」

「そっちが勝手につっかかってきてつんのめってつるっと滑って突っ込んでったんだろうが」

「うるせえ! 落とし前つけさせてもらうためによお、わざわざ来てやったんだぜ。なんか言うことあんだろが!」

「えっ、まさか一人で乗り込む勇気もなくかといって五人しか仲間を集められずしかもここを突き止めるにも丸一日かかったことを指摘してくれってことか? いやいや、俺ぁそんな他人の無能を挙げ連ねるような真似できねえよ」

 からかう光衛門さんの物言いは、当事者ではない立場から見ている僕からしても相当に腹の立つものだった。ましてや直接その言葉をぶつけられている頭目の彼からしたら、怒り心頭でいつぶち切れてもおかしくないはずだ。

 あまりの怒りに口がうまく回らなくなったのか、かちかちと歯のぶつかる音を立てながら、静かに頭目は口を開く。実にわかりやすい、嵐の前の静けさというやつだ。

「ふ、ふざけてんのか?」

「だからふざけてねえって。……おい、二度目だぞこれ言うの。お前の頭にゃ味噌っかすしか詰まってねえのか? そんなんだから女の子にふられるんだよ」

 せせら笑う光衛門さんに対して苛立ちが頂点に達したらしく、とうとう頭目の限界が訪れた。無言で肩に担いだ刀を振り下ろし、光衛門さんの頭を狙う。「殺す」とか「死ね」とか無駄に攻撃宣言をしない辺りは、それなりに評価できなくもない。

 でも相手が悪かったようだ。袈裟切りは無人になった布団とその下の畳を切り裂くに留まり、光衛門さんは頭目の横に立っている。振り下ろされる刀より早く、相手の脇に滑り込んでいた。

「……昨日は店内だったってこともあるしな、加減しといてやったが」

 驚く頭目が最後に見たのは光衛門さんの手にした、布で包まれた不格好な杖だろう。光衛門さんは棍のようにも見えるそれを、横薙ぎに振り回す。そしてぼそりと言葉を付け足した。

「今日はどうなっても知らねえぞ」

 口へと杖をくわえさせるように正確に打ち込まれた一撃は、前歯の全てをへし折った。頭目が後方へ吹き飛ぶ。ふすまの向こうにいた仲間が慌てて受け止めたが、血をだくだくと流しながら白眼をむいていた。

「て、てっめえ……」

 頭目を潰された怒りに駆られ、仲間たちが刀を振りかぶる。おいおい、この狭い室内で五人が同時に刀振ってどうする。と、剣については素人である僕ですらそう思った。

 だから剣客であろう覚さんからしたら、五人の行動はさぞ滑稽に映ったことだろう。いや、まず瞳に映す前に、もう迎撃行動に移っていたかもしれない。

 なんとか見えたのは、抜き放ったあとの剣の軌跡。畳に膝を擦るようにして素早く懐へ潜り込んだ覚さんは、先頭に居た相手の胴に抜刀の勢いのまま刀を叩きつけた。わずかに足が浮き、宙でもがき、のけぞって吹っ飛ぶ。またも仲間がふすまの向こうへ押し返されたことで、残りの仲間にどよめきが走る。そして案の定うなだれてしまっている男を見て、今打たれた肝臓付近の内臓はしばらく使い物にならないだろうな、と僕は仕事の時の目線で観察した。

「というか、それ斬れないんですか」

「ん、ああ。これは鉄刀だからな」

 僕の問いかけに正眼の構えを取りつつ答える覚さん。その刀身をよく見てみると分厚く、輝きがほとんどない。つまりあれは木刀のように、刀を模した鉄の塊ということか……相当重そうだし、真剣で斬られるのと大差ない威力がある気がする。唖然とする男たちを尻目に、光衛門さんは畳に杖をついてつぶやいた。

「だから、な。昨日見逃してやったのは、店に迷惑かけたくなかったのと、女の子の前で血生臭いことしたくなかったからなんだよ。でも俺、去る者は追わず馬鹿者は許す主義だからさ。今ならまだ、相手の力量も測れない馬鹿者でも逃がしてやるよ」

