第19話 ととのいの精霊と、ダンジョンの新しい「癒やし」。
祝1000pvを超え!!皆様に感謝を。
刀鍛冶のゲンサイ一族は、熱源の独占を諦めたものの、コアの勧めに従ってサウナエリアへと引き返した。彼らは「熱波ゴブリン」のロウリュウと「極冷えアイスゼリー」の三セットを経験し、刀鍛冶の命である「感覚」が極限まで研ぎ澄まされる効果に深く満足して帰路についた。
(よし。底しれぬ欲望は『サービスの利用』へと転換できた。職人の情熱も、俺の経験値へと繋がった。最高の形だ)
俺は、今日も地殻変動の熱を制御し、EXPを平和維持のコストとして消費する日常を送っていた。しかし、このマグマの熱(極度の陽)と、水風呂(極度の陰)が、特殊な魔力の交差点を生み出していたことに、俺は気づいていなかった。
その日、俺のモニターに、新たな生命体の発生を示す警報が表示された。
【警告:高純度魔力エネルギーの凝縮を確認。生命体の誕生プロセス発動】
生命が生まれたのは、サウナ室の隣、『ヒエヒエ・ポーションスライムの湯(水風呂)』だ。マグマの熱波に耐えた者が、極冷えの水風呂に飛び込んだ際に生じる「究極の安堵」の感情と、その際に放出される膨大な魔力の余剰分が、水面で凝縮したのだ。
水面からフワリと立ち上がったのは、蒸気のような半透明の存在だった。
名前: アムネ(ととのいの精霊)
特徴: 穏やかで心地よい魔力を放ち、人やモンスターの「心の澱み」を見抜く能力を持つ。
「ふぅ……ああ、なんて気持ちがいい場所なの。この『熱い』と『冷たい』の均衡……完璧だわ」
アムネは、その半透明な体で、水風呂の縁に腰掛けている清掃ゴブリン(休憩中)の頭を優しく撫でた。
「貴方の心の隅にある『あの時、磨き残した一角の悔い』は、もう流れたわよ」
清掃ゴブリンは、今まで抱えていたわずかな後悔が消えたことに驚き、「キュイー!」と歓喜の声を上げた。
(なんだ、この生命体は。俺のダンジョンが生み出した新しいモンスター……ではない。精霊だと?しかも、心のケアだって?)
アムネは、ダンジョン内のあちこちを巡り始めた。
清掃ゴブリンたちには、仕事の成果を褒め、彼らの「清掃意欲」を極限まで高めた。
熱波ゴブリンには、熱波を送る際の「集中力」を増幅させ、より質の高いロウリュウを可能にした。
吟遊スケルトンには、骨のフルートから出す音色に、さらに「深い癒やし」の要素を加えた。
アムネの活動は、ダンジョンの全てのサービスの「品質」を一気に引き上げた。俺のEXP収益も、アムネが活動するエリアに滞在する冒険者の満足度に比例して急上昇した。
(よし。俺の意図せぬ形で生じた精霊だが、運営方針に完全に合致している。これは強力な相乗効果だ)
俺はすぐに、アムネを*「ダンジョン専属の癒やし担当」として、運営のラインナップに組み込むことにした。しかし、精霊は無償で働くわけではない。彼女は、俺に一つの要求をしてきた。
「この素晴らしい『ととのいの場所』を維持してくれるなら、私は協力するわ。ただし、私のエネルギー源は、『最高の安堵の後に、自発的に湧き出る感謝の魔力』よ。強制的に EXP を搾り取るようなことはしないでね。」
(ふむ。強制的な搾取は、俺のポリシーにも反する。俺の提供するサービスに満足した客からの純粋な感謝が、精霊の力となる……)
俺は、精霊アムネの要求を快く受け入れた。アムネの存在は、このダンジョンを単なる湯治場から、「心の救済所」へと高める、最高の要素となった。
この平和なダンジョンに、精霊という新たな仲間が加わった。しかし、この精霊の存在が、後に転売屋ザックの商魂、そして暗殺者集団の標的になることを、俺はまだ知らなかった。
ご拝読ありがとうございます。鍛冶師の親方は一応満足してくれたようですね。ですが、まだまだ要警戒です。そして、ととのいの精霊が現れました!ますます低級ダンジョンなの?ってなってきましたね(笑)。さらにさらに、ザックさんと暗殺者集団。はたして、どんな展開が待ち受けているのでしょう。それでは、次回もお楽しみに!!




