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短編集

かえるべき場所、いくべき場所

作者: よぎそーと
掲載日:2023/08/03

「ようやく死んだか」

 意外としぶとかったな、と怨霊は思った。



 鬱陶しいクズだった。

 生前は何が楽しいのかやたらと絡んできて。

 暴言・暴行、その果てに追い詰められて殺された。

 世間一般では自殺扱いになるだろう。

 だが、そこまで追い込まれて死んだ怨霊はそう思わない。

 あれはこのクズに殺されたのだとしか思わなかった。



 その恨みが強かったのだろう。

 はれて自殺者は怨霊にジョブチェンジした。

 上級職にクラスチェンジしたとも言う。

 あとは手にした能力を使って、恨みの原因達を祟っていった。



 殺すのは楽だった。

 取り憑いて、生気を吸い上げていけばいい。

 あとは勝手に衰弱して死んでくれる。

 あるいは、正気を失って発狂していく。

 どちらにしろ、長生きはしない。



 死んでも霊魂になる事はない。

 生気を吸い取られた加害者達は、霊魂の状態すら保ってない。

 存在すらも出来ないほど衰弱した霊魂になっている。

 そうなればあとは消え去るのみ。

 跡形もなく存在を消滅させていった。



 取り憑いて祟るのも楽しかった。

 窓の外に物影を見たり。

 部屋の中でラップ音を立てたり。

 金縛りにあわせたり。

 鏡の中だけに姿を見せたり。

 それだけで加害者達は怖がっていく。

 怨霊からすれば、「たったこれだけで?」と驚くしかない。

 姿が見えたり音が聞こえるだけで、それ以上の害はないのだから。



 ただ、それだけでは面白くない。

 のうのうと生きていて欲しくない。

 なので、取り憑いて生気を吸っていった。

 相手の霊魂とある程度同調する危険な行為だが。

 ある程度相手に衰弱してくれてるとやりやすい。



 極度の疲労や体調不要。

 精神的に衰弱してる状態。

 そういった時に生命活動は大きく下がってるもの。

 生気を吸い取りやすくもなる。

 抵抗力が下がってるからだ。



 事前に驚かせておいたおかげで、加害者達はそんな状態になってる。

 生気の吸収は意外と簡単にできた。

 加害者全員がそうして霊魂を消耗させられていった。

 あとは衰弱死するだけである。



 そうして加害者を殺していく。

 親類縁者や友人知人などの関係者も。

 いずれも加害者を育成した者だし、同じ遺伝子を持つ者だ。

 また、加害者と仲良く付き合い、悪事を見逃していたクズ共だ。

 生かしておく理由はなかった。



 これらを根絶やしにして、ようやく怨霊は心の平穏を得る事が出来る。

 そこまでやらねば、怨念が晴れる事がない。

 それを成し遂げた事で、怨霊はようやく落ち着く事が出来た。



「終わったんだなあ……」

 死ぬべき者がみんな死んで、ようやくそう思える。

 不思議なもので、するべき事はもう終わったという確信がある。

 死んで怨霊になってから感じていた、復讐対象の存在感。

 レーダーのように察知していたのだが、今はそれを感じ取る事が出来ない。

 それで、消滅させるべき者がいなくなったと思った。



 気分が晴れていく。

 今まで怒りと憎しみが渦巻いていたのだが。

 それが消えていく。

 放置できない問題が消えたからだろう。



 そうなると、この世にとどまる気持ちも消えていく。

 既に死んでるのだ。

 ここに居座る理由もない。

 長居したくもない。

 自分を死に追いやったふざけた世界だ。

 さっさと滅びてしまえと思う。

 出来るなら、二度とやってきたくなかった。



「帰ろう」

 自然とそんな事を思う。

 どこへ、という疑問はない。

 どこに行くべきかは自然と分かる。



(タマシイが)還るべき場所。

(死んだ後に)逝くべき場所。



 そこにどうすれば行けるのかは何故か分かっていた。

 ただ身を委ねればいい。

 変に何かを考えたり、何かをしようとしなくていい。

 浮遊感と共に体がどこかへと向かっていく。

 それに従っていればいい。

 それだけで良いのだという確信がある。



「帰ろう……」

 あるべき場所へ。

 そうあれかし、という流れに身を委ねる。

 そうしていくと、周囲の景色が消えていく。

 水に浮かぶような感覚をおぼえる。

 そんな浮遊感に任せながらたゆたっていく。

 全てが消え失せた世界の中を。



 他の全てと溶け合うような。

 それでいて自己がしっかりとあるような。

 自他の区別が曖昧でありながらしっかりとある。

 そこが霊魂の帰るべき場所だと何となく感じた。

 いわゆるあの世、死後の世界。

「帰ってきたんだ……」

 そう思いながら怨霊だった男は、本来の自分に戻ったのを感じた。



 同時に悟った。

 怨霊となって怨敵を処分した。

 その事で背負っていた業を取り除いたのだと。

 つきまとう悪意を消し去り、ここに戻ってきたのだと。

 輪廻転生をくり返しながら縛られていた地上。

 そこから抜け出す事が出来たのだと。



 何ともいえない安心感をおぼえた。

 幸福感とも言える。

 もう何も心配する事は無い。

 もう何にもとらわれる事は無い。

「自由だ」

 素直にそう思えた。



 あらゆる束縛からの解放。

 あるべき本来の状態。

 怨霊となっていた男は、それをようやく取り戻した。

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あと、異世界転生・異世界転移のランキングはこちら

知らない人もいるかも知れないので↓


https://yomou.syosetu.com/rank/isekaitop/






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以前、こちらのコメント欄で、俺の書いた話を話題にしてくれてたので、覗いてみると良いかも

http://mokotyama.sblo.jp/

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