 ハエを追い払う仕草をしてあくびをかました光衛門さんは、もう眼前の男たちのことは完全に視界に入れず、杖を置いてぱらぱらと春画本をめくりはじめる。男たちは悔しそうに光衛門さんをにらんだが、この力量差を目の当たりにさせられてはもう手出しは出来ない。倒れた仲間に肩を貸して、すごすごと帰って行こうとする――――が。

 そのうちの一人が醜い笑みを強めて短刀を帯の中から取り出し、振り向きざまに投げつけた。迫る刃は春画本を読みふける光衛門さんを狙っており、さしもの彼もこれには反応出来なかったかに見えた。そして事実、反応するどころか顔を上げることさえもしなかった。

「……遅っ」

 代わりに反応していたのは、助さんだった。彼女は着物の袂から小刀のような形の鉄片を取り出し、勢いよく投擲した。軌道は、短刀にぶつかるように。しかし指の間から放たれたそれは短刀よりも小さく、ぶつかれば弾き飛ばされてしまいかねないように見えた。

 が、短刀に衝突する寸前に、鉄片は空中で動きを止める。そして鉄片を中心に一畳ほどの大きさの白い光の壁が瞬時に現れ、短刀は壁の表面で跳ね返された。突然の出来事に驚く男の顔面に、跳ね返ってきた短刀の柄頭が命中して派手に鼻血が噴き上がる。光の壁は、その間にヒビが入って粉々に霧散していた。

「はい、おつかれさんっと。笑わしてくれんね。そんなおっそい投げ方じゃ、百年経っても当たらんよ」

「な……テメエ、妖術師か!」

「そんなきな臭い名前で呼ぶんはやめてほしいんよ。うちは鍛冶屋でなおかつ結界術士、っていうだけ。人殺すような妖術なんて使えんもん……まあ、あんたらの口にこれを突っ込んで結界を張れば、顎から上を吹っ飛ばして殺せちゃうんだけど」

 助さんはにやにやと笑って鉄片を四枚、片手の指の間に挟んで見せびらかす。正直、術なんて何一つ見たことのない人生を送ってきた男たちからしたら、結界だろうと妖術だろうと呪いだろうとあまり大差ないんだろう。

 ……実際に本物を目にしたことは、僕としても久しぶりの経験だった。たとえば、陰陽道、神道、修験道、密教。他にも種種雑多にあるが、こうした一定の思想を基軸として物事を展開する教えの中には〝術〟という形で物事を転回させるものも含まれている。

 それは陰陽道なら汎用的な式神や占術、神道は領域内の障害への祓い、修験道は様々な効能の験、密教なら真言など、さまざまな形で外界に働きかける力のことだ。

 薄い力でなら、それらは今や僕らの日常生活の中にさえ染み込んでいるほど普遍的なものである。さっき僕が春画本屋の主人と話していたような迷信・俗信の類から、地方のみに伝わる禁忌などがそうだ。けれど今の助さんのような強い力、術というものは、そうそう遭遇するものでもない。

 かつての群雄割拠の時代ならいざ知らず、天下泰平の現在において強力な術士というのは珍しくはあっても貴重ではないのだ。そうした力は今、地方の治安維持程度の閑職――言い方は悪いが、門左衛門さんも剣〝術〟で同じようなことをしていると言える――に回されるか、幕府に飼われ守りの要とされるか、上と下で扱いの差が激しいものとなっているという。

 要するに。

 存在は広く認知されているが、実際に能力を目にすることはあまりない、噂の中だけに居るような存在。それが、現代における術士というものなのだ。

 恐れをなしたのか目を見開いて口は閉じて、我先にと廊下を走る。残されたのは気絶していた二人だけで、光衛門さんは本を読みながら彼らを蹴り転がして廊下の隅に追いやった。くるりと振り返った光衛門さんは、唾でも吐きそうな不機嫌顔でふすまを締めた。

