古銭の誘い 7
朝の日差しで後藤は目覚めた。
眩しいくらいの日差しに思わずお気に入りのサングラスを着ける。
「まっぶし! もう朝か」
部屋を出て晴香の部屋に向かう。
が、そこには彼女はいなかった。
正確に言えば何も無い。
「え? なんで?」
後藤は戸惑う、晴香が存在した形跡が何も無いのだ。
汗を垂らしながらも彼は思い出す、エキセントリックなあの店を。
そして、店主の言葉を。
後藤は慌てて走り出すと外にあった自転車に跨り猛烈にこぎだした。
春の日差しを受けながら疾走する、あの店に行かなければ。
春の日差しの中、渡部は今日も滅多にくることない客を待っている。
彼の店舗の名前は源流堂。
本から宝石まで気に入った物なら何でも仕入れる一風変わった店舗だ。
余りの暇さにいっそ準備中にしようかと思っていたら外のドアが開いた。
渡部はその姿を見て声をかけた。
「どうも、いらっしゃい。失せ物探しなら2階が専門だよ」
それを聞いた後藤の顔が青くなる
「失せ物というか、なぜ? わかるんですか?」
「僕は感が鋭くてねぇ、大抵はあたるんですよ」
後藤は息を飲み込む、そして藁にもすがるように言う。
「助けて下さい!」
頭を下げる後藤を2階に行く様に促す。
後藤は階段を上がりドアに手をかける。
ガチャリとドアを開けた先には一人の男が座っていた。
男は後藤を見ると微笑を浮かべて言った。
「源流堂探偵へようこそ」