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Fランクダンジョンの平和な日常〜ダンジョンコアになって十数年いろんなことがありました〜  作者: 弌黑流人
【第一部】 第一章 Fランクダンジョンの安寧

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第5話 マスターポリッシュの功績と、ダンジョン安全監査。

 マスターポリッシュを派遣してから一週間。俺のモニターには、定期的に派遣先の貴族邸からの業務報告データと、契約で定められたEXPが送られてくる。


 報告は常に「驚異的な活躍」だった。


 マスターポリッシュは、持ち前のプロ意識で貴族邸の全てを磨き上げた。特に高価な銀食器や大理石の床は、コアである俺が調整した配合液のおかげで、光を放つほどに。


 (マスターポリッシュ、すごいな。向こうで得ている経験値も、討伐隊を一人倒すよりずっと高効率だ)


 報告書には、こんな裏話まで記載されていた。


 曰く、貴族の娘が「人生に疲れた」と部屋に引きこもっていたが、マスターポリッシュが彼女の部屋の窓ガラスを磨き上げたところ、「あまりに窓がピカピカすぎて、自分の顔の曇りが恥ずかしくなった」と、部屋から出てきたらしい。結果、娘の心の淀みが晴れたと、貴族はマスターポリッシュを絶賛したそうだ。


 人間社会の清掃業は、時に「精神回復業」にもなりうる。俺は、清掃ゴブリンがただの素材収集ではなく、文化貢献していることに静かな満足感を覚えた。


 マスターポリッシュの活躍は、すぐに広まった。低級ダンジョンが、Sランクのゴブリンを派遣したという噂は、すぐにダンジョン運営界隈の耳に入った。


 そして、その結果、監査がやってきた。


 その日、俺のモニターに表示されたのは、『ダンジョン格付けガイド』の調査員という肩書きを持つ男だった。彼は、このダンジョンが「Fランクでありながら、なぜ高品質な人材を輩出し、かつ安全性が高いのか」を評価しに来たのだ。


 調査員は「殺傷能力ゼロ」の評判を信じていない。彼はダンジョンの全ての罠、モンスター、設備を厳しくチェックするだろう。


 (監査か。低級に留まるという俺の意図を察知されては困るが、安全性を証明するのは簡単だ)


 だが、いちいち全ての罠を口頭で説明するのは面倒だ。俺は緊急で、監査員専用の「案内人」の生成に取り掛かった。


 用途: 監査員の完璧な案内と、ダンジョンの安全性の言語化。

 素材: 『コウモリ(低級)+ 精神魔石(安価) + 声帯模写スキル(組み合わせスキル)』

 結果:『音声ガイドコウモリ(通称:ガイド)』

生まれたてのコウモリは、耳障りな甲高い音ではなく、澄んだ女性の声で喋り始めた。


 「ようこそ、『安全第一ダンジョン』へ。私、ガイドがご案内いたします。危険な場所はございません。ご安心ください」


 調査員がダンジョンに足を踏み入れると、すぐにガイドコウモリが彼の周囲を浮遊し始めた。


 「この先、落とし穴にご注意ください。底は高品質のスライムクッションでございます。衝撃吸収率は98%です」

 「こちらのゴブリンは、攻撃してきません。彼らは清掃を担当しております。ご挨拶すると喜んでくれますよ」


 ガイドは全ての「罠」を丁寧に説明し、その殺傷能力がゼロであること、そしていかにそれが心地よいかを言語化した。


 調査員は、最初は怪訝な顔をしていたが、全ての警告が「安全」を保証するものだと理解し、やがて笑い出した。


 彼は、泉のほとりでジェラートを味わい、清掃ゴブリンの働きに感心し、最後に報告書にこう書き記した。


 『このダンジョンは、冒険者に「死」を意識させない、芸術的な「癒やし」の空間である。サービス精神と創意工夫はSランク。評価は最高の五つ星とする』


 コアのモニターに、新たなEXPが流入する。監査の成功は、ダンジョンの平和と安定を確固たるものにした。


 (良し。これで中級昇格を疑われることもなく、平和を維持できる)


 しかし、高評価はまた、新たな客を呼ぶ。次はどんな珍しい客が訪れるのだろうか。

 ご拝読ありがとうございます。いよいよ評判が広まり始めてきました。10年以上低級ダンジョンを維持してきましたが…、なにやら不穏な気配も…。それはさておき、寒いですね(11月末)。皆様も風邪などひかれませんように。それでは次回もお楽しみに!!

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