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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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晴着の憂鬱 12

 大野の家が経営する旅館のすぐ近くに大きな神社があった。

 多くの人が参拝に訪れる由緒正しき神社である。

 その社務所で、大野歩は未発達な少女に必死に懇願する。

 その姿に、自尊心は無い。


 「お願いします! 一回でいいから! 助けると思って!」


 大野は恥も外聞も無しに中学生程度の少女に懇願する。

 神社に勤める人間が時折通るが、社務所を通り過ぎる際にその全てが怪訝な表情を浮かべる。


 「お主、あっちに頼みごとをするのはいいが。違う事を頼んでるように聞こえるぞ......」


 「いや、試しにやってみるだけで良いから! やってみたら、イケルかも!」


 大野にしがみつかれている少女の名は、新藤美佳子。この地方の霊山を管理する神社の一人娘にして、本物の霊能者である。


 「大野家の次期当初よ、除霊の依頼なら他に頼み方があろうが。それにわっちは、除霊は出来ぬぞ」


 困惑する美佳子は、腰まで伸ばしたしなやかな黒髪をクルクルしながら、しがみつく大野をジッと見る。


 「そこをなんとか! 僕の人生がかかってるんですよ~」


 泣きながら訴える歩に根負けした美佳子は支度をしながら言う。


 「わっちは、どうなってもしらんぞ? 霊能者と言っても、わっちは霊と対話できるだけなんじゃがのぅ......」

 

 美佳子が着替えのために社務所に向かったその時、大野の電話が鳴り響いた。

 美佳子はしかめっ面で大野に言う。


 「その会話が終わったら、電源を落としておくのじゃぞ」


 大野は、すいません。と、頷くと着信の相手が鮫島である事を確認し、電話に出る。


 「馬鹿野郎! そこで黙って待ってろ! 5分で行く」


 出るなり当然叫ばれた大野は驚きの余り転倒する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その20分後、二組の男女が社務所の応接机で向かい合って、大野家の怪現象について話し合いをしている。

 先ずは、鮫島の隣に座る晴香が話し出す。


 「私の調査では、直接的な影響はでていませんが、元婚約者の方は未だに霊が見えるそうです」


 晴香の報告を聞き美佳子が唸る。


 「と、なると。やはり対処しなければならない存在という事じゃな」


 それに続けて鮫島が話し出す。


 「そうだな。何かしらの対処は必要だろう。巫女さん、是を見てもらえるかな? コイツを、どう思う?」


 言いながら鮫島は突然上着を全て脱ぎだした。

 その体には無数の手形が痣になって残っていた。

 美佳子は、真剣な眼差しで鮫島を食い入るように見る。


 「ふむ、均整の取れた美しい身体じゃな。筋肉は少ないが、わっちは、このくらいの方が好みじゃぞ」


 「いやいやいや、何処見てんの? この痣を見てくれと言ったんだが......」


 呆れる鮫島に対して、美佳子は、ああ! そっちか! みたいな反応をする。


 「すまんすまん。わっちはてっきり。お兄さんが自らの肉体美で、わっちを誘惑してるのかと思ってしまった」


 「いや、なんで? 痣をみてどう思うかって聞いただけだろ?」


 鮫島に理由を問われた美佳子の視線が鮫島の下腹部に移動する。

 つられて残りの二人もそれを追いかける。

 ピッタリと張り付くようなデザインのスラックス、その股間部分は、大きく盛り上がっていた。

 美佳子は鮫島に自分が思った事を率直に伝える。


 「すごく。大きいです」


 皆の視線を追った鮫島は、バツの悪そうな顔をしながら上着を再び着始める。


 「まぁ、あれだ。思春期の女子に見せる物ではなかったな」


 上着を着た鮫島は気を取り直して話を進める。


 「この痣を見てもらって分かるように、コイツはある程度人体に干渉出来る存在だ。場合によっては、生死に関わる事もあると想定されるが、晴香の報告から推測するには、依代から一定の範囲しか移動できないと推測できる」


 周りの反応を確認した鮫島は更に続きを話す。


 「よって、依代のお焚き上げによる浄化がもっとも効果的と判断するが、どうだ?」


 鮫島の提案に大野が即答で答える。


 「いや、それは困りますよ。家宝を燃やすとか、ありえないでしょ!」


 鮫島は、「そうだよな」と、言いながら立ち上がり思案する。


 「だとすれば、効果範囲外の寺院などに預けて封印か? 問題の先送りでしかないが、実際のところは八割がたこの方法で解決するよな」


 思案しながらうろつく鮫島に大野が更に注文を付ける。


 「いや、出来ればちゃんと解決して欲しいです。謝礼もちゃんとだしますから」


 その瞬間に鮫島の動きは止まり目だけが大野に向く。


 「謝礼って、どれくらい?」


 鮫島は大野に金額を確認する。大野は、指で一を示す。


 「そうだな。俺一人では難しいが、巫女さんと一緒なら、何とかなるかも知れないな」


 金に目が眩んだ鮫島は美佳子を見る。

 美佳子は視線を反らさずに鮫島に言う。


 「よいぞ、わっちも手伝ってやろう。但し! こちらもオンシからそれ相応の対価を求めるが、良いか?」


 「あぁ、構わないよ。構わないんだけど。そこを見ながら言うの、止めてくれない?」


 鮫島は頬を引き攣らせえながら言うが、結局。その日、美佳子が鮫島の股間から視線を外す事は無かった。

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