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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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魔境の復讐 7

 コポ、コポ、コポ、コポ


 部長室入り口付近に据えられた職員デスクを挟んで新島と小百合は無言で向き合う。


 「おっ客様~♪ 半年待ったお客様~♪ 設立して初めての~♪」


 部室にはお湯を沸かす音と音程の外れた、元の音程などわかないオリジナルソングではあるのだが、其れでも音程が外れてると分かるほどの玲子の下手な歌だけが聞こえる。


 カチャカチャカチャ


 「お待たせしました~。お茶菓子のクッキーと、紅茶でっす」


 「マジでありがと~。隣のクラスだから会うの初めてだけど。玲子ちゃん、マジ天使?」


 「いっやだな~。天使だなんて。ちょっと明、聞いた?」


 バンバンと明の背中を加減無しで叩く玲子に明は冷めた視線を投げかける。


 「お世辞だよ! つうか、いて~よ。この筋肉少女が」


 「誰が、筋肉少女ですか! 引き締まってるだけでっす」


 ズバン! と、明の背中を勢い良く叩くと、明が悶絶する。


 「ぐ、おぉぅ、一般的に、それを筋肉質と言うんだよ......」


 そんな二人のやり取りを小百合が興味深く観察する。


 「へぇ~、あの明が形無しだ。ひょっとして玲子ちん最強?」


 「え? 最強、やっだな~。如何見てもか弱き乙女でしょ?」


 玲子はウインクしながら舌を出し、可愛さをアピールする。


 「100メートルを10秒台で駆け抜け、商業用瓦を軽く15枚、素手で打ちぬく乙女はいない」


 明は苦痛に耐えながら文句をいう。


 「何ですって! この華奢なボディーは、乙女のものでしょうが」


 玲子の身長は158cmと低めで筋肉も膨張するようなタイプではなく、体脂肪を犠牲にした引き締まったボディーの為に、服の上からなら華奢な女性にしか見えない。

 

 「ふ、女ものを着てるから辛うじて女と判断出来るだけだろうが、そ」


 ズバン!


 「ぴぎゃぁ!」


 なんとか立ち上がった明が皮肉を言い切る前に、玲子のハイキックが明に綺麗に決まった。


 「え、これ。大丈夫? 明君、いきてますか~」


 小百合が明を揺らすが、彼が起き上がる事は無かった。


 「ふぅえ~、マジかぁ。ヤンキーも形無しの明が伸されちゃったよ......」


 「いや、ワザとまともに喰らっただけだと思うよ? 流石に、本気で来られたら勝てないし」


 玲子は明を足蹴にして部屋の端に転がすと、明の座っていた椅子に座り、小百合と向かい合う。


 「さて、邪魔者もいなくなったし、そろそろお話をききましょうか」


 「え? ああ、そうだったし。出たんだよね、都市伝説の幽霊が」


 「都市伝説の幽霊? 聞いた事ないな」


 「マッジで? オカ研でしょ? 普通、知ってるっしょ」


 「まぁ、何ていうか。専門外、的な? うちは現代ホラーはあんま知らなくて」


 「ええ~、それで大丈夫なわけ? マジ、不安だし~」


 「まぁ、そういわずに。江戸時代から続くオカルトの名門一族の末裔が所属してますから」


 「ふ~ん、ま。いっか~」


 小百合は一呼吸ついた後に本題にはいる。


 「ブラック有栖って、聞いた事ない?」


 「ブラック有栖? 鏡の国のアリスじゃ無くて?」


 「うん、発想はそこからなんだけどね。有栖は日本人だから感じで書くの」


 「おお、この字ね。漢字にしても、なんか西洋っぽいね」


 「有栖が現れる時は、鏡が真っ黒になるんだって。それで、鏡の中に引きずりこまれるらしいの」


 「なんか、ありそうで無さそうな話だね」


 「いや! あ~し、見たし! 真っ黒な鏡から、手だけ出てたんだよ!」


 小百合は何かを思い出し、軽く身震いした後に付け加える。


 「ついさっき、見たんだよ。で、次は、お前だ。て......」

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