魔境の復讐 6
タッタッタッタッタッタッタッタ!
夜の校舎に、廊下を走る音がこだまする。
静まり返ったその空間に響き渡るその音は、どこか悲壮感を感じさせていた。
「はぁ、はぁ、一体、どうなってるんだ?」
息を切らせながら走る、イケ面風の学生は困惑していた。
何故、自分は学校の校舎らしき所にいるのだろうか?
確か、自分は自宅の風呂場にいたはずなのだ。
「夢、ではないよな」
イケ面風の学生、菅原亮太は自分の状態を確認する為に改めて付近を調べる。
窓から外を見る。どうやら、この建物の3階にいるようだ。
「まったく、疲労は本物だし、全裸だし。コイツは、たまらんな」
亮太は入浴中だった為に、今は衣類を着ていなかった。
ひとまず服を手に入れたいと思い、周りを歩いてみる事にした。
暫く歩いて分かった事だが、どうやら此処は学校であるという事だ。
廊下は一本。真っ直ぐに伸びているだけだった。
いたって普通の作りの校舎であった。
普通ではない所は、今のところただ一つ。
亮太はもう一度窓から外を確認した後に、試しに窓を開けようとするが、窓はビクともしない。
「やっぱり、そうだ。上に上がっても、下に降りても、此処は3階だ」
そう、亮太は先ほどから何度か違う場所に移動しようとはしたが、同じ場所を回る事しか出来ていなかった。
現状で亮太が移動可能な範囲は、廊下横に並ぶ5つの教室と、階段脇のトイレ、そして、突き当たりの実験室らしき部屋だけだった。
「くそぅ、なんだよ。外には出れないし教室にも入れねぇ。一体、どうなっちまったんだ」
カチャリ
亮太が途方にくれていると、何処かの教室の鍵が開くような音がした。
「なんだ? 誰か、いるのか?」
亮太は怯えながら、教室を確認して回る。
ガララララ
端から順に調べていき、3つめの教室のドアが開く。
「おい、誰かいるのか?」
覗いた教室に人影は無かったが、亮太は中に入る事にする。
「誰もいないのに、扉があいたのか? おいおい、勘弁してくれよ」
亮太は何かないか、誰かが隠れていないか確認する為に、教室をくまなく探索する。
全ての机とロッカーをあさると、女性用の下着と制服、水着、化粧品が見つかった。
「おいおい、なんだよこれは? どうせなら男物があれば良かったんだがな」
亮太はぼやくと、取りあえず椅子に座る事にした。
「まったく。取りあえず、異常事態って事はわかったが。どうするかな?」
それとなく呟くと、背伸びをし、一先ず軽く休憩をする。
「結構、走ったからな。疲れが溜まってるのかもしれないな」
「あははははははは」
「ん? 誰だ?」
亮太は女性の笑い声が聞こえたような気がして、回りを確認する。
すると、教室の入り口にスカートの端が一瞬見えたような気がした。
「おい、まってくれ」
亮太は、女性らしき影を追いかけようと走り出す。
ガッ! ガシャァ!
亮太は何かに躓き、派手に転倒し、あたりの机をなぎ倒す。
「あいてててて......」
亮太は自分が何に躓いたのか確認し、恐怖で固まる。
「ああ、ひぃぃ」
床から色白な、女子と思しき手が亮太の足を掴んでいたのだ。
亮太は慌ててたちあがり、目の前の何かを見て、遂に気絶してしまった。
其処には、血まみれで天上から吊るされた佐藤と伊藤の姿があった。




