晴着の憂鬱 1
夏の清々しい日差しの中、鮫島は、まるでギャグ漫画主人公のようなポーズで叫んでいた。
目の前の男は、どうしたものかと躊躇するが、思い切って話しける。
「あ、あの。出直しましょうか?」
グゥゴゴゴゴ、ドオオオオオン!
その時、辺りに先程よりも大きな、まるで空爆のような音が響き渡った。
それは、またしても鮫島の腹の虫であった。
鮫島は、険しい表情で目の前の男を睨みつける。
「前払いだ! 一部でもいい、それ以外は一切受けない!」
「えっと......」
鮫島は、自分の要望を一気にまくしたてる。
その様子に、目の前の高そうなスーツを綺麗に着こなした、七三分けの青年は意味が分からずオタオタする。
「うちの、事務所は、一部でも、前金を貰わないと、仕事をしないと、いっている」
鮫島の、迫力有る声に気おされながらも、青年は声を絞り出すように答える。
「お、おいくらですか?」
ゴクリと、唾を飲み込みながら、青年は、法外な価格を要求されるので無いかと不安になる。
「そうだな。取りあえず、相談料の三千円を頂こうか」
「あ、はい」
青年は、拍子抜けした声で、言われたとおりに相談料を恐る恐る渡す。
受け取った鮫島は、笑顔になると、態度を変えて青年を招き入れる。
「どうぞ! いらっしゃいませ~。源流堂探偵事務所に、ようこそ!」
鮫島は、ドアを開けるとさっさと中に入っていく。
青年はその後ろをついていく。
店舗から、大きく突き出して増築された入り口をくぐる。
其処は、古書のスペースになっていた。
その先には、更に店舗があるようだったが、休業中と書かれた札と、バリケードで覆われている為、中の様子を見ることはできなかった。
その状況を見て、青年は不思議に思いそれとなく鮫島に聞いてみる。
「あの、あそこで休業中って事は、このスペースは、オープンスペースになっちゃいますよね?」
「そうなりますね。古書は、商品では無く、展示品だと、店主は良く言ってますよ」
「いやいや、盗って下さいっていってるよなものじゃないですか」
「そういえば、価値があるものもあるから、一応、頼むとかいってたな」
鮫島は適当に答えると、脇の扉を開けて階段を上っていく。
青年は慌てて入り口に戻り、鍵を掛けてからその後を追いかける為に階段に向かう。
階段は、外階段に使われているような作りになっていた。
青年はそれを見て如何に無理な改装をしたのかを理解する。
青年が2階の扉を開けて中に入ると、先に中に入り、応接ソファに座った鮫島が青年を応接机を挟んだ反対側のソファに座るように促す。
青年が言われるままに席についたのを確認すると、正面に座った鮫島は満足そうに微笑む。
一呼吸分の間を置き、鮫島は青年を見据えると話を切り出す。
「では、お話を聞きましょうか。今回は、どのようなご依頼になりますか?」
「僕の、結婚を、どうにか成功させてくれませんか?」
青年は、至極当然のように、探偵には無縁と思える依頼を口にする
「はい? あんた、沸いちまってんのかい?」
鮫島は間抜けな顔でなんとも失礼な事をいった。




