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Fランクダンジョンの平和な日常〜ダンジョンコアになって十数年いろんなことがありました〜  作者: 弌黑流人
【第二部】 第一章 新しい名前と賑やかな開拓の始まり。

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第96話 結実する理想、新たなる「宿」の全貌。

「――皆様、お待たせいたしました。我々の新たな拠点であり、おもてなしの集大成……その第一段階が完了いたしました」


 テオが恭しく一礼し、その隣でセリーヌが「一点の曇りもございません」と完璧なカーテシーを見せる。ジューゴたちは、新しく芽吹いた巨木の合間にそびえ立つ、その建物を仰ぎ見た。


 「ほぉ……こいつは、オイラの想像以上だ。いい商売ができそうじゃねえか」


 ザックが感嘆の声を上げる。外観は、ユグドラシルの若木から切り出された白木と、ジューゴが整備した頑強な石材が見事に調和した、温かみのある三階建ての大型ロッジ風だ。森の木々と一体化するように設計されており、まるで木々の中から宿が「生えて」いるような幻想的な雰囲気を醸し出している。


 「では、内観をご案内いたします。セリーヌさん、解説を」

 「はい。一階は広々としたラウンジと、ザック様の腕を振るっていただくオープンキッチン併設の食堂です。床はフィニが三日三晩かけて磨き上げ、素足で歩いても汚れ一つ付着いたしません」


 中に入ると、吹き抜けの天井から柔らかな木漏れ日が差し込んでいた。テオが計算し尽くした魔導ランプの配置により、夜でも森の静寂を壊さない穏やかな光が保たれるという。


 「二階と三階が客室となります。各部屋にはジューゴ様の空間拡張が施されており、外見以上の広さと、最高の静粛性を確保いたしました。窓からは『ととのい』を誘う森の全景が望めます」


 セリーヌのよどみない説明に、リナも「これ、アタシが泊まってもいいの?」と目を輝かせている。皆で一通り見て回った後、最後に一同は一階の奥、森の深淵に面したテラス席に腰を下ろした。


 「さて、箱はできた。……次は、この『森』そのものの管理についてだな」


 ジューゴが表情を引き締めると、アムネとイグニス、そしてジューゴの膝の上で寛いでいたキュイも顔を上げた。


 「ここをただの森ではなく、安全で、かつ適度なスリルとおもてなしがある『地上型迷宮』として運営していきたい。アムネ、イグニス。お前たちの力が必要だ」

 「はい! アムネが森の精霊たちと協力して、悪い魔物が入ってこないように、でも可愛い動物たちには集まってもらえるように『道』を整えます!」


 アムネが意気込むと、イグニスもパチパチと火の粉を散らして頷いた。


 「イグニスには、夜の明かりと、暖かさを。迷った旅人が火の光に導かれるように、森の各所に『導きの灯火』を配置して欲しい」

 「キュイ! キュイキュイ!」


 キュイも、自分の出番はどこだとばかりに、ジューゴの服の裾を引っぱる。


 「ああ、キュイ。お前には森のパトロールをお願いしたい。もし困っている旅人がいたら、その自慢の鳴き声で俺たちに知らせてくれ。……火を吹くのは、本当に危ない時だけだぞ?」

 「キュイッ!」


 元気よく返事をしたキュイを見て、全員の顔に笑みが浮かぶ。


 かつての地下迷宮とは違う。空があり、風が吹き、人々が笑顔で訪れる場所。


 おもてなしの森の管理体制が、今、着実に整い始めていた。


 ご拝読ありがとうございます。祝!宿泊施設兼住居の完成!森の隠れた名店として有名になる予感がします。

 さて次回は、第97話『磨き抜かれた魂、意外な合格者』をお送りいたします。お楽しみに!!


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