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星々煌めく異世界で  作者: 二月ノ三日月
第三章【迷宮都市編】
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第87話 深まってゆく謎

 荒れた大地を歩いていく。

 一人だけ俺のバックパックに乗って楽してるのだが、そんな事よりも何故こうなったんだろうか……


「いやぁ、パーティーに同行させてもらってホント申し訳ないっす!」


 童顔少女が元気良く歩いている。

 昨日助けた女で、ジェイド達が戻ってくるまで四十一階層で待ってたのだが、何故か『風の軌跡』と一緒にネロまで来た。

 ギルドの受付で俺の名前を連呼しながらギルマスに取り次ぎしてもらおうと必死なところ、丁度話を終えて階段を降りてきたジェイド達に聞かれた、のが経緯らしい。

 ジェイド達の戻ってくる日が一日遅れた理由は、街で装備や武器を新調したりしてたからだそうだ。

 よく見ると、それぞれ武器が新しくなってるし、ジェイドに至っては甲冑が綺麗だな。


(はぁ……)


 巫山戯るな、と言いたいところだったが、ネロに関しては有益な情報を仕入れてきたため、それを聞く事とする。


「んで、お前は昨日何を聞いてきたんだ?」

「はいっす。えっと、リューゼンってギルド職員からレイ兄さんに情報だよってギルマスが言ってたっす」


 レイ兄さんって何だよ……


「内容は?」

「冒険者行方不明事件の発端っすね。今より五ヶ月半前、上層で何人かが原因不明の死を遂げてるっす」


 冒険者にとってそれは普通の事であるのだが、不審だと思ったところは二つあるそうだ。


「一つは原因不明の死を遂げたって冒険者が、全員ソロ活動してた事っす」

「ソロでダンジョン攻略、か……もう一つは?」

「荷物とかが全て残ってたっすね。その中にギルドカードも入ってたっす、荷物のポケットとか上着のポケットとか、割と見つかりやすいとこにっすかねぇ」


 なら、下層域で発生している事件と関係ありそうだな。

 しかしながら気になるのは、冒険者が行方不明となってるのに対して、全員死亡確認が取れてないってところだろうか。

 ギルドカードには生命反応を検知する魔法が仕込まれている。

 恐らく荷物の中にギルドカードがあったはずだ。

 だとしても全員が全員、ギルドカードを荷物に入れてたっていうのも変な気がする。


(俺は稀にポケットに入れたまんまだしな……)


 荷物に紛れてギルドカードが見つかり、誰が死んだのかが分かるようになっている。

 だが、一人くらい肌身離さず持ってる奴がいるとして、何故ギルドカードが(・・・・・・・・・)見つかるように(・・・・・・・)荷物に紛れ込んで(・・・・・・・・)いた(・・)んだろうか(・・・・・)


(もしかして、犯人が何等かの目的で忍び込ませた? だが、それなら何のために――)

「レイ〜?」


 考え込んでしまい、足が止まる。

 それに気付いたセラが俺の頬をグニグニと抓ってきて意識が現実へと引き戻された。


「どうしたの〜?」

「いや、ネロの話には少し不可解な部分があるって思ってな、少し考え込んでたんだ」


 犯人にとってメリットなんて無いはずだ。

 いや、殆ど偶然に近いものであろうが、それでも全員の荷物類にギルドカードが入っていたという事が気掛かりで、胸の奥で何故か引っ掛かっている。

 今や行方不明者は五十人以上、相手の思考なんざ分かるもんでもない。

 しかしながら行方不明者五十人以上全員が、置き去りにした荷物にギルドカードを入れていた、なんて有り得るのだろうか?

