第21話 王族のお忍びと、感知された「不純な意図」。
精霊アムネの登場によってダンジョンの評判は王都にまで広がり、客足は増加していた。
(よし。運営は順調だ。ゲンサイ一族の教訓を活かし、客の欲望は『サービス利用』に還元され、EXP収益も安定している)
その日の午後、俺のモニターに、通常とは異なる「純度の高い魔力」を持つ二つの反応がダンジョンに進入したことを示すアラートが表示された。
反応1(兄): 幼い王族特有の、濃密だが未成熟な魔力。
反応2(妹): 同様に濃密だが、無邪気さに満ちている。
彼らの傍には、もう一つ、『戦闘に特化した』訓練された魔力反応があった。護衛だ。
「まさか、王族がこのFランクダンジョンに。しかも、護衛一人のお忍びだ」
彼らの目的は、すぐさま判明した。兄妹は目を輝かせ、まっすぐサウナエリアへと向かった。
「お兄様、早く!『心の毒も排出するデトックス・ハーブ』と、究極のととのいジェラートをいただきましょう!」妹がはしゃぐ。
「ああ。父上も、仕事で疲れたらここに来たがっていた。『最高のリフレッシュ』だそうだ」兄が笑う。
(フム。王族の休養の場にまでなったか。俺の平和提供の価値は、王国の最上層にまで及んだというわけだ。悪くない)
王族が精霊アムネの導きでサウナの極楽コースを楽しんでいる最中、俺のダンジョン外周を監視するサブモニターが、極めて冷たく不純な魔力を感知した。
それは、特定の対象の生命を奪うことのみに特化した、「静かなる殺意」だった。
【警告:外部より、特定の生命体への強い殺意を伴う魔力反応を複数検出。侵入を確認。】
(チッ。面倒なことになった。このダンジョンは平和維持を原則とする。ここでの殺し合いは、俺の安寧を揺るがす最大の脅威だ)
王族がお忍びで来ていることが、この悪意を招き入れた原因なのは明白。おそらく王位継承争いの類だろう。
(『平和な避難所』として、俺が提供する安寧の中で、客の命を奪われるわけにはいかない)
「ダンジョンの平和をこれまで通り維持する。」
そのためには、本来、ダンジョン外に向けないはずの莫大なEXPを消費し、暗殺者集団の侵入ルートと、彼らが持つ特殊な魔道具の分析に全リソースを割いた。
さらに、王族のいるサウナエリア周辺のタイルス・ゴーレムたちに、「最優先で全ての侵入者を警戒・追跡せよ」という非攻撃的な指示を上書きした。
(良し。これで、最悪の事態は避けられるはずだ。俺の緻密な管理下では、暗殺など成功しない)
しかし、暗殺者集団は、コアの予想を上回る冷酷さと、ダンジョンコアの「非殺傷ルール」を逆手に取った戦術で、王族のいるエリアへと静かに迫りつつあった。
ご拝読ありがとうございます。王族がお忍びてくる場所、それがダンジョン!という場所になってもいいじゃないか、と思いこのようになりました。次回は、暗殺集団との攻防が始まります!お楽しみに!!