「……ふん。とまあこんな感じで。昨日ちょっと色町で絡んできたあいつらの相手をすることになってよお。久々の運動だったもんでな、腰と肩を傷めちまったわけだ」

「はあ、なるほど」

「厄介事に巻き込んで悪かったな。お代はきっちり払うから許せ。つーわけでそろそろ治療頼むぜ、鍼灸師……ん? そういやお前、なんて名前だ?」

 本から顔を上げにやりと笑った光衛門さんは、僕の肩を叩くとふてぶてしい態度で寝転がる。

 僕は溜め息をつきそうになったけど、苦笑いを浮かべるに留めて、問いに答えた。


        ◇


「んはははは。調子が良くなると酒が進むってもんだな。おい嬢ちゃん、もう一献!」

「少しはお控えください。呑んでいる時に襲われたらどうするのですか」

「そん時のためにうちらがいるのと違うん? 覚、お役目忘れとるの?」

「お役目があるなどと言いながら呑むな助!」

「ちょっと呑んどったくらいでそんじょそこらの奴に遅れをとったりするわけないんよ。それにほら、八兵くんも呑んどるし。覚も周りに合わせんといかんよ、楽しくしなきゃ」

「む……」

「あ、僕のことはお構いなく。どうぞ続けてください」

「いや、構うぞ。鍼灸の謝礼がこのような形になって申し訳ないからな」

「別に構いませんから」

 覚さんと譲り合いの言葉をぶつけあう僕、色町から少し出たところにある食事処にて。僕はなぜか光衛門さんたちと卓を囲んでおり、同席させてもらっていた。でも気恥ずかしいというかなんというか、こういう騒がしい食事に慣れていない僕はどうしたものかわからず、隅に縮こまってそろそろと箸を伸ばすばかり。と、豪快に笑う光衛門さんが、話しかけてきた。

「水の良いとこは酒が美味いと相場が決まってる。そしてここの酒は実に美味い。いいとこに住んでるじゃねえか、八兵。……この店に限っちゃべっぴんさんもいるしな」

 言いながら店のお姉さんのお尻を横目で追いかけ、むふふと薄気味悪い笑みを浮かべている。光衛門さんの話によれば、さっき僕らの居た宿に押し入ってきたあの男たちが女の子を無理やり手籠めにしようとしていたのを、光衛門さんたちが止めたとのことだったが。いかにも好色そうなこの目線を見ていると、証言が疑わしく思えてくる。

「さっきから店のお姉さんが来る度に注文してると思ったらそういうわけですか」

「女は男に見られて、周りの目を意識するから綺麗になるんだよ。つまり俺は、世の女性をみんな綺麗にしながら生きてるわけだな……罪作りなもんだぜ」

 遠い目をしてから店子のお姉さんに流し目を送る。黙っていれば麗しいその見た目を言動で無駄にしていることが、あんたの一番の罪だ。……そして流し目にうっかりときめいてしまったらしい店のお姉さんは、お盆で顔を隠すと奥の台所へ戻って行ってしまう。あらら。

「あなた、旅先で女の子ひっかけてばかりなんですか」

「なんだその蔑んだ目は……失礼なこと言うんじゃねえ。ちゃんと仕事はしてるってえの」

「どういう仕事でしたっけ」

「さっき言っただろ」

 むっとした顔で睨まれた。けど、なんだったっけ。どうやら僕は、驚くほどこの人に興味が無いらしい。

「なんだその無気力な顔は……俺の仕事は縮緬問屋だよ。買いつけた縮緬を色んなとこで売って歩いてんだ。縮緬以外にも麻とか、いくつか風呂敷に包んで持ってるが、見てみるか?」

「いえ、僕はそれほど着物にこだわる方じゃないんで」

「仕立てのいいもん着てると、なんだかんだで人からの目は変わるぞ。特にお前は直接に客を相手する商売だろ? 見た目を整えておけば印象が良くなって客足も伸びる。もちろんいいもん買うにはある程度の金は要るが、長い目で見れば得をする」

「今の着物で十分なつもりですが」

「俺にゃぁ暑苦しいくらいの分厚さに見えるがな。そうだ、しゃりっとした涼しい肌触りのこの近江上布なんざ、これから暑くなるからお勧めだ。季節に合わせるってのも大事だぞ、それに今なら安く売ってやろう。どうだ、買っていかねえか」

 対面に座る光衛門さんがすっと食卓の上に身を乗り出してくる。僕は軽く体を引いた。

「……せっかくですが今月も財政が厳しいので」

「おいおい、そんなに硬く財布の紐を縛るなよ。物事には流れってのがある。同じところに留まり続けた水が腐っちまうように、人間たまには新しい流れを引きいれないと駄目だ。思いきったことしてみると運気も変わるんだよ」