 仮に五十人ピッタリだったとして、ギルドカードが荷物に入ってた確率を二分の一とした場合、計算すると限りなくゼロ(パーセント)となる。

 最早有り得ないな。


「不可解? ネロの話に何か不思議なとこあった?」


 周囲に聞かれると不味いので、少し離れて後ろを歩いていく。

 もしかするとネロが犯人、って可能性も無くはない。

 まぁ、可能性としてはかなり低いだろうけど、気になる事が増えるが、これも何かのヒントになり得るのではないかと思った。


「実際に、ギルドカードは荷物と一緒にギルドホームに運び込まれたらしい。その中には装備やリュック、冒険者の衣類とか、荷物の全てがあった。つまり襲われたのは就寝時や休憩時、油断してる時になる」

「まぁ、そうね」

「五十人以上もの犠牲者が出ているにも関わらず、全員の身元が判明している理由は何だ?」

「それは勿論、ギルドカードでしょ?」

「そうだ。だが、肌身離さず持ってる人間がいても可笑しくないんじゃないか?」

「確かにそうね……でも、だったらどうして?」

「つまり考えられる可能性として、犯人がワザワザ荷物に入れたってのが浮かび上がる」


 何かを意図してのものか……もしかしてギルドに挑戦状でも叩き付けているのか?

 だとしたら、もっと分かりやすく挑戦状を叩き付けるはずだ。

 こんなまどろっこしい真似なんざするはずがない。

 だからこそ、その行動が謎なのだ。

 そもそも、どうやって犯人は冒険者を見つけて襲っているのだろうか。


「どういう事?」

「ダンジョンは下層に行くにつれてマップが広大になってくもんだ。そんな中で犯人を見つけ、捕まえ、連れ去り、そして殺すって一連の動作、その絡繰りが分からない」

「職業の力なら、何でもありじゃないの?」

「まぁ、確かにそうなんだが……」


 それだけでは説明が付かない。

 ギルドカードについては職業の力なんて関係なく、誰でもできる事だ。

 その意図が不明。

 それに冒険者をピンポイントで攫う理由や、現場にいたにも関わらずネロが狙われなかった理由、様々な事が不明なのを彼女に説明した。


「ふ〜ん」

「迷宮の壁を壊せないからこそ、証拠の隠蔽には打って付けだったんだろうが、俺達が暴いたせいで細心の注意を払わざるを得なくなった」

「アタシ達なら何とか――」

「行方不明者の中にはSランク冒険者もいたらしい。楽観視する分には構わないが、迂闊な行動は控えるべきだ。セラはシルエットの情報の事もあるし、な」


 そう言えば、唸り声を聞いた証人が死んだのは知ってるのだが、二本の角のシルエットについては誰が言い出したんだろうか?

 そこも少し気になるところだ。


「レイは誰が犯人だって思ってるの?」

「憶測で犯人の名前を挙げてもなぁ……少なくともジェイド達ではないだろうな。馬鹿には無理だ」


 だが、可能性のある奴なら何人かいる。

 風の軌跡の中にも可能性のある人物は一人いると、そう俺は思っている。

 だからこそ敵を警戒して、少し歩くペースを落として密会の真似事をしているのだ。


(敵が惚けてるって可能性も無くはないが……)


 ともかく俺達は犯人を見つける事が先決となるのだが、見つけたところでどうするのか、ダンジョン探索をしていても決まらない。

 殺すのか、生け捕りにするのか、迷っている。

 それにダイガルトも稀にフラッと何処かに消えてコソコソと何かしてるため、全員が怪しく見えてしまう。


「はぁ……」


 犯人を何人かに絞れたら良いのだが、まだ下層に到達していないせいもあって、犯人の断定には至らない。

 ダンジョン前で会った奴等は『黄昏の光』や『ダスト』といったパーティー、そして有名な猛者ばかりだが、面識はまるで無い。

 そこで俺はもう一つの疑問に行き着いた。


(地上からの転移ポータルって使えたのか?)


 地震が発生する前から階層に大穴が空いてたってのは話から推測可能だが、ならば地震に見舞われる前に転移ポータルが使えたのか、そこも疑問点として芽吹いた。

 俺達はダンジョンに登録するために列に並んだが、同じようにポータルを使うために並んでた奴もいる訳だ。

 もし転移ポータルが使えなくなってた場合、すぐに異変に気付いて騒ぎとなっていたであろうが、それが騒ぎになってなかった。


(なら、どういう事なんだ?)


