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13.そっちに行ったらだめだって

 「タニアとヨセフはここで待っててよ。」

「でも!私も一緒に……。」

「嫌。タニアすぐ捕まるし、足手まとい。要らない。」

タニアはまたムッとする。

「ヨセフ、タニアをお願いね。」

「ああ。」

「この入り江の中なら安全だから、絶対ここより奥に入って来ないでね!」

アナベルはタニアに念を押す。

「分かったわ。」

キーファとアナベルは木々の間を縫うように進んでいき、すぐに姿が見えなくなった。

「大丈夫かな?」

「どうだろうな。あの子が言う労働が全ての集落が一体どんなところなのか、俺には全く想像もつかない。ノルウェブの郊外にこんな場所があったなんて。」

「あんな小さな子供にも労働を強いて、ましてや奴隷として売るなんて信じられない。」

「俺が働く工房に、生産元が分からない木材や部品が格安で売られることがあるんだ。ヴォルカが何かしらの悪事を働いて調達してるっていう噂だった。噂だったし、質は良かったから、俺もよく買ってたよ。もしかしたら、ここで作られてたものだったのかもな。」

「……。」

「ここの住人は上に住む人間をどう思ってるんだろうな。自分たちが汗水流して、ボロボロになるまで働いて、必死に作った物を、その労力に見合わない金額で売られ、それを使って自分たちより大儲けしていたら。俺だったら、めちゃくちゃ憎むかもな。でも、上の人間がどんな生活をしているのかさえ知らされずに、彼らは働いてるのかもな。」

タニアは何も言えなかった。何も言わず、ヨセフの話を聞いている。

「……君はもう平気なのか?」

「え?」

「ノルウェブ人のこと、もう憎んでないのか?」

「……キーファね、何の躊躇いもなく私に接してくれたの。だから、私もノルウェブ人だからって憎んだり、恨むことはしないって決めた。でも、家族を死に追いやられた恨みは一生晴れないと思う。」

「そうか。」

「だから、ヨセフも私とキーファのこと一生恨んでね。」

タニアは入り江の透き通った水を見つめて、そう言った。

「ああ。」

ヨセフは静かに答えた。二人の間に沈黙が流れる。すると、その沈黙を破るように、水音が聞こえた。

「何?」

ヨセフは水音がした方へ移動すると、水面からエラが顔を出していた。額を両手で抑えて痛そうな顔をしている。どうやら泳いでいる途中、機体に気付かずそのまま額をぶつけたらしい。

「だ、大丈夫か?」

ヨセフはエラを機体の上に引き上げた。エラは機体の上に立つと、首をきょろきょろと振って何かを探している。

「どうしたの?もしかして、アナベルのこと探してるの?」

エラはタニアの言葉に頷いた。

「アナベルはキーファと一緒に集落に向かったわ。確か、ランセルっていう子を探しに行ったみたい。」

それを聞くと、エラは機体から木の根の方に飛び移り、慣れた様子でアナベルたちが進んでいった方へ入っていってしまった。

「ま、待って!そっちに行ったらだめ!」

タニアはエラの後を追った。

「ま、待て!タニア!お前もそっちに行ったらだめだってっ……たっく!」

ヨセフも二人を追って、奥へと進んでいった。

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