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黄昏時のスーベーニール  作者: 辰巳りん子
11/42

 ソレは己が身にもじくじくとした痛みを伴わせながらも尚、前進を続けていた。

 凶まがつモノ、忌いみじくモノ、邪よこしまなるモノ−−−そうした名を冠するに足る容貌を身に纏ったソレは、己が身から滲み出る毒素でその身を腐らせては修復し苦晒くさらせては繕い、まるで責め苦そのものの体で地を這いずり続けた。

 

 最初は僅かばかりの思念であった。生きとし生けるものなら大抵は持つ「生きたい」と言う思念。肥沃なる土地で爪弾きにされ不毛たる土地でも生きることを許されぬソレは、一時いちどきは諦念の虜となった。諦めと云う感覚は時として持たぬモノに恍惚とした味わいをも齎せる。その隙間に魔のモノが潜み込んだのだ。


 じくじく。

 じくじく。


 己を腐らす棘を持ったソレには、もう考える力もない。

 いや、そんなものは初めからなかったのか。


 じくじく。

 じくじく。


 茨の群れは己が身を傷付けながら、もう何の為に進んでいるのかも解らず、ただただその毒気を地に交わせ青みを帯びた静謐なる大地をただの土くれへと姿を変えさせながら、今尚ゆっくりと進軍を続けていた−−−。

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