 可能性としては転移が一方向に限定されている、といったところだろうか。

 少なくとも半月前までは、外から中へと入る分には異変は無かったように見えた。

 いつから穴が空いてたのかは知らないけど、恐らくはここ最近だろう。


「ねぇレイ」

「何だ?」

「二つ気になってる事があるの」


 考えるのが苦手そうなセラが、珍しいものだ。


「行方不明者って行方が分からないだけで、何処かで生きてるんでしょ?」

「まぁ、ギルドカードの反応からしたら、そうだな」

「だったら、迷宮の壁の向こう側にいるんじゃないの?」


 それは思ったが、ならば何故上層では冒険者を攫うのではなく殺したのか、それを説明できない。


「あぁ、そっか」

「でも確かに、冒険者が生きてるとしたら何処に幽閉されてるんだろうなって話になる。五十人もの冒険者を攫って閉じ込めておくのにも場所が必要だからな」


 この失踪事件の魂胆は何なのかが一番の問題なのだが、それは犯人にしか分かり得ないだろうし、生きている冒険者が何処にいるのかも捜索対象に入るだろう。

 とは言っても、生きてる冒険者が本当に無事な状態で生きてるかは定かではない。


「ギルドカードの示す『生存』の定義は広い。洗脳されてたり、人体実験に利用されてたところで、厳密に言えば生きてる事になる」

「成る程ね」

「五体満足で幽閉されてる可能性は遥かに低いだろうな」

「何でよ?」

「冒険者を攫ったんだぞ? 何かに使うからに決まってるだろうが」

「何かって?」

「十中八九、人体実験とかだろうな」


 今では世界的に人体実験は認められていない。

 被験者が奴隷であっても同じ事が言えるのだが、隠された地下施設とかで実験を続けてる狂科学者マッドサイエンティストもいたりする。

 もしも今回の犯人がソレだったら、地下施設や研究場とかがダンジョン内にあるかもしれない。


(随分と突飛な発想に行き着いたが、もしも犯人が用意周到な人物なら、それくらい準備していても可笑しくないだろうな……)


 俺も一歩間違えれば他人の身体で人体実験していたかもしれない。

 能力の幅が一気に広がった一年前、実験体として選んだのは自分の身体だった。

 傷だらけになっても俺は実験のために自分の身体を弄くり回し、薬品を色々と投与し、錬成によって身体の組成を変換したりもした。

 犯人は俺とは違い、他人を被験者として扱っているのだろう。


「駄目だ、謎が謎を呼んで迷路から抜け出せない気分だ」

「ダンジョンだけに?」

「……」


 まさかそんな寒い冗談を言うとは思ってなかったので、少し驚いて黙ってしまった。

 まさか迷路と迷宮を掛けた、のか?

 全く掛かってないような気もするが……

 そんな俺の反応を見て滑ったと思ったのか、恥ずかしそうにしてセラがポカポカ叩いてくる。


「痛い痛い……それに、謎はもう一つあるんだ」

「謎?」

「そうだ」


 もう一つの謎、それはダンジョンと少なからず関わってはいるのだが、それでも不思議な部分を口にする。


「保護されてた冒険者の話、リューゼンのおっさんのとこでも聞いたろ」

「えぇ、首を吊って死んでたのよね?」

「そうだが、可笑しいとこはそこだ」

「は?」


 俺の言葉を理解できなかったかのように、彼女は首を傾げているようだった。


「五十人以上も攫ってる奴が何で匿われた男を殺したのか、だ。保護された冒険者が殺された可能性がある、そう俺が言ったのを覚えてるな?」

「え、えぇ……覚えてはいるけど、それが何よ?」

「根本的なところから俺は誤解してたんだ」

「誤解?」


 そう、俺は目の前の死に対してばかり意識が働いてしまっていた。

 だからこそ自殺に見せかけた殺人の可能性があると思った訳だが、それすらもカモフラージュだったとしたら?