 光衛門さんがずずいと顔を近づけてくる。変に眼力があるので目を逸らさざるを得ない。

「いや、そのですね」

「衣は人間の内と外とを分かつ物だからよ。長いこと同じ着物でいると、外界の悪い気と自らの発した気にあてられ続けたせいで、着物が変質しちまうこともある。けど、衣は人と節度を守る物でなきゃいけねえよな。だからたまには買いかえるべきだ。もちろん機があればの話ではあるが……おお、そう考えたら、こうして会ったのもやっぱり何かの縁だろ。試しにこの麻を、」

「いい加減にしてください光衛門様」

 覚さんが真横の光衛門さんのわき腹に左肘を突き入れる。痛みと衝撃で強張った顔の筋肉は、一瞬後に苦悶の表情を形作る。助かった、危うく口車に乗せられるところだった。

「要らないとの意志を示している人に無理やり売りつけようとは何事ですか」

「うぐぅ……だからって、肘喰らわせるこたねえだろ……吐くかと思った」

「吐いては胃の腑が空になってしまいますね。その際は肘打ちをお腹いっぱいになるまで喰らわせて差し上げますが」

「いや要らないもうおなかいっぱい」

「光衛門様はこう仰っている。八兵とやら、我々の分は気にせず好きなだけ食べてくれ」

 斜め前に座る覚さんはそう言ってお茶をすすった。本当に、この人たちの上下関係って何なんだろうか。……なんでもいいや。僕は菜の花のおひたしを口に運んで、ほろ苦いなあと一人つぶやいた。と、足音が卓に近付いてくる。顔を上げると、店のお姉さんがいた。

「お酒、おまちどおさまです」

「おう、きたきた」

 燗をつけた酒が運ばれてきて、少し空気が変わったのをいいことに光衛門さんがおちょこを受け取る。すかさず徳利を手にして中身を注ぎ入れるお姉さんは、頬を赤くしていた。恐怖でお腹いっぱいの光衛門さんに対し、こちらは気恥ずかしさでいっぱいのご様子だ。

「おっとと。こぼれるこぼれる……んん、うまい。ありがとよ、嬢ちゃん」

「いえ、こちらこそありがとうございます!」

 瞳きらめき肌輝き髪艶めくような笑顔でおちょこを掲げた光衛門さんを見て、いよいよ嬉しそうに身をよじるお姉さん。けれど小走りで駆け戻っていく彼女の後姿(特にお尻)を見て光衛門さんが漏らしたのは「ありゃ安産型だな……」という嫌な独り言。せめて僕らに聞こえないように言ってほしい。そして覚さんがまた、肘を構えた。

「……よくこんな人と旅が出来ますね」

「慣れちゃえば気にならなくなるのん」

「慣れ、って簡単に言いますけど。身の危険感じないんですか?」

「んー? ああー。まあ確かに、うちも性別女ではあるんけどねぇ……たはは。例外的に女として見なされとらんのよ」

 にこにこ笑いつつ箸を口に入れてもごもご喋り、助さんは僕を見た。

 ふうむ……柔和で親しみやすい顔だし、少々下品な見方をすることを許してもらえるなら、体つきも女性的だと評するところだし。光衛門さんもさぞや入れ込んでいるのだろうと思いきや、意外な反応で拍子抜けした。と、正面に視線を戻すと、なぜか光衛門さんは沈痛な面持ちでうつむいていた。何かあったのか、というかまた肘打ちされたのか。合掌。

「ところで八兵くんは歳いくつなん?」

「え? あー、今年で十七でしたかね」

「へーえ。そっかそっか。うちは今年で十九なんよ」

「ははあ、見たままですね」

「そんでみっちゃんは二十九。ついでに言っとくと覚ちゃんは二十三でね」

 机に頬杖つきながらこちらを見て、顔にかかる髪をかきあげる。なんだ、なにやらさっきとはまた別の意味で空気が変わってきたような。ん? なんだか助さんとの距離が近いような。壁際に僕の体が追い詰められてきてるような気が。

「でぇ……うちはどっちかと言えば」

 髪をさわさわと撫でられて、僕はひっくり返りそうになった。

「若い燕が好きなんよねー」

 うわ、酔っぱらっとる。至近距離に来てわかったが、かなり酒臭い。店の中でも隅の席だったせいで、逃げ場もまったくない。なんということでしょう。顔が迫る。

「……おい、助。それくらいにしておけ」

 迫る火照り顔の動きが止まった。見れば、いつの間にか立ち上がっていた覚さんが、助さんの襟元を後ろからひっ捕まえていて、まるで子猫でも持ち上げるかのようにひょいと椅子に座りなおさせている。いくら助さんが女の人とはいえ、片手であんな風に持ち上げるとは……。

