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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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魔境の復讐 8

 彩香は夜の校舎を一人で歩いていた。

 漠然とではあるが、これは夢の類であるとあたりを付けていた。


 「これは、立志館学園のB棟かしら? 部室のある辺りに似てるようだけど」


 彩香は冷静に周りの状況を確認すると、窓やドアが開くかを試してみる。


 「窓は、開かないか。教室は」


 ガラガラガラ


 「開くわね、て。何よ、この血のようなものは。お化け屋敷の夢?」


 彩香はおもむろに手近な椅子を手に取るとそれを窓ガラスに向かって投げつける。


 ガン! ガララララ! ガツ!


 勢い良く窓に投げつけた椅子はガラスを割ることなく跳ね返り、彩香に当たった。


 「いった~い! て、痛みを感じる? 夢なのに?」


 思わぬ事態に彩香は転倒し、多少の混乱をきたすが、直ぐに冷静になり、状況を再確認する。


 「夢じゃ、ない? だとしたら、一体......」


 彩香は全ての教室を確認すべく、立ち上がろうとする。


 タッタッタッタッタッタッタ


 教室のドアの向こう側を走っていく女性の足が目に入った。


 「誰かいるの? ちょっとまって」


 彩香は急いで立ち上がり、教室を出ると足音が走り去った方向を確認する。

 その後ろ姿には見覚えがあったが、誰なのかをハッキリ思い出す事は出来なかった。

 その少女は、ガラガラと扉を開けると中に入りピシャリとドアを閉めた。


 「あれ? 誰だっけ? 知り合いだと思うんだけどなぁ」


 彩香は少女の後を追い、突き当たりの実験室に向かってゆっくり歩き出す。

 普通に考えればかなりの異常事態のはずなのだが、何故か危機感は感じられなかった。


 「やっぱり、ここは学校だわ。だって、あの看板」


 彩香の前には科学部と書かれた看板が掛けられた実験室が見えて来た。

 この半年間、自分が居場所にしたかった場所、自分の友人達がまっている部室だ。


 彩香は部室にたどり着き、その扉をゆっくりと開けながらふと思う。


 ガラガラガラガラガラ


 「うちの部員にあんな後ろ姿の女の子はいない、寧ろあれは」


 ドアを開けると、更にその先にあるドアから話し声が聞こえる。


 「おい、もう止めてくれよ。俺たちが悪かったから」


 「あら? あなた達は私がそういったら、止めてくれたのかしら?」


 その声は何処かで聞き覚えがあるものだった。

 いや、聞き覚えがあるなんてものではない、何故なら、その声は。


 「あら? 亮太さん、どうやら主役がおいでになったみたいね」


 「主役だって? ここは、お前の世界だろ? それ以上の奴なんて......」


 ガラガラガラガラ


 話し声が途切れた所で扉が開く。彩香の目の前には、自分が見知った人物が立っていた。

 会話などはした事がない。しかし、毎日の様に見るその人物を見間違う筈は無かった。


 その少女は貧相な身体つきであったが、彼女の着るメイド服はその華奢な容姿を愛らしく見せていた。


 背中まで伸びた髪は結ばずにサラサラした髪を靡かせる。

 顔には普段付けている眼鏡は無く、凛とした美人だった。


 そう、それはまさしく。彩香そのものが目の前に立っていたのだ。


 「え? 私、だよね。やっぱり......」


 自らと対面した彩香は、思いのほか冷静だった。声から、ある程度の予想は出来ていたからだった。

 もう一人の彩香は微笑を浮かべると、恭しく頭を下げ挨拶をする。


 「ようこそ、お嬢様。貴方の世界へ」


 「あははは、やっぱ。これ、夢だわ」


 「そう、ここは夢の世界。貴方が望めば、何でも用意してあげるわ」


 もう一人の彩香は、話しながら全裸で吊るされた亮太の大事な物を弄びながら、クスクスと笑う。


 「無様でしょう? 貴方がいらないって思ったから、こっちで遊んであげてるの。まだ、いるでしょ?」


 彩香は、その妖艶な瞳から目を反らせずに、ただ、頷いた。

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