「犯人はSランクの冒険者すら攫ってる。上層では迷宮壁の向こうに冒険者の死骸が隠されてた。つまり、そもそも不自然なんだよ」

「回りくどいわね……何が不自然なのよ?」

「分からないか? 犯人が誰であれ、どうしてその冒険者を(・・・・・・・・・・)攫わずに自殺なんか(・・・・・・・・・)面倒な手段に(・・・・・・)見せかけようとした(・・・・・・・・・)のか(・・)って事さ」

「ぁ……」


 もしも錯乱状態だった冒険者を攫えば、失踪したという事実だけが残って結局は手掛かりが掴めなかっただろう。

 しかし犯人が選んだのは、自殺に見せかける偽装殺人。

 手間も掛かり、証拠も残るだろう。

 それなのに冒険者を首吊り死体として部屋に残した理由は何だったのか。


(自殺したように見せかけたかったってのは分かるが……)


 だとしても、攫った方が圧倒的に早い。

 ってか、もし俺が犯人だったらまずそうする。

 証人を行方不明にして事件を迷宮入りにし、地上へと意識を向けさせるだろう。

 しかし、それとは真逆の事を犯人はしている。


(いや、俺が見るまでは自殺で処理されてたんだったな)


 ならば、効果はあったという事か。

 いやだとしても、必ずしも自殺したと思わせられるとは限らない。

 かなり矛盾している。


「情緒が不安定、なのか?」

「それは無いんじゃない? だって不安定ならダンジョンの中でも死体が放置されてたり、なんてあるだろうし」

「まぁ、セラの言う通りか……」


 ここで行き詰まってしまう。

 確実に一歩ずつ犯人の背中に迫ろうとしているのに、この距離の伸びたような、或いは深みに嵌ってしまったかのような感覚は何だろうか。


(もしかして俺は何か見落としてる、のか?)


 俺は今、何を勘違いしているのだろうか?

 もしかして、何処かで何かを見落とした?


(いや、そんなはずは……)


