第22話 静かなる殺意と、ダンジョン内での激突。
王族の兄妹が「デトックス・ハーブ」の蒸気に包まれ、至福の表情を浮かべているとき、サウナエリアの外、静かな通路で事態は急変した。
【警告:暗殺者集団による物理的な接触を確認。護衛との戦闘開始。】
監視モニターには、全身を黒い革で覆い、無音で移動する四人組の姿が映し出された。彼らは、ダンジョンのゴブリンやゴーレムを完全に無視して、一目散に王族を狙う。
(速い。そして、戦闘の目的が明確だ。彼らの行動には、獲物以外の全てを避けるという『プロの非効率性』が存在する。それが、コアの平和維持システムに、一時的な遅延を生じさせている)
王族の護衛、凛とした顔立ちの女戦士が、暗殺者たちの前に立ちはだかった。
「そこを動くな!貴様らの目的は分かっている!」
護衛の女戦士は、彼らが王位継承争いで叔父が差し向けた暗殺者集団であることを見抜いていた。
戦闘は瞬時に始まった。四対一。女戦士は、卓越した剣術と魔力で暗殺者たちを圧倒したが、彼らの戦い方は常軌を逸していた。
【警告:暗殺者集団が『毒』を含む特殊な武器を使用。戦闘対象に深刻な状態異常を付与中。】
暗殺者たちは、核心を突いてこない。女戦士の動きを鈍らせることに集中し、彼女の四肢に微細な刃で裂傷を負わせ、神経毒を打ち込んだ。
(厄介だ。俺のタイルス・ゴーレムは、あくまで『非殺傷』が原則。奴らを捕獲することはできても、毒を無効化したり、戦闘を完全に停止させたりするほどの介入は、エネルギー効率の観点から最適解ではない)
毒によって女戦士の動きが鈍ると、暗殺者たちは彼女を突き破り、無防備な王族兄妹のいるサウナへと向かった。
王族兄妹の命が危機に晒されたその瞬間、コアはダンジョンのシステムを最大限に活用した。
「 EXP を最大量消費。ダンジョンコアの権限を、防衛機能にのみ特化。」
瞬間的な空間遮断:
サウナエリア全体を、暗殺者たちが侵入した瞬間に、『コアの最重要防衛エリア』として空間的に隔離した。
「全ての通路を無機質なタイルス・ゴーレムで物理的に封鎖。封鎖完了。」
毒の拡散阻止と冷却:
ダンジョン内の魔力循環を一瞬で操作し、毒の拡散を防ぎ、護衛の女戦士の体温を急速に下げるために、彼女の周囲の空気と床材を『極限まで冷却』した。
「毒の進行遅延措置を実行。女戦士を戦闘不能とし、隔離エリアへ一時的に拘束。」
無力化と投降の強制:
隔離されたサウナエリア内の暗殺者たちに対し、タイルス・ゴーレム数十体を生成して包囲させた。非殺傷を貫き、彼らの行動パターンを予測して、逃げ場と攻撃の隙を完全に奪った。
「選択肢は、投降か、無力化されるかだ。俺のダンジョンでの殺し合いは許可しない。」
暗殺者集団は、突如として壁が生まれ、通路が塞がれ、完璧に包囲された状況に、冷や汗を流した。ダンジョンコアがこれほどの知性と魔力を持つとは、彼らの情報にはなかった。
四人組は、無駄な抵抗は死を意味すると判断し、武器を落として投降した。コアは、彼らを拘束し、この騒動の黒幕を分析するための『実験体』として、一時的に地下保管庫に収容した。
戦闘が終了し、空間遮断が解かれたとき、王族兄妹はパニックを起こしていたが、精霊アムネが即座に彼らを鎮めた。
護衛の女戦士は、毒と裂傷で倒れていた。彼女の瞳はかすかに意識を保っていたが、治療が必要な状態だ。
(状態異常の治療には、高純度のEXPと回復素材が必要だ。外部の病院に移送すれば、暗殺者集団が再び接触する可能性がある。最も安全で、かつ俺の管理下にある場所で治療を施すのが最適だ)
コアは、王族兄妹に対し、ぶっきらぼうに告げた。
「聞け。護衛の治療が最優先だ。貴様らは、一時的に俺のダンジョンコアの部屋、すなわち『管理区域』で、滞在と治療を受けることになる。貴様らの安全を、俺が保証する。」
女戦士の命は、今、このFランクダンジョンコアの手に委ねられた。
ご拝読ありがとうございます。いやぁ、緊迫した展開になりました。これは、防衛特化にもう少し力を入れるべきですね。それにしても、なんとか不殺を守れました。さて次回はどのような展開が待っているのでしょうか!?乞うご期待!!




