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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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魔鏡の復讐 5

 新島明は科学部の部長である、とはいえ文科系のイメージとはかけ離れた存在だ。

 幼少の頃叔父からボクシングを教わり、その鍛錬は今でも欠かしていない。


 ならば、何故ボクシング部ではないのだろうか?

 そもそも、彼は勝負事に興味などはないのだ。

 人間同士の殴り合い程馬鹿げたものはないと彼は考えているからだ。


 ならば、一体彼は何と戦う為に鍛錬をしているのか、何故鍛錬を続けなければいけなのだろうか。

 それは、彼の一族にこそ原因があるのだった、彼らの一族は古く江戸の時代より禍物(かぶつ)と戦い続けた一族であった。


 禍物とは読んで字のごとく禍を引き起こす物品の事である。

 形や種類は物により違うが共通点が一つある、何かしらの負の力を集める事によってそれを核とし鬼となる。


 人間の負の感情を認識した時に現れる禍、即ち識鬼(しき)である。


 明は織鬼と戦う運命を背負った、訳ではなく織鬼を操っていた昔の陰陽師の怨念に付け狙われていたのだ。


 が、それは過去の事であり今は平和な毎日を送っていた。

 それは、一族の犠牲と彼のエキセントリックな叔父の活躍があっての事だがそれはまた別の機会に語られるかもしれない。


 約3年以上も鬼と遭遇しなかった明は懐かしくも危険な気配を感じていた。

 その存在に近い物がこの学び舎に突如として現れた事を察知したのだ。

 いや、察知してしまったのだった。


 「悲鳴が聞こえたからきてみれば。この血痕は、穏やかじゃないな」


 鮫島は血痕の後を辿ってその先に向かう、どうやらそれは3階の女子トイレに続いている様だった。


 「ここ、からか。よりによって女子便所かよ」


 明は吐き捨てるようにいうと躊躇い無くその扉を開ける。

 その血痕の先には一枚の鏡が据え付けてあるだけだった。


 そう、なんの変哲もない鏡があったのだ。


 「これは、織鬼ではないな。こんな物に思い入れをもつ酔狂な奴はいないだろう」


 長居する理由もないと明は女子トイレを後にした。


 「と、なれば。鏡に巣食う類の妖か悪霊か。まぁ、どれも根本は同じなのだが」


 明はブツブツ呟きながら元来た道を戻り始める。


 「正直、叔父の様に織鬼と戦う術を持たない俺が首を突っ込むべきではないな」


 明が立ち止まった先の扉の上には大きな木製の看板があり其処には科学部と書かれ、その看板の下に手書きでオカルト研究会と書かれた紙が張ってあった。


 「俺が首を突っ込なくてもこいつ等がなんかやりそうだな・・・・・・」


 明は軽く溜息を吐くと扉を開けその直ぐ横にある部長室に入り自分用のデスクに腰をかける。


 科学部は使われなくなったB棟の科学室が部室となっており、その脇にある準備室を部長室としていた。


 この学校において部長とは会社における社長のような側面があった。

 富裕層の多く通うこの学校では一般層の生徒が富裕層向けのサービスを提供する。

 それが、この学校のB棟の部活動なのだ。


 科学部が主に行うサービスはオリジナルの科学調味料の販売やアロマ調合などが主な事業だが一部の生徒が趣味でやっているオカルト相談も人気サービスだった。


 普段は女子生徒がタロット占いを楽しみに来る程度だが、何故そんな事になったのかわ分からないが心霊相談なども最近ではきてるようだ。


 「どうする?今回は遊びではすまないぞ。しかし、ほおっておいてもいい事はなにもないな」


 明は頭の中でグルグルと思考を巡らせながら自らも椅子を使ってグルグル回る。


 「叔父に応援を頼むか?いや、それはないな。ならばどうする?気合と武術でどうにかなるものじゃないぞ」


 尚もグルグル回っていると勢い良く扉が開かれる。

 其処には顔を青ざめさせたクラスメートの女子が立っていた。


 「なんだ?失礼な奴だな用件があるならまずは部員を通せ」


 「そ、そんな悠長な事いってられないのよ!で、出たのよ!」


 「ほうほう、それは良かったな。だが、俺にはお前の排泄を想像して興奮する性癖はないんでな」


 「は?マジ最悪だし、そっちじゃなくて幽霊が出たのよ!」


 「ほう、幽霊ね。で、結城だったかな?それで、俺に何の用だ?」


 「だ・か・ら!幽霊が出たからなんとかしろっていってんのよ!」


 「悪いな、俺は霊能者じゃ無ければハンターでもない。他を当たってくれ」


 「いや、其処にオカルト研究会って書いてあるじゃん!話も聞かないなんて詐欺よ」


 「詐欺?俺はお前に何か不利益を与えたか?お前に明確な不利益が無ければ詐欺ではないな、どうなんだ?」


 新島は心の底から嫌そうに対応する。


 「ふ、ふぇぇぇぇぇ」


 新島の態度に結城が耐えられなくなり遂に泣き出した。


 ガチャリ


 部室側の扉が開くと其処には仁王立ちで怒りを露にする般若、では無く副部長の玲子が立っていた。


 「明、アンタ。何やってんのよ?」


 新島は冷や汗を垂らしながら結城小百合に向かって告げる。


 「ようこそ、オカルト研究会へ。それでは、ご用件をお伺いしましょうか」


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