 何だろうか、この得も言われぬ違和感は……

 何だろうか、この歪みを見逃してしまえば取り返しのつかない事になりそうな嫌な予感は……


「レイ?」


 今まで集めてきたものを統合しても、矛盾だらけの情報が雁字搦めに絡まっているため、何が正解で何が不正解なのかを見極める事さえ難しい。

 それに、その奥に何かがあるような気がするのだ。

 だからこそ、この胸にある蟠りを解消したくて、俺は思考を巡らせた。


「何か、何かが引っ掛かるんだが……あぁクソッ! 駄目だぁ……やっぱ分からん!」


 しかし、やはり分からないものは分からないな。

 まだ情報が足りないというのもあるが、今俺が手にしているものの中に答えがあるような気がしてならない。


「それより、二つ気になってるって言ってたな。もう一つは何だ?」

「そうそう、何でモンスターから取れる魔石が赤くなってんのかって事よ。行方不明事件と関係あるのかしら?」


 関係無い、とは言い切れない。

 だが、関わりあるのかと問われれば首を傾げてしまうだろう。


「それに関してはネロにデカい魔石を持って行かせたからな。霊王眼で嘘かどうかも確かめたが、嘘は吐いてなかったし、後でギルドが確かめてくれるだろ」

「アンタ、ちゃっかりしてるわねぇ……」

「初対面の相手を信じる程、俺は馬鹿じゃない」


 まぁ、その後何年経過しようが、霊王眼無しで信じる事はしないだろうが。


「ならアタシも……疑ってる?」

「本心で語ろうが嘘を吐こうが、俺には全て分かる。俺に影響しない限りは基本的には放置だが、もし俺を害するならセラやユスティ、リノであろうとも敵だ」

「……そっか」


 何処か寂しそうな声色をしていたが、コイツが嘘を吐いていたところで結局俺がやる事は変わらない。

 嘘を見て、情報を照らし合わせ、そして俺に対して害を成すのかどうかを判断する。

 ただ、それだけの事。


「お前が権能を封印された事に関して、遺跡の罠について俺は一度たりとも聞かなかったろ? 俺に影響しないから放置してるんだ」

「でもさ、アタシが何か隠してるって思わない訳?」

「何か隠してるのか?」

「そ、そういう訳じゃないけどさぁ……」


 隠していたところで秘密は誰にでもあるものだし、咎めたりするつもりも一切無い。

 セラが隠し事をしているように、俺にだって知られたくない秘密くらいゴロゴロ持ってるものだ。

 彼女の言葉が嘘でないというのも霊王眼で見えた。


「なら良いだろ。俺も、お前も、互いに何も聞かない。それが互いのためだ」

「……」


 俺はセラの事を何も知らないが、セラも俺の事を何一つ知らない。

 そもそも教えたくないし。

 だからこそ知らぬが仏と言うように、知らない方が幸せな事もあるものだ。


「アタシはアンタが……」

「ん?」

「……いえ、何でもないわ」


 彼女は何て言おうとしたのだろうか。

 彼女から見た俺の姿がどのようなものなのか、それは彼女にしか見えない。


「それより良いの?」

「何がだ?」


 話題を変えたかと思ったら、彼女は突然指差して前方へと視線を向ける。


「ほら、皆もう行っちゃったわよ」


 俺達がゆっくり歩いていたせいで、パーティーが遥か先へと進んでしまったらしい。

 階層全体が大きな穴を空けているためなのか、階層そのものが薄暗くなっているため、洞窟と遜色無いくらいの明るさしかない。

 洞窟が淡く光っているのだが、それでも夜の荒野を想起させる。


「暗いわね」

「あぁ」


 それが少し心地良いものだと思ってしまう。

 暗い路地裏やマンホールの下に広がる下水道、そんなところで暮らしてた時期もあったな。

 その時の事を思い出しながら、俺はパーティーのところへと歩いていく。


「レイ兄さん、セラ姉さん、何してるっすか?」


 いつの間にかネロが背後にいたのだが、驚きは無かった。

 移動してるとこが見えてたし。


「お前の方こそ何だ?」

「いえ、お二人が遅れてたっすから様子を、と」


 余計な気を回す必要は無い。

 ここはダンジョン、全てが自己責任となる。

 それに話も丁度終わったところだし、俺達もパーティーに合流するとしよう。


「サッサと行くぞ」

「えぇ!? レイ兄さんが遅れてたっすのにぃ……ってもう行ってるし!?」


 ついつい余計な方へと思考が向いてしまうが、今は謎の究明だ。

 何かが胸の内に引っ掛かっているが、四十九階層にいるであろうエレンと合流すれば、何かしらの進展が見込めるような気がしていた。

 この一連の事件の犯人が誰か分からないし、どのような力を持っているのかも謎であるからこそ、偏見や主観を一切合切排除して、一人俯瞰するしよう。

 それが今回の元からの俺のスタンスだったし、細心の注意を払いながら進もうか。





 四十九階層、そこは休息街(ユートピア)と呼ばれている冒険者にとっての安全地帯(セーフティポイント)、そして何より驚きなのは小さな街となって、冒険者も住んでいるという。

 迷宮で自給自足でき、ここまで来た者にはある程度の実力が周囲から認められたりする。


「ふぅ、これで良いか」


 街外れに位置するところで、一人の冒険者がギルドカードを手にしていた。

 先程までカードを使って誰かと通信していたのは、Sランク冒険者のエレン=スプライト、世間からは鳴雷ナルカミと呼ばれている超一流冒険者である。


(ダイト達がもうすぐ来るそうだが、時間が掛かるだろうし……どうしようか)


 まだ少しだけ時間は残されている。

 だからこそ、その時間をどう有効に使おうか彼女は迷っていた。

 もう時間が無いと(・・・・・・・・)分かっていたから(・・・・・・・・)、彼女は焦りを募らせていく。


「ダイトが助っ人を連れてくると言っていたな。果たしてこの私の役に立ってくれる存在であるかどうか……」


 弱い者は自分の邪魔だと、そう彼女は考える。

 ここまで来る者の中には荷物持ちとしてパーティーに参加している者もいるため、実力が伴っているかどうかは分からない。

 まだ見ぬ助っ人(ノア)達の事を考えながら、彼女は心の中で方針を決めて、四十八階層へと向かう事にした。


(もう二人も喰われてしまったし、用心しよう)


 仲間が喰われ、急遽ネロを上層へと向かわせたために、彼女は今、一人で行動していた。

 一振りの剣を携えて、剣神は階段を登る。

 それが自分自身エレンのすべき事だと、そう思ったから。

 彼女は一人、上へと向かった。






本作を執筆する上で、評価は大変なモチベーションとなります。

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