第13話 地殻変動の衝撃と、平和な日常の限界。
常連客のバルカス爺さんを見送り、今日一日の経験値収益を確定させた直後だった。
ドンッ、と、ダンジョン全体を揺るがすような鈍い振動が走った。俺のコアを構成する六角形のクリスタル全体が、警報を示す赤色に点滅を始めた。
「警告。マグマ層の隆起を確認。ダンジョン構造の安定性が著しく低下」
緊急魔力モニターを地下深くに伸ばすと、信じられない光景が映し出された。地下深くの岩盤が、まるで生き物のように蠢き、そこから噴き出す真っ赤なマグマの熱気が、ダンジョンの中層に向けて急速に迫り上がってきている。
俺は即座に、ダンジョン崩壊までの猶予を計算した。
(無理だ。物理的な力は、俺の魔力制御の範疇を超えている。この熱に晒され続ければ、このダンジョンは数日のうちに溶け、強制的に『高温属性の危険なダンジョン』として再構築される。そうなれば、俺の平和主義など、誰も顧みなくなる!)
ダンジョン内部のモンスターたちは、既にパニック状態だった。
清掃ゴブリンたちは、熱で床が変形し、磨き上げるどころではない。「アチチ!汚い!そしてアチチ!」と、口々に叫びながら、清掃道具を放り出して安全な場所へ逃げ惑う。
ポーションスライムは、熱に耐えきれず、体の形を維持できずにドロドロと溶け始め、「回復体液」がただの温かいゼリーになっていく。
吟遊スケルトンは、骨のフルートの調律が狂い、不安を煽るような不協和音を奏で始めた。
俺が、人間や魔族の侵入を防ぐために築き上げてきた「平和な日常」のシステムが、自然の猛威の前で、音を立てて崩れ去っていく。
(殺意のない罠など、物理的な崩壊の前では無意味だ。 EXP を稼ぐ以前に、俺自身の生存が危うい。これまでの平穏を守るためには、もはや「常態の変化」を受け入れるしかない)
崩壊への恐怖の中で、俺は一つの逆転の発想に至った。
マグマの熱は、ダンジョンを破壊する「脅威」であると同時に、制御できれば「無限のエネルギー源」でもある。
「この熱を排除できないのなら、利用するしかない」
俺はすぐに、ダンジョン全体の魔力回路の再設計に取り掛かった。
熱源制御: 隆起したマグマの熱を魔力で囲い込み、ダンジョン構造への影響を最小限に抑えつつ、特定のエリアにのみ熱を送るパイプラインを設計。
施設の転用: マグマから遠いエリアに、熱を浄化・調整した『天然魔力温泉』と、熱を集中させる『サウナ室』の建設を即座に決定。
労働力再編: 熱で弱体化したモンスターを避難させ、その代わりに『熱に耐えるモンスター』の合成を最優先で開始した。清掃ゴブリンに耐熱スキルを付与し、彼らの「清掃意欲」をそのまま「ロウリュウ」のプロ意識へと転換させるのだ。
ダンジョン内は、まだ高熱と不安に満ちている。しかし、コアのモニターには、「ダンジョン崩壊までのタイマー」と、「温泉施設完成までの工程バー」が並んで表示されている。
俺の平和主義を貫くための、壮絶な「緊急リフォーム」が、今、幕を上げた。
ご拝読ありがとうございます。地殻変動による熱被害をチャンスに変えるため、奮闘するダンジョンコア!たくましいですね。果たして、低級ダンジョンの体裁は保てるのだろうか!?こうご期待!!
(追記 ブックマークと評価を頂いてることに気づきました!ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しんで読んでもらえるように、私自身もこれまで通り、物語の展開を楽しみながらの創作[私にとっての初心]を大事にしていこうと思います。)




