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このパーティの中に1人、魔王の手先がいる!  作者: 猫長明
プロローグ

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4/23

騎士イットについての考察(from僧侶スターシ)

この物語はフィクションです。

この物語には社会的倫理観から

著しくかけ離れた描写があります。

 私の名前はスターシ。僧侶よ。

 敬遠なる神のしもべにして、あまねく愛を届ける者。


 これから魔王の手先、騎士イットちゃんの話をするわ。

 これは私が偶然知った秘密に由来する推測だけど

 その秘密を考えれば手先はこの子しかありえない。

 だってこの子……


 魔王の娘だもん。


挿絵(By みてみん)


 私はその秘密に気付いたのは、

 この子が一度死んだ時だったわ。




~~回想




「イット! おいイット嘘だろ!

 目を開けろ! 頼むから目を開けてくれイットぉ!」


 魔将軍との戦いで騎士ちゃんは命を落とした。

 私へのの直撃コースだった魔法の刃を

 その身を賭してかばってくれたの。


「くそっ……ドラちゃん……

 あんたは騎士として超一流だがド三流やで……

 躊躇いなく仲間の盾になれる騎士は超一流。

 けど、それで死んじまう騎士はド三流や……!」

「僧侶さま! どうにか蘇生をお願いします!」


 私は躊躇っていたわ。

 確かに私は蘇生魔法が使える。


 けど、蘇生魔法はまさに切り札。

 気軽に使える魔法じゃない。

 それも、ここまでの致命傷なら

 全力で詠唱しないとダメ。

 妖精ちゃんのレベルじゃもう無理ね。


「確かに私なら騎士ちゃんを蘇生できるわ……」

「本当か!? なら頼むスターシ! イットを……」


「けど、ここで切り札を使えばおそらく……

 私はこの旅の中でもう二度と蘇生魔法が使えなくなる」

「っ……!?」


「そう。つまり魔王を倒すために必要不可欠である

 勇者サマが死んだ時に取り返しがつかなくなるの」

「それは……」


 そう、ここでちゃんと悩めるのが勇者サマの凄さ。

 この子は一時の感情に流されずに大局が見れる。

 ここで蘇生魔法を温存することが戦略的な正解だと

 冷めた目で言えてしまう子なのよ。


「今は危機的かつ難しい状況よ。

 それでていて一刻を争うの。

 だから、勇者サマ。

 勇者として、このパーティのリーダーとして

 私に命令しなさい。

 このまま騎士を見殺しにしろと」

「…………」


 それでもこの子には優しさが……

 いえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ここで冷徹に命令すれば、

 この子の勇者としてのカリスマが消えてしまう。

 だからこの子は、そう命令まではできない。


「命令が聞こえないわね。

 では、私の好きにさせてもらうわ」

「……っ!」

「僧侶のアネさん!?」

「僧侶さま!」


 私は全力で魔法陣を展開し、蘇生術式を紡ぐ。

 当然でしょう? だって……


 この子にかばわれなければ私が死んでいた。

 私はこの子の愛を受けたから今生きている。

 愛を受けたら愛を返すのは、

 神のしもべとして当然のことだわ。


挿絵(By みてみん)


 蘇生魔法は愛の奇跡。

 私がそれを即座に使えなかったのは

 もう1つ理由があるの。それは……


 この子の命に触れる過程で、

 私とこの子の心が重なってしまうから。

 私はこの子の心に踏み込むと同時に、

 私はこの子に心を踏み込まれてしまう。


(けど、関係ないわ。

 ここで見殺しにすることを、

 私の神は許しはしない)


 蘇生術式の過程で、私はこの子の過去を見た。


 見習いだったころ、力を暴走させ

 自分以外のパーティを壊滅させてしまったこと。


 トマトが苦手で薄~く切られていないと

 食べられないこと。


 その呪いと毒への完全耐性は、

 日常的に呪われ毒を盛られる生活で会得されたこと。


 変温動物故に夜と朝の寒暖差が大きい日は

 おもらし対策でおしめをはいて寝る日があること。


 そして……


「バカっ! パパのバカっ!

 私の鎧、パパの鎧といっしょに洗濯しないでって

 ずっと言ってたよね!?

 キモいんだよパパは!

 特に第2形態で背中から生える触手が!

 あーもう決めた! 家出してやる!

 それで勇者パーティに参加して、

 パパを絶対にぶち殺してやるっ! イーッ、だっ!」


 この子が魔王の娘であることを。


挿絵(By みてみん)




~~回想終わり




 この世界で最も強い力。

 それは言うまでもなく、愛よ。

 男女の愛、同性の愛、他種族への愛。

 その中でも親子の愛は、なによりも強い。


 この子は純粋よ。エルフちゃんと同じでね。

 私を含めた3人のような薄汚れた心を持たないの。


 だからその魔王への殺意は、

 ただの思春期の娘による反抗以上の意味を持たない。

 むしろ本当はお父さんのことが大好きなんだと

 心に触れたからこそ私にはわかってしまう。


 そういう意味ではこの子は裏切り者じゃない。

 裏切っているという自覚がないから。

 この子は、()()()()()()()()()()()()


 それでもこの子は純粋ないい子。

 ここまでいっしょに冒険してきた私達に

 強い愛着を持ってくれている。

 最近は盗賊くん相手に好意も寄せてるみたいだし。

 好意というよりただの発情かもだけど。


 だからこそ私はこの秘密を言わない。

 この子を愛で救いたい。

 この子の愛なら、魔王を倒す以外の方法で

 世界に平和をもたらせるかもしれないのだから。


 ……と、同時に。

 私がこの子を警戒する理由がある。

 それは……


 この子はその時の蘇生術式で私の心に触れ、

 私が女神クリアを裏切っていること知っているから。

 あなたがそれを暴露しようものなら、

 私は躊躇わずにあなたに即死魔法をかけるわ。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 あぁ、そうさ。

 あたいは僧侶の秘密を知ってる。


 あたいは魔王の娘で、

 こいつは女神クリアの敵。


 魔王の手先というには少し違うが、

 あたい達が裏切り者であることは事実。

 アカシックレコードが所謂「言葉の綾」で

 そのどちらかを魔王の手先と表現したのが

 おそらく今回の真実なんだろうね。


 とにかく、あたいは親父をぶち殺す。

 それでシールと愛の巣(ダンジョン)を作って子作りをするんだ。


 そのためには僧侶、

 あんたを始末しなきゃならない。


 命の恩人であるあんたを。

 邪教の信徒であるあんたを。


挿絵(By みてみん)

ここまでの読了ありがとうね。

ブックマークや評価や感想、いただけるとうれしいわ。


この物語は最終話まで書き上げたものを

予約投稿して公開してるの。

プロローグ以降は毎日22時20分更新。

全4章で、各章4話構成、最終話は10月16日になるわ。




前作にあたる異世界転生モノ、

鉄道オタクのエルフのお話もあわせてよろしく。


異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚

「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~

https://ncode.syosetu.com/n8087ko/

【Nコード:N8087KO】

挿絵(By みてみん)

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