「すまんな八兵とやら。助は酔った振りをしているだけだから、別に殴っても構わんぞ」

「ええー。拳はやめといてほしいのん」

「了承」

 襟元を正しながら口をとがらせる助さんに、覚さんは嘆息と共に平手を頭頂部に叩きこんだように見えた。けど、響いた音の鈍さから察するに今のは掌底だ。

「こいつの性癖には困ったものでな」

 覚さんはじろりと横目で助さんを睨みつける。けど覚さん、酒癖じゃなくて性癖ってことは、この状態が素なんですか? どう返せばいいんだよ……。

「……まあ、困ることもあるでしょうね、こんな好色二人組と旅しているなんて。あ、もしかして覚さんは護衛でもありお目付け役でもあるというわけですか」

「そんなようなものだ。醜態をお見せして申し訳ない」

 軽く頭を下げてから、気絶した助さんを自分の座っていた席に移動させ、僕の隣に座った。どきりとして、まさかあなたも燕狙い、と警戒をはじめてしまった僕に、覚さんは僕にじろりと一瞥くれて「助と一緒にするな」という顔をした。

「二人とも実害はそれほどないのだがな。酒が入った状態の二人は少々私の手に余る」

「本当に大丈夫ですか、身の危険感じないんですか」

 半ば以上本気で問いかけたのだが、なぜか覚さんは首をかしげて湯呑みを机に置いた。僕の方もその反応に困ってしまい、首をかしげてみた。覚さんは、首を縦に戻しつつ僕に言う。

「危険と言われてもな。少なくとも助とは友人でしかないし、光衛門様も男色の気はない」

「え、男色かどうかは関係ないでしょう?」

「なぜ」

「覚さん女の人ですし」

 再び湯呑みに伸ばされかけた手が止まった。そして机へと向かっていたはずの左手は僕の方へゆっくり向きを変えて、肩をがしっと掴んで壁の方へと押し込む。本人はあまり力を入れていないつもりなのかもしれないが、僕の感覚としては壁に押し付けられた右肩も掴まれている左肩も、骨が砕けてしまわないかと思うほどだった。痛い。

「……なぜ気付いた」

「い、一応鍼灸師、ですから。人体を見ることに関してのみは、そこらの人よりも観察眼が発達していると自負していますので。さらしで胸をおさえても、顔の輪郭や骨盤の位置や体型からおおよその見当はつきます」

 じろじろと僕の顔、体を眺めまわす覚さんは「失礼」と一言断りを入れてから僕の風呂敷に空いている手を伸ばす。片手で器用に結び目を解く間も僕から目を逸らすことはなく、手探りで中身を検める。鍼の入った袋、消毒用の焼酎が入った酒瓶、たまに処方することのある薬。

 光にかざしてよく観察した後、覚さんは薬を湯呑みのお茶に溶かし、僕に差し出してきた。雰囲気に流された僕は、ぐびりと音を立ててそれを嚥下した。空になった湯呑みを見て、ようやく覚さんは肩を掴んでいた手を離してくれた。表情からも険がとれている。

「毒では、ないようだな」

「ええ、もともと施術の際に効果の補助のために渡す程度の薬ですから。劇薬というほどではありません。それがなにか?」

「いや、いい。ふむ……あとは怪しそうなところは無い、か。腰の煙管も何も仕込みは無いようだ……すまなかったな。無駄にさせた薬のお代は払おう」

「そうしていただけると助かります。でも、なんだったんですか今のは?」

「すまないが話すことの出来ん事情があるのだ。護衛だから、ということで納得してほしい」

 腕組みした覚さんはそれ以上何も語るつもりが無いようだった。僕としてもあんな警戒を要する事情には踏み込みたくないから、黙って料理に箸を伸ばす。

 その後はゆるゆるとした雰囲気の中で食事が続き、帰りがけに覚さんが飲み食いのお代、そして薬の代金を払ってくれた。この一行の中で財布の紐を握っているのはこの人であるようで、やっぱりこの三人の上下関係がよくわからないと